~112~ この春から初夏にかけての20代、30代の指揮者の活躍

25歳でトゥールーズ・キャピトル国立管の音楽監督に就任したタルモ・ペルトコスキ
25歳でトゥールーズ・キャピトル国立管の音楽監督に就任したタルモ・ペルトコスキ (C)堀田力丸

この6月に、タルモ・ペルトコスキが、音楽監督を務めるトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団とともに来日した。ペルトコスキは、2000年、フィンランド生まれ。2027年からロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とシカゴ交響楽団のシェフを兼務するクラウス・マケラ(1996年生)やフィルハーモニア管弦楽団の首席指揮者であるサントゥ=マティアス・ロウヴァリ(1985年生)と同じヨルマ・パヌラ(1930年生)門下である。20代前半からドイツ・カンマーフィル・ブレーメンやロッテルダム・フィルの首席客演指揮者を歴任する俊英。今回の来日公演のマーラーの交響曲第6番「悲劇的」やショスタコーヴィチの交響曲第10番でも独自の解釈で鬼才ぶりを示した。

それにしても、フィンランドの若手指揮者の進出は驚異的である。この7月にはやはりパヌラ門下であるミカエル・ロポネンが群馬交響楽団と東京都交響楽団に客演して日本にデビューする。彼は、2003年生まれだから、ペルトコスキよりも若い。ピアニストとしても活躍している。

5月には、今、世界の檜舞台で活躍する30代のマエストロが、相次いで東京にやってきた。ロレンツォ・ヴィオッティ(1990年生)とラハフ・シャニ(1989年生)である。ヴィオッティは、東京交響楽団音楽監督就任披露として、マーラーの交響曲第1番やラヴェルの「ダフニスとクロエ」(全曲)などを指揮して、大きな成功を収めた。ヴィオッティは、この6月にはウィーン・フィルの定期演奏会やシェーンブルンでのサマーナイトコンサートを指揮する活躍ぶり。一方、シャニは、今秋首席指揮者に就任するミュンヘン・フィルとともに来日し、マーラーの交響曲第1番などで、その実力を発揮した。シャニは、2018年、ロッテルダム・フィルの首席指揮者に就任し、2021年からは、ズビン・メータの後任としてイスラエル・フィルの音楽監督も務めている。

5月から6月にかけてウィーン交響楽団を率いて来日したペトル・ポペルカは、1986年、プラハ生まれ。コントラバス奏者として、ドレスデン・シュターツカペレで活躍したのち、2019年に退団し、指揮者に転身。わずか数年の間に、プラハ放送交響楽団とウィーン交響楽団のシェフに就任。既に、ベルリン・フィル、東京交響楽団、NHK交響楽団などに客演。2029年にバイエルン州立歌劇場の音楽総監督に就任することが決まっている。

そのほか、4月に東京二期会で「ルル」を指揮したオスカー・ヨッケルも才能あふれる若手指揮者だ。1995年、ドイツ生まれ。作曲活動にも取り組んでいる。

もちろん、日本の若い指揮者も活躍している。沖澤のどか(1987年生)は、常任指揮者を務める京都市交響楽団とプロコフィエフの交響曲全曲演奏のチクルスを5月に開始し、九州交響楽団の首席指揮者である太田弦(1994年生)は、九響と2月にマーラーの交響曲第9番を、4月にウォルトンの交響曲第1番を取り上げるなど、非常に意欲的なプログラムに取り組んでいる。

素晴らしい活躍をみせる若きマエストロたち。ただ残念なのは、筆者(1964年生)が彼らの円熟期の演奏に触れることができないということである。

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山田 治生

やまだ・はるお

音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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