初の試み続々 宮崎国際音楽祭が閉幕

「宇宙戦艦ヤマト」ほかを取り上げた「天空のシンフォニー」より。音楽監督 三浦文彰(ヴァイオリン)と髙木竜馬(ピアノ)
「宇宙戦艦ヤマト」ほかを取り上げた「天空のシンフォニー」より。音楽監督 三浦文彰(ヴァイオリン)と髙木竜馬(ピアノ) (C)K.Miura

31回目を迎えた宮崎国際音楽祭が4月26日から5月17日まで開催され、5つのメインプログラムをはじめ数多くのコンサートがメディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)を中心に行われた。そこで同会場における5月16日と17日のメインプログラム最後の2公演に足を運んだ。

5月16日はアイザックスターンホールでの「演奏会[4] ジュピター&ヤマト『天空のシンフォニー』」。下野竜也指揮、宮崎国際音楽祭管弦楽団が2曲を披露した。オーケストラのメンバーは超豪華。著名楽団のコンサートマスターや首席奏者、ソリスト等が多く居並び、しかもこの日は当音楽祭の前音楽監督・徳永二男がコンサートマスターを務めた。

「宇宙戦艦ヤマト」で清澄な響きを聴かせたソプラノの隠岐彩夏 
「宇宙戦艦ヤマト」で清澄な響きを聴かせたソプラノの隠岐彩夏 (C)K.Miura

前半のモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」は、豪華メンバーによる豊麗なサウンドが存分に威力を発揮した、〝モダン・オケによる古典演奏〟の魅力を再認識させる快演。様々な動きがたっぷりとした響きで奏されていくのだが、下野のキビキビとした推進力抜群のリードによって、プロポーションも保たれながら生気に満ちた音楽が展開される。

後半は羽田健太郎の交響曲「宇宙戦艦ヤマト」。1984年にNHK交響楽団によって初演された全4楽章の作品で、徳永は当時もコンサートマスターを務めていたという。曲は後期ロマン派風の極めてシンフォニックな音楽。それゆえオーケストラの華麗な響きがさらに生かされる。全体に精緻かつ迫力十分で、弦楽器のしなやかでボリューム感のある音色や各楽器の達者なソロも耳を奪う。第3楽章ではソプラノの隠岐彩夏の清澄なヴォカリーズ、第4楽章ではピアノの高木竜馬とヴァイオリンの三浦文彰の艶やかなソロが加わり、贅沢な時間をもたらす。

指揮を務めた下野竜也(左手間)と名手揃いの宮崎国際音楽祭管弦楽団
指揮を務めた下野竜也(左手間)と名手揃いの宮崎国際音楽祭管弦楽団 (C)K.Miura

翌5月17日は演劇ホールでの「演奏会[5] バレエ×オーケストラ『華麗なる新たな挑戦』」。パトリック・ド・バナ(バレエ芸術監督)らの振付によってバレエと音楽祭管弦楽団がコラボする公演だ。この日は幕も使用。最初に幕が開くと、オーケストラが舞台上のかなり後方に位置し、踊るスペースが広めに確保されているのが見て取れる。指揮(前半)は井田勝大、コンサートマスターは松浦奈々。

前半のバレエはカザフスタンを中心に活躍する男女が担当。まずは管弦楽のみでグラズノフの「バレエの情景」より前奏曲が演奏され、女性ダンサーによる「瀕死の白鳥」が続く。サン=サーンスの「動物の謝肉祭」の「白鳥」を用いた後者では、チェロのホン・スンアが流麗で安定したソロを聴かせる。「バレエの情景」から4曲の管弦楽演奏を挟んで、「ドン・キホーテ」第3幕より「グラン・パ・ド・ドゥ」が前半の締め。二人のダンサーがテクニカルな踊りを見せ、満場の喝采を浴びる。

後半は「MENDELSSOHN RELOADED」。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調全曲を用いた演目で、今回が世界初演となる。ここでは三浦文彰のヴァイオリン(弾き振り)が出色。意外に荒くなりがちなソロを細やかかつ艶美(えんび)に奏で、技量の高さを印象付ける。彼はタイミングが普段と若干異なるバレエとの合わせ(指揮)も巧みだ。バレエはイタリアの男女が中心。前半同様に手足の長いスタイルの良さが視覚的な楽しさを盛り上げる。

バレエと音楽の華麗な饗宴
バレエと音楽の華麗な饗宴 (C)K.Miura

音楽祭の前半〜中盤は、ピアノのアンデルシェフスキの出演もあってピュア・クラシックの度合いが強かったものの、最後に「ヤマト」や「バレエとのコラボ」が置かれたあたりに、〝クラシックからの広がり〟を企図する音楽監督・三浦文彰の意志がうかがえる。

今年は、バレエとのコラボのほか、宮崎神宮での「かがり火コンサート」、「500円コンサート」における募金活動、公開リハーサル、チケットテイクや影アナを地元の高校生が担当する等々、初の試みが多数実施されたとの由。今回はかくして、音楽監督も2年目となった三浦文彰色の強まりを実感させる音楽祭となった。

宮崎神宮における初の「かがり火コンサート」
宮崎神宮における初の「かがり火コンサート」 (C)K.Miura

公演データ

宮崎国際音楽祭

4月26日(日)~5月17日(日) メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)ほか

取材公演
〇演奏会〔4〕ジュピター&ヤマト「天空のシンフォニー」
5月16日(土)アイザックスターンホール

指揮:下野竜也
ヴァイオリン:三浦文彰
ピアノ:髙木竜馬
ソプラノ:隠岐彩夏
宮崎国際音楽祭管弦楽団(コンサートマスター:徳永二男)

モーツァルト:交響曲第41番ハ長調「ジュピター」K551
羽田健太郎:交響曲「宇宙戦艦ヤマト」

〇演奏会〔5〕バレエ×オーケストラ「華麗なる新たな挑戦」
5月17日(日) 演劇ホール

指揮:井田勝大
振付/バレエ芸術監督:パトリック・ド・バナ
バレエ:エレオノーラ・アバニャート/ジャコモ・カステッラーナ/アイゲリム・ベケタエワ/バクティヤール・アダムザン
ヴァイオリン/弾き振り:三浦文彰
宮崎国際音楽祭管弦楽団

グラズノフ:「バレエの情景」より前奏曲
「瀕死の白鳥」(サン=サーンス:「白鳥」 振付:ミハイル・フォーキン)
グラズノフ:「バレエの情景」より抜粋
ミンクス:「ドン・キホーテ」第3幕より〝グラン・パ・ド・ドゥ〟(振付:マリウス・プティパ)
「MENDELSSOHN RELOADED」(メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調 Op64 振付:パトリック・ド・バナ )※世界初演 ほか

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柴田克彦

しばた・かつひこ

音楽マネジメント勤務を経て、フリーの音楽ライター、評論家、編集者となる。「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「音楽の友」「モーストリー・クラシック」等の雑誌、「毎日新聞クラシックナビ」等のWeb媒体、公演プログラム、CDブックレットへの寄稿、プログラムや冊子の編集、講演や講座など、クラシック音楽をフィールドに幅広く活動。アーティストへのインタビューも多数行っている。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)。

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