人気ヴァイオリニスト、レイ・チェンの提唱するプロジェクトの成果と名技を一度に味わう
レイ・チェンが提唱するプロジェクト「Play with Ray」のコンサートが9月19日、すみだトリフォニーホールで開催された。アマチュアの演奏家や音楽家に活躍の場を提供する試みで、これまでロサンゼルス(2019年)、シドニー(2023年)で開催され、今回で3回目となる。オーケストラは新日本フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:西江辰郎)。
前半はオーディションでファイナリストとなった小椋かのん(12歳)、ウィンストン・ウー(18歳)、ガブリエル・チャン(15歳)とチェンによるバッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」。第1楽章を小椋、第2楽章をウー、第3楽章をチャンと、入れ替わりでソロを担当し、チェンは弾き振りで共演した。
この日のチェンの演奏もいつもの通りに動きや表情も大きく、音楽は開放的で溌剌(はつらつ)としている。ピリオド系の鋭角的な表現に通じる一方、ビブラートを用い、陰影のつけ方もバロック専門の演奏家とは異なる。若い3人の演奏はそれぞれ個性を保ちつつ、チェンとの交流を通して、こうした音楽への向き合い方を学んだことが感じられる。フレーズの語尾を明確に響かせる点や、レガートの美しさも印象的で、とりわけウーの表現が際立った。皆、チェンとの呼吸の合わせ方も見事。
演奏後にはチェンから3人への称賛と、3人からの感謝のスピーチ。アンコールではヴィヴァルディ「4つのヴァイオリンのための協奏曲」が披露され「夢のソリスト体験」を実感する舞台となった。
後半はチェンのソロ。現代屈指の作曲家マックス・リヒターによる「リコンポーズド・バイ・マックス・リヒター~ヴィヴァルディ〝四季〟」では、原曲のフレーズやメロディーを切り取り、ミニマル風の反復や弦による持続するクラスター的な響きと組み合わせることで、名曲を21世紀のクールな音響空間へと再構築する。「Spring 1」の冒頭と「Winter 2」で、バロックの響きを現代的なサウンドが包み込む感触が鮮烈だった。
最後はサラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」。豪奢(ごうしゃ)な響きと超絶技巧が一体となり、燃焼度の高い音楽がホールを満たした。アンコールには「ワルチング・マチルダ(C.マクファーソン)と、チェンが結婚式のために委嘱した、ラフマニノフの交響曲第2番を原曲とする「フォーエバー・スターツ・トゥデイ」(E.タンジル)を披露。大きな拍手とスタンディングオベーションで幕を閉じた。
チェンの魅力に惹(ひ)かれた聴衆は多く、若い世代の層の姿も目立った。世代を超えて音楽家同士が出会う、このプロジェクトならではの熱気が会場を包んだ。
(城間 勉)
公演データ
レイ・チェン Play with Ray
9月19日(土) 15:00すみだトリフォニーホール 大ホール
ヴァイオリン:レイ・チェン
―オーディションファイナリスト(優勝者)―
ヴァイオリン:小椋かのん、ウィンストン・ウー、ガブリエル・チャン
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:西江 辰郎
プログラム
J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043
マックス・リヒター:リコンポーズド・バイ・マックス・リヒター~ヴィヴァルディ「四季」
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
アンコール
第1部
ヴィヴァルディ:4つのヴァイオリンのための協奏曲 第10番 ロ短調 Op.3-10 より 第1楽章
第2部
C.マクファーソン:ワルチング・マチルダ
E.タンジル:フォーエバー・スターツ・トゥデイ
しろま・つとむ
音楽大学で音楽学を学ぶ。卒業後はクラシック専門音楽雑誌とクラシック情報誌の編集業務に携わり、2022年からフリーランスとして活動。とくに好きなジャンルは協奏曲、ピアノ曲、オペラなど(もちろんそれ以外のジャンルも聴きます)。B級グルメ探訪を趣味としている。イヌ科の動物を愛する。










