辻󠄀井伸行プレミアム・リサイタル2026

辻󠄀井のオーケストラを思わせる鮮明な音色、圧倒的な演奏力で聴衆を魅了

辻󠄀井伸行は、2026年6月から7月にかけて「プレミアム・リサイタル」のツアーを開催。筆者は、浜離宮朝日ホールで彼のリサイタルを聴いた。

「プレミアム・リサイタル」ツアー開催中の辻󠄀井伸行が浜離宮朝日ホールに登場
「プレミアム・リサイタル」ツアー開催中の辻󠄀井伸行が浜離宮朝日ホールに登場 ©N.IKEGAMI

プログラム冒頭は、シューマン「子供の情景」。辻󠄀井の指から生み出されるぬくもり溢れる響きには、シューマンの恋人クララとの将来の夢がにじみ出ている。彼は、13曲をひとつの音物語にまとめ上げ、それぞれの小品を表情豊かに奏でていく。「子供の情景」では、第7曲〝トロイメライ〟が節目の曲となっているが、彼はその音楽に深い情感を込めて一音一音をじっくりと綴り、聴く者を夢の世界へといざなう。

シューマン「子供の情景」の第7曲〝トロイメライ〟で、聴く者を夢の世界へといざなった ©N.IKEGAMI

ドビュッシーの作品から2曲。辻󠄀井の持ち味である響きの美しさが存分に発揮された。
6曲で構成される組曲のような性格を持つ「子供の領分」において、彼はそれぞれの小品に独自の生彩を与える。ペダルを絶妙にコントロールし、重みを帯びた音によってそれぞれの作品をクリアに描き出した。〝雪は踊っている〟では、微細に変化するモティーフをデリケートに奏でる。その音の響き一つひとつは波紋のように広がり、こまやかな音の遠近を創出。雪の舞う様子を幻想的に表現した。続いて「喜びの島」。辻󠄀井は、内面から湧き上がるようなパッションを鮮やかに表した。

湧き上がるようなパッションを鮮やかに表したドビュッシー「喜びの島」 ©N.IKEGAMI

休憩をはさみ、プーランク「3つのノヴェレッテ」。辻󠄀井は、音の綾をデリケートに織り上げ、立体的でふくよかな響きを醸し出す。プーランク特有の洒脱なメロディを、彼は美しく浮かび上がらせる。また、第2曲における生き生きとした打鍵は、ウイットに満ちた音楽を生み出した。

ファリャ「恋は魔術師」のピアノ独奏版では、辻󠄀井の卓越した演奏技巧が遺憾なく披瀝された。楽器を豊かに鳴り響かせ、オーケストラを思わせる鮮明な音色を通して情景を劇的に捉え、深い陰影に富んだスケールの大きな音楽を聴かせてくれた。

辻󠄀井の卓越した演奏技巧が遺憾なく披瀝されたファリャ「恋は魔術師」
辻󠄀井の卓越した演奏技巧が遺憾なく披瀝されたファリャ「恋は魔術師」©N.IKEGAMI

そして、リスト「スペイン狂詩曲」。音楽を徐々に高揚させ、同時にメロディを雄弁に語る。そして、辻󠄀井ならではの圧倒的な演奏力によって、壮麗で情熱的なフィナーレを形成した。

(道下京子)

公演データ

辻󠄀井伸行プレミアム・リサイタル2026

7月7日(火)19:00浜離宮朝日ホール

ピアノ:辻󠄀井伸行

プログラム
シューマン:子供の情景
ドビュッシー:子供の領分
ドビュッシー:喜びの島
プーランク:3つのノヴェレッテ
ファリャ:恋は魔術師(作曲者によるピアノ版)
リスト:スペイン狂詩曲

アンコール
ドビュッシー:月の光
セヴラック:ロマンティックなワルツ
リスト:超絶技巧練習曲第10番
リスト:リゴレット・パラフレーズ

これからの他日公演
7月10日 (金)19:00第一生命ホール(東京)
7月12日 (日)14:00住友生命いずみホール(大阪)

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道下京子

みちした・きょうこ

桐朋学園大学音楽学部作曲理論学科卒業、埼玉大学大学院文化科学研究科修士課程修了。共著「ドイツ音楽の一断面――プフィッツナーとジャズの時代」など。「音楽の友」「ショパン」などの 音楽月刊誌や書籍、新聞、Web媒体、演奏会プログラムやCDの曲目解説など、ピアノのジャンルを中心に音楽経験を活かした執筆を行なっている。

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