成田達輝(ヴァイオリニスト)&萩原麻未(ピアニスト)

ヴァイオリンの成田達輝とピアノの萩原麻未の夫妻が8月3日の東京オペラシティコンサートホールでの「名曲コンサート」に出演し、クラシックから、ミュージカル、映画音楽までバラエティに富んだプログラムを披露する。このコンサートにかける思いを聞いた。

(聞き手・山田 治生)

8月3日、東京オペラシティで「名曲コンサート」を開催するヴァイオリニストの成田達輝(右)と夫人でピアニストの萩原麻未
8月3日、東京オペラシティで「名曲コンサート」を開催するヴァイオリニストの成田達輝(右)と夫人でピアニストの萩原麻未

——お2人は、いつから共演されていますか?

萩原 初めての共演は2013年でした。

成田 公の場で最初に共演したのは、2013年、宇都宮でのリサイタルでした。

萩原 それまで、お互い、フランスに留学していたので、パリで一緒に弾いたことはありました。そのとき、何か面白いことが起こりそうだという感じはしました。

成田 お互いその感覚はあった。宇都宮では、ベートーヴェンの「春」、グリーグのヴァイオリン・ソナタ第3番などを弾きました。最初はあまりかみ合わなかったですね(笑)

萩原 その時、宇都宮、東京、北九州で3公演ツアーになっていて、1回目の後とても反省して、2回目の浜離宮朝日ホールは上手くいったと思います。

成田 お互い音楽的に近い感覚を持っていたことを認識しました。

——その後、結婚されましたね。

萩原 2018年に結婚しましたが、子供が生まれてからの変化の方が大きかったですね。

——今回の名曲コンサートでは、「ハウルの動く城」などの映画音楽も含まれていますね。

萩原 いつもはクラシックのコンサートに来ない人にも、コンサートの窓口を広げたいということで選びました。私は、普段、映画音楽を弾いたりしませんが、プライベートな空間やボランティアでは子供たちのために子供たちの好きな歌も弾いています。
クラシックの素晴らしさは代えがたいし、多くの方にクラシックを聴いていただけたらうれしいと思います。と同時にクラシックを演奏する私たちは、それだけに固執するのではなく、垣根を取り払って、もっと幅広く音楽を考えた方がいいと思います。どのようなプログラムでも、作品の魅力が最大限伝わるようにしたい。普段、クラシック弾いている私にとっては、こういう曲の方が挑戦的なプログラムなのです。

成田 クラシックの奏者も、名曲コンサートへの考え方が変わってきています。どんなジャンルにも名曲があるわけですし、自分たちが心からいいなと思ったものを聴いてもらいたいと思っています。

山田治生氏のインタビューに応える成田・萩原夫妻
山田治生氏のインタビューに応える成田・萩原夫妻

——今回は、夏休みということもあり、選曲には、子供たちも意識しましたか?

萩原 子供たちも大人の方も、この時間が良い時間だったと思ってもらえるように選曲しました。このコンサートは親子で行くと、18歳以下は無料、同伴者は半額というチケットがあります。親子で、3000円で聴けるのはすごくいいなと思います。
子供たちが楽しめるようにと思いますが、私たちは、親御さんの気持ちもわかるので、普段、子育てで自由にコンサートに来られない大人の方にも楽しんでいただけるようなコンサートにしたいと思います。

※注:文化庁の「劇場・音楽堂等における子供舞台芸術鑑賞体験支援事業」。申込制

——お2人で子供向けコンサートにも取り組んでいますね。

萩原 調布国際音楽祭で0歳からの子供たちのためのコンサートをしましたが、私たちの子供も客席から見てくれたのはうれしかったです。

——お子さんはおいくつですか?

