歴史を刻む名演

歴史に名を残す指揮者たちが内外のオーケストラと遺した貴重な記録が、続々とリリースされた。長年の歩みを振り返るのにふさわしい名演ばかりで、興味深い発見もある。

<BEST1>

小澤征爾&バイエルン放送響 「運命」&「英雄の生涯」

小澤征爾(指揮)/バイエルン放送交響楽団

ベートーヴェン:交響曲第5番/R・シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

小澤征爾&バイエルン放送響 「運命」&「英雄の生涯」
BRクラシックス(ナクソス・ジャパン)NYCX-10604

<BEST2>

創立70周年記念「日本フィルとマエストロ」

山田和樹、広上淳一、小林研一郎、ピエタリ・インキネン、アレクサンドル・ラザレフ、カーチュン・ウォン(指揮)/日本フィルハーモニー交響楽団

ラヴェル:「ボレロ」/レスピーギ:交響詩「ローマの松」/リムスキー=コルサコフ:組曲「金鶏」ほか

JPOレコーディングス JPCD1044~5(2枚組)

<BEST3>

朝比奈隆「ブルックナー:交響曲第7番」1968年、1999年東京ライヴ

朝比奈隆(指揮)/日本フィルハーモニー交響楽団(1968年12月収録)/大阪フィルハーモニー交響楽団(1999年11月収録)

オクタヴィア(タワーレコード)OVEP-00040(2枚組み)

海外の名門オーケストラへの客演を数多くこなした小澤征爾だが、ドイツ屈指のバイエルン放送響は、生涯に2度しか訪れる機会がなかったとは意外な話。1983年と90年に共演した際の記録のうち、後者が初CD化された。かつて映像では商品化されていたが、音源の丁寧なリマスターを経てのCDリリースは、うれしいところだ。
曲目もベートーヴェンの交響曲第5番にR・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」と、関心を呼ぶ組み合わせ。小澤は前半のベートーヴェンから、身上とする敏しょうな反射神経でオーケストラを積極的にドライブしていく。スマートな推進力で生き生きとした躍動感を引き出し、リズムの切れや、たたみ込む勢いが心に残る。
後半の「英雄の生涯」は小澤のおはこゆえ、楽団との呼吸にも余裕が生まれる。各部の巧みな設計と描き分けは、水を得た魚のようなみずみずしさで、しなやかな叙情もある。南独の楽団が持つ明朗な音色や柔らかい響きを生かした、全盛期の小澤らしい快演だ。

日本フィルが創立70年を祝って、この10年ほどにタクトを執った関係の深い指揮者たちとのライヴ音源による自主制作CD(2枚組み)を作った。日本フィルのサイトから購入できる。収録順に山田和樹、広上淳一、小林研一郎、ピエタリ・インキネン、アレクサンドル・ラザレフ、カーチュン・ウォンの6人と、豪華な顔ぶれ。収録曲(一部は抜粋)もコンビの特色がよく表れる作品が選ばれ、日フィルの好調な近況を伝える。

朝比奈隆は、ことし没後25周年。最も得意としたブルックナーから交響曲第7番が、約30年をおいた新旧2種類のライヴ録音のセット(SACDハイブリッド盤)で登場した。ブルックナーをレパートリーにした最初期の1968年に日本フィルを振った東京文化会館での演奏と、晩年の1999年に大阪フィルとサントリーホールで映像作品用に録った2者で、骨太な解釈の変化が面白い。

 

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深瀬 満

ふかせ・みちる

音楽ジャーナリスト。早大卒。一般紙の音楽担当記者を経て、広く書き手として活動。音楽界やアーティストの動向を追いかける。専門誌やウェブ・メディア、CDのライナーノート等に寄稿。ディスク評やオーディオ評論も手がける。

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