旬の勢いを誇る実力派の女性ソリストたちが、シンボリックなタイトルを付けたコンセプト・アルバムを出した。各奏者の深い思い入れを映す力作ぞろいだ。
<BEST1>
「ハイフェッツへのオマージュ」
マリア・ドゥエニャス(ヴァイオリン)/グスターボ・ドゥダメル(指揮)/シモン・ボリバル交響楽団、他
ラロ:スペイン交響曲/コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲、他
<BEST2>
「夜想の旅」
山下愛陽(ギター)
ダウランド:「夢想」/ソル:奇想曲「静けさ」/バリオス:「すべての祈り」/ブリテン:ダウランドによるノクターナル「来たれ、深き眠りよ」によるリフレクション、他
<BEST3>
「In One Movement」
小菅優(ピアノ)/ベネディクト・クレックナー(チェロ)
藤倉大:ピアノ・ソナタ/リスト:ピアノ・ソナタ /ベルク:ピアノ・ソナタ/藤倉 大:シャドウパス—チェロとピアノのための
ヤッシャ・ハイフェッツは20世紀を代表するヴァイオリン奏者のひとり。スペイン出身の新星、マリア・ドゥエニャスは幼いころから強い影響を受けたといい、尊敬する巨匠の愛奏曲を集めて捧げた。世界中から注目を浴びる彼女は、ことし1月のニューヨーク・フィルとの初共演で大成功を収めるなど、飛ぶ鳥を落とす勢いにある。本作でも、妖艶な音色を全開にしたパッションあふれる熱演で魅了する。
メインはラロの「スペイン交響曲」とコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲。特に後者はハイフェッツのおはこだった。いずれも華やかでむせかえるような色香が花開き、たっぷりとしたグラマラスな歌い込みが目もくらむよう。ラテン・フレーバー満点のドゥダメル指揮によるバックが、雰囲気よく独奏をもり立てる。
フィルアップの小品3曲はハイフェッツ自身が愛用していたストラディヴァリウスを使っての演奏が叶った。アルバムのすみずみまで、巨匠への敬愛にあふれている。
新鋭ギタリスト、山下愛陽(かなひ)の進境が著しい。父・和仁の薫陶を胸に、ドイツを拠点に活動を続け、プロデューサーを兼ねた新アルバムを出した。選曲のテーマは「月夜の静寂をめぐる旅路」あたりか。バロック期のダウランドからギター曲の定番であるソルやバリオス、現代曲のブリテンやマルタンまで、ひそやかな音世界を、繊細な感性を全開にして慈しむように弾き込んでいく。楽器をいとしみ抱え込む舞台姿が目に浮かぶようだ。
現代の日本を代表するピアニストの一人として、小菅優は名実ともに確かな歩みを続けている。「ソナタ」をテーマにした連続演奏会を基に、重要な作曲家による単一楽章のソナタに焦点を当て、1枚のディスクにまとめた。作品の本質に踏み込んだ解釈は入念で、表情の彫りが深い。藤倉大の作品では、チェロ(ベネディクト・クレックナー)を加えた委嘱作も取り上げた。
ふかせ・みちる
音楽ジャーナリスト。早大卒。一般紙の音楽担当記者を経て、広く書き手として活動。音楽界やアーティストの動向を追いかける。専門誌やウェブ・メディア、CDのライナーノート等に寄稿。ディスク評やオーディオ評論も手がける。










