日本の指揮者、オーケストラが力をこめた交響曲の新録音が相次いでリリースされた。世界的な音楽シーンでも、重要な役割を果たしている状況が浮かぶ。
<BEST1>
メンデルスゾーン 交響曲第2番「賛歌」
鈴木雅明(指揮)/ジョネ・マルティネス(ソプラノ1)/澤江衣里(同2)/ベンヤミン・ブルンス(テノール)
<BEST2>
ウォルトン 交響曲第1、2番、戴冠式行進曲「宝玉と王の杖」
山田和樹(指揮)/バーミンガム市交響楽団
<BEST3>
ショスタコーヴィチ 交響曲第7番「レニングラード」
トゥガン・ソキエフ(指揮)/NHK交響楽団
メンデルスゾーンの交響曲第2番「賛歌」は、聖書の言葉に基づく交響曲カンタータという形式を採る。通常のシンフォニーというよりは、大規模な声楽を伴う宗教作品的な色合いが濃い。この何年かは在京オーケストラが定期演奏会などで順番に取り上げ、耳にする機会が増えた。中でも鈴木雅明が率いるバッハ・コレギウム・ジャパンは、曲の性格からして真打ち登場の感があった。当サイトの速リポ欄でも絶賛された2024年10月の公演を前に行われたセッション録音が登場した。
両者はロマン派にレパートリーを広げているだけに、ピリオド楽器による演奏・解釈は堂に入ったもの。全編を統一するコラール主題の細密な扱いが際立ち、そこかしこにドイツの宗教音楽で培われた経験が生きている。独唱を含めた声楽陣も立派で、特筆すべきは鍛え抜かれた合唱だ。ドイツ語のディクションが明確で、テキストへの理解・共感が深い。収録会場となった所沢ミューズの音響もすばらしい。演奏・録音とも極上の1枚。
飛ぶ鳥を落とす勢いの山田和樹が、24年から音楽監督を務めるバーミンガム市交響楽団と、名門レーベルのドイツ・グラモフォンで初アルバムを出した。地元の英国に敬意を表してウィリアム・ウォルトンの交響曲を選ぶあたり、さすが策士の面目躍如だ。抜群のバトン・テクニックを駆使して複雑な曲想をわかりやすく解き明かし、明快な語り口が山田らしい。新たな才能発掘に長じたオーケストラも真摯に寄り添い、幸福な門出を飾った。
トゥガン・ソキエフは今やNHK交響楽団の実質的な首席客演指揮者に近い存在感を示し、名演を連発している。25年1月にNHKホールでの定期公演でライヴ録音されたショスタコーヴィチ「レニングラード」では、流動感ある滑らかなオーケストラ・ドライブによって作品を純音楽的に磨き上げ、余分な力みなく見通しの良いつくりで魅了する。
ふかせ・みちる
音楽ジャーナリスト。早大卒。一般紙の音楽担当記者を経て、広く書き手として活動。音楽界やアーティストの動向を追いかける。専門誌やウェブ・メディア、CDのライナーノート等に寄稿。ディスク評やオーディオ評論も手がける。