萩原 上が5歳で下が1歳です。子供は正直で、つまらないならつまらなさそうにしているし、面白いなら聴いてくれる。子供たちの呼吸や動きを感じながら弾くのは普段の演奏会ではできないことでした。

成田 僕は客席の間を動き回って弾きました。子供たちの目の前で弾いて、子供たちに臨場感を感じてもらえるようにしました。

聴衆が楽しめるよう民族色の要素も取り入れたプログラミングを行った
聴衆が楽しめるよう民族色の要素も取り入れたプログラミングを行った

——今回のコンサートの第1部には、「ツィゴイネルワイゼン」や「チャルダッシュ」など民俗的な作品が並んでいますね。

成田 「八木節変奏曲」は、中学高校の6年間住んでいた前橋市のPR大使をしているので、八木節でヴァイオリン・ソロ曲を書いたのでした。

萩原 「ツィゴイネルワイゼン」を演奏すると、どうして皆むさんあんなに喜ばれるのでしょうね。やっぱり、それだけ良い曲なのですね。

成田「確かに、第1部は民俗色の濃い作品が多いですね。「チャルダッシュ」もそうですね。「ドヴォルザークの主題によるスラヴ幻想曲」は「母の教えたまいし歌」が基になっていて、すごく好きです。「バンジョーとフィドル」は、まさにバンジョーとフィドルの演奏のように聴こえます。民俗色の濃い曲の方が、アーティストが命を削って人間ドラマを演じているような、その息吹きが伝わりやすいと思います。生きているという感じを大ホールでも伝えたいですね。

——コンサートの締め括りは、フランス近現代のミヨーの「屋根の上の牡牛」ですね。

萩原 大ホールでのデュオはオープンな曲が良いということで、最後は「屋根の上の牡牛」にしました。

成田 キャッチ―な曲で、元々、チャップリンの無声映画のために書かれました。15分くらいのドンチャン騒ぎの音楽。フランス語の「屋根の上の牡牛」は、慣用句として、ありえないことを意味します。ありえないことが目の前におきているという音楽。真昼間から酒飲んで、屋根の上で踊り狂ってわけがわからないというような音楽。カデンツァをオネゲルが書いています。基本的にサンバのリズムが全体を覆っています。それが、すべての調性で変奏されます。パリの感じもありますね。人種のサラダボウルで、何でもありみたいな。

※注:ミヨーは2年間、ブラジルに滞在していた。

——最後にこの名曲コンサートに向けてメッセージをお願いいたします。

萩原 子供たちの夏休みの思い出として、親御さんと出かけるきっかけになれば、いいと思いますし、大人の方も、オペラシティ コンサートホールの素晴らしい音響の中で涼みながら、楽しい時間を過ごしていただければと思います。

成田 コンサートに馴染みのない人にも、そこに行けば何か楽しいことがあるという感じで気軽に来てほしいですね。

楽しい時間を過ごしてもらいたいとの思いで演奏する成田・萩原夫妻
楽しい時間を過ごしてもらいたいとの思いで演奏する成田・萩原夫妻

公演データ

アフタヌーン・コンサート・シリーズ2026-2027
話題の夫婦デュオ!家族みんなで楽しもう♪
成田達輝&萩原麻未 名曲コンサート

8月3日(月)13:30 東京オペラシティ コンサートホール

ヴァイオリン:成田 達輝
ピアノ:萩原 麻未

プログラム
エルガー:愛の挨拶
クロール:バンジョーとフィドル
ドビュッシー:月の光
成田 達輝:八木節変奏曲)
クライスラー:ドヴォルザークの主題によるスラヴ幻想曲
モンティ:チャルダッシュ
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
* * *
ユーマンス:二人でお茶を (Tea for Two)~ミュージカル「ノー・ノー・ナネット」より
モリコーネ:ニューシネマパラダイス
久石 譲:「ハウルの動く城」より〝人生のメリーゴーランド〟
ヴュータン:アメリカの思い出
ミヨー:屋根の上の牡牛

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山田 治生

やまだ・はるお

音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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