~113~ 「スター・ウォーズ」は、20世紀後半のオーケストラ音楽を代表する作品

オール・ジョン・ウィリアムズ・プログラムで聴き手を魅了した原田慶太楼指揮NHK交響楽団
オール・ジョン・ウィリアムズ・プログラムで聴き手を魅了した原田慶太楼指揮NHK交響楽団=6月28日「N響オーチャード定期」より (C)K.Miura

6月28日に「N響オーチャード定期」で、原田慶太楼指揮NHK交響楽団による、オール・ジョン・ウィリアムズ・プログラムを聴いた。「スター・ウォーズ」「E.T.」「ハリー・ポッター」「スーパーマン」など、映画音楽を中心に演奏された。まさに現代のオーケストラというべき、ゴージャスな響き。シンフォニックで迫力のある管楽器、シルクのように艶のある弦楽器、多彩を極める打楽器。ジョン・ウィリアムズがスコアに書き込んだオーケストレーションの妙が満喫できた。そして、もしかしたら、現代のオーケストラ(モダン・オーケストラ)には、ジョン・ウィリアムズのような音楽が一番合っているのかもしれないと思った。つまり、今のオーケストラ奏者が普通に演奏して自然に最も美しい音楽となる作品。

クラシック音楽の世界では、作品の時代に合った演奏様式というものが重視される。バロック(バッハやヘンデル)や古典派(モーツァルトやベートーヴェン)の時代の音楽はその時代の楽器(ピリオド楽器)で、その時代の様式で演奏することこそがオーセンティック(正統的)だといわれるようになった。かつてフランス・ブリュッヘンは、〝18世紀オーケストラ〟を創設し、オリジナル楽器(骨董楽器または複製楽器)を用いて、モーツァルトやハイドンの時代の演奏法や様式に従って、楽譜を再現する試みを行った。それどころか、近年は、シューマンやブラームスなどロマン派の音楽もその時代の楽器で演奏されることが増えてきた。

そう考えると、モダン・オーケストラにとっては、ジョン・ウィリアムズの作品を演奏することは、とてもオーセンティックな行為なのではないかと思う。現在、20世紀後半に書かれたオーケストラ作品で最も高い頻度で演奏されている曲は、「スター・ウォーズ」とバーンスタインの「ウェスト・サイド・ストーリー」シンフォニック・ダンスの2つと言ってしまって間違いないだろう。「スター・ウォーズ」は20世紀後半のオーケストラ音楽の主要レパートリー。もし現代の誰かが〝20世紀オーケストラ〟を創設したら、「スター・ウォーズ」がそのレパートリーの中心になって当然だと思う。

それは、「スター・ウォーズ」の人気がとても高いだけでなく、ジョン・ウィリアムズが、リヒャルト・シュトラウス、ラヴェル、リムスキー=コルサコフ、ストラヴィンスキー、コルンゴルトなどの音楽を吸収して、交響的映画音楽を復活させ、20世紀後半において、オーケストラ音楽そのものを復権させたからにほかならない。そしてオーケストラ音楽においてメロディを復権させた功績も大きい。

ジョン・ウィリアムズは、20世紀後半に完成した巨大なシンフォニー・オーケストラの性能を極限まで知り尽くしているし、モダン・オーケストラを最も雄弁に具現した作曲家といえる。だからこそ、ウィーン・フィルやベルリン・フィルやサイトウ・キネン・オーケストラなどの世界最高峰のオーケストラが現代最高の作曲家兼指揮者として彼を指揮台に招いたのである。

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山田 治生

やまだ・はるお

音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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