ロレンツォ・ヴィオッティ指揮 東京交響楽団 第743回定期演奏会

一体感と即興性――ヴィオッティ&東響が会心の演奏を聴かせる

5月の東京交響楽団音楽監督就任披露で鮮烈な演奏を繰り広げたロレンツォ・ヴィオッティが2カ月ぶりに東響に帰ってきた。この間、ヴィオッティは、ウィーン・フィルの定期演奏会に登場し、シェーンブルン宮殿庭園でのウィーン・フィル初夏恒例の「サマーナイト・コンサート」も指揮した。この日の東響定期演奏会では、ブラームスの交響曲第3番とドヴォルザークの交響曲第7番を並べた。

音楽監督のロレンツォ・ヴィオッティが2カ月ぶりに東響の指揮台に立ち、ブラームスの交響曲第3番とドヴォルザークの交響曲第7番を披露した ©︎T.Tairadate/TSO
音楽監督のロレンツォ・ヴィオッティが2カ月ぶりに東響の指揮台に立ち、ブラームスの交響曲第3番とドヴォルザークの交響曲第7番を披露した ©︎T.Tairadate/TSO

ブラームスの交響曲第3番第1楽章は、力まず丁寧に美しく始まる。16型のオーケストラが洗練された音を奏でる。ヴィオッティは、音価を十分に取り、オーケストラを豊かに鳴らす。第1楽章終盤の高揚では大きな呼吸を感じた。第2楽章では中間部での弱音表現が印象に残る。クラリネット(𠮷野亜希菜)の活躍がこの楽章だけでなく演奏会全体で特筆される。第3楽章もゆったりとひたすら美しく。チェロ、ホルンが好演。第4楽章では激しい表現もあったが、音は粗野にならない。オーケストラに一体感がある。全曲を通してヴィオッティの美的センスが際立った。

ヴィオッティの指揮のもと、オーケストラが豊かに鳴った ©︎T.Tairadate/TSO
ヴィオッティの指揮のもと、オーケストラが豊かに鳴った ©︎T.Tairadate/TSO

ドヴォルザークの交響曲第7番は、ヴィオッティが2024年のウィーン・フィル・デビューでも取り上げた、彼の得意のレパートリー。第1楽章は、チェロとヴィオラのかすれたような弱音から始まり、音楽がたちまち変化していく。そのグラデーションに惹(ひ)きつけられた。オーケストラがよく鳴り、ダイナミックスの幅が広い。ヴィオラの充実が演奏全体を豊かなものにしている。第2楽章は情感深く美しい。第3楽章は、慌てずステップを踏む。音楽は単調になることなく変化していく。そして第4楽章では、情熱的で荒々しい表現も示された。作品にふさわしい熱があった。東響として、会心の演奏ではないだろうか。

ヴィオッティ得意のレパートリーであるドヴォルザークの交響曲第7番は、作品にふさわしい熱をもった演奏 ©︎T.Tairadate/TSO
ヴィオッティ得意のレパートリーであるドヴォルザークの交響曲第7番は、作品にふさわしい熱をもった演奏 ©︎T.Tairadate/TSO

定期演奏会にしては珍しく、アンコールでブラームスのハンガリー舞曲第1番が演奏された。指揮者とオーケストラが作り出す即興的な表現を楽しむ。ジョナサン・ノット監督時代とは違った一体感や即興性に、ヴィオッティ監督と東響とのつながりが一層深まったように感じられた。
(山田治生)

公演データ

ロレンツォ・ヴィオッティ指揮 東京交響楽団  第743回定期演奏会

7月18日(土)18:00サントリーホール 大ホール

指揮:ロレンツォ・ヴィオッティ
管弦楽:東京交響楽団
コンサートマスター:小林 壱成

プログラム
ブラームス:交響曲 第3番 ヘ長調 Op.90
ドヴォルザーク:交響曲 第7番 ニ短調 Op.70

アンコール
ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番

他日公演
7月19日(日)17:00りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール(新潟)

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山田 治生

やまだ・はるお

音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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