尾高忠明指揮 東京都交響楽団 第1049回定期演奏会Aシリーズ

〝The 尾高プログラム〟で面目躍如の快演

8月の都響定期演奏会Aシリーズは、尾高忠明の指揮。演目は、マエストロがいずれも1978年5月に初演した三善晃の「オーケストラのための〝ノエシス〟」と松村禎三の「ピアノ協奏曲第2番」(独奏:北村朋幹)、それにマエストロが愛してやまないエルガーの「エニグマ変奏曲」という、〝The 尾高プログラム〟である。

尾高忠明が指揮台に立ち、自身が初演した2曲とエルガーのエニグマ変奏曲を披露した 写真提供/東京都交響楽団 ©RikimaruHotta
尾高忠明が指揮台に立ち、自身が初演した2曲とエルガーのエニグマ変奏曲を披露した 写真提供/東京都交響楽団 ©RikimaruHotta

最初の激烈な三善作品から都響の機能美が全開。強靭(きょうじん)なエネルギーを持った音が次々に放射され、聴く者を圧倒する。鮮烈でいながらも細部は緻密で、それをいともナチュラルに表出するあたり、尾高&都響の面目躍如の感がある。

三善晃:オーケストラのための「ノエシス」から都響の機能美が全開 写真提供/東京都交響楽団 ©RikimaruHotta
三善晃:オーケストラのための「ノエシス」から都響の機能美が全開 写真提供/東京都交響楽団 ©RikimaruHotta

松村の協奏曲は、ピアノの北村が好演。強烈な第1楽章は三善作品同様のエネルギーに溢(あふ)れていながら、存在感抜群のピアノ・ソロもごく自然に同化していく。大音響のオーケストラと透明感のあるピアノのバランスも良く、この点にも尾高の巧みな手腕が発揮される。一部で高揚しながらも基本的に静謐(せいひつ)な第2楽章では、北村の繊細かつシャープなソロが終始光を放ち、神秘的な空気感を醸成する。都響のバックも極めて精緻だ。

松村禎三のピアノ協奏曲第2番では、ピアノの北村朋幹が好演 写真提供/東京都交響楽団 ©RikimaruHotta
松村禎三のピアノ協奏曲第2番では、ピアノの北村朋幹が好演 写真提供/東京都交響楽団 ©RikimaruHotta

後半のエルガーは、まず柔らかくしなやかな主題提示が、緊張感に満ちた前半との鮮やかな対照を形成する。その後の変奏もすべて巧緻で、力感のある快速調の第2、4、7、11変奏と緩やかな変奏との対比も実に見事。単独で知られる「ニムロッド」が突出せずに、流れの中の1つの変奏として表現された点もセンスの良さをうかがわせる。全体に楽曲の特質が衒(てら)いなく表現された快演で、尾高がオーケストラの機能性─特に重層的な弦楽器─を生かしながら、高密度かつノーブルな音楽を構築した印象が強い。
尾高のオーケストラをまとめる力や語り口の巧さと、都響の機能性の高さや音の厚みを再認識させられた公演。
(柴田克彦)

公演データ

東京都交響楽団 第1049回定期演奏会Aシリーズ

8月8日(土)14:00東京芸術劇場 コンサートホール

指揮:尾高忠明 
ピアノ:北村朋幹
管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:山本友重

プログラム
三善 晃:オーケストラのための「ノエシス」 (1978)
松村禎三:ピアノ協奏曲第2番(1978)
エルガー:エニグマ変奏曲Op.36

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柴田克彦

しばた・かつひこ

音楽マネジメント勤務を経て、フリーの音楽ライター、評論家、編集者となる。「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「音楽の友」「モーストリー・クラシック」等の雑誌、「毎日新聞クラシックナビ」等のWeb媒体、公演プログラム、CDブックレットへの寄稿、プログラムや冊子の編集、講演や講座など、クラシック音楽をフィールドに幅広く活動。アーティストへのインタビューも多数行っている。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)。

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