オーケストラの編成を表すときに、二管編成、三管編成、四管編成などの言葉が使われるが、それは基本的に木管楽器のそれぞれの人数を示すものであり、木管楽器の数でオーケストラのサイズがある程度わかる。
弦楽器では、編成の大きさを示すとき、第1ヴァイオリンの人数で表すことが多い。第1ヴァイオリンが16名なら「16型」、8名なら「8型」というような具合である。
5月16日のロレンツォ・ヴィオッティ音楽監督就任披露となる東京交響楽団の定期演奏会では、ベートーヴェンの交響曲第1番で10型が、マーラーの交響曲第1番「巨人」では16型が採用された。ベートーヴェンの第1番が2管編成、マーラーの第1番が4管編成ということを考えると、妥当といえるが、ベートーヴェンの交響曲第1番は12型や14型で演奏されることが多い。
オーケストラの弦楽器の標準サイズ(フル・サイズ)は、第1ヴァイオリン16名、第2ヴァイオリン14名、ヴィオラ12名、チェロ10名、コントラバス8名、つまり16型(弦楽器だけで60名!)といわれている。オーケストラによっては14型(14,12,10,8,6)を標準とするところもある。
もともとオーケストラの弦楽器の人数は、そんなに多いものではなかった。モーツァルトの時代の第1ヴァイオリンは10名未満、ベートーヴェンの時代では10名前後といわれている。まだ、オーケストラの人数は固定されていなかった。
その後、ワーグナー、マーラー、R・シュトラウスへとつながる後期ロマン派の時代に、管楽器だけでなく、弦楽器も大編成になっていった。
ワーグナーの「ニーベルングの指環」では、弦楽器の最低人数として、16,16,12,12,8の計64名が必要と明記されているし、シュトラウスの「アルプス交響曲」では、最低限、18,16,12,10,8とスコアに書かれている。楽譜に指定された弦楽器の人数で最大は、シェーンベルクの「グレの歌」ではないだろうか。少なくとも、20,20,16,16,12、計84名と指示されている。今年4月の東京・春・音楽祭では、NHK交響楽団が20型で「グレの歌」を演奏していた。
そして、第二次世界大戦後、世界のメジャー・オーケストラのサイズは16型(あるいは14型)が標準になっていった。ウィーン・フィルではマゼールの時代あたりから、ヨハン・シュトラウスのワルツ(もともとは4~5型の楽団で演奏する音楽)を16型で演奏し、カラヤン&ベルリン・フィルは1960年代からモーツァルト後期やベートーヴェン初期の交響曲も16型で演奏したといわれている(後にカラヤン&ベルリン・フィルもモーツァルトでは弦楽器の人数を減らすようになる)。全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルがどんなレパートリーでも16型で演奏していた影響は絶大であったといえるだろう。
今では、弦楽器の人数は、作品の時代によって変えるのが一般的となっている。古典派なら10~12型、ロマン派なら14型、マーラーや近現代音楽では16型というのがよくあるパターンに違いない。マーラーで最大編成である16型を採るのはどのオーケストラも共通であろうが、ブラームス、チャイコフスキー、ドヴォルザークらのロマン派交響曲を演奏するときに、16型を採るのか、14型を採るのかで、そのオーケストラの標準編成が示されるように思う。
やまだ・はるお
音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。










