久石譲の視点で捉えた、ニューヨークの「ポスト・ミニマル」の世界
作曲家・指揮者として世界を駆けまわる久石譲のコンサート「JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE VOL.13」が東京オペラシティで開かれた。演奏は久石譲&ミュージックフューチャーバンド。ジュリア・ウルフ、デヴィッド・ラング、キャロライン・ショウ、スティーヴ・ライヒらの作品に、久石の新作を加えたプログラム。
久石とライヒ以外は、一般には馴染みの薄い名前かもしれない。だが、久石の視線を通して、アメリカ、なかでもニューヨークの音楽界の一断面が切り取られたようで興味深かった。作風も楽器編成も多彩。まさに「ポスト・ミニマル」と呼ぶにふさわしい世界で、日頃、オーソドックスなクラシックを聴く筆者も愉しめた。若い世代が目立つ満席の盛況。
ウルフの「ビリーヴィング」は、チェロのオスティナートやエレキ・ギターや打楽器が加わるロック風の音楽に、奏者たちの声が重なるのが新鮮。曲名はビートルズのナンバーにちなむという。「リーリング」では、フォークロア風の人声(録音)と現代的なサウンドが交錯し、エキゾチックな魅力を放つ。
ラングの「ヴェント」はフルートと弦楽アンサンブルのための作品。題名は「空気・光の入り口」の意味。フルートの管から放たれる空気そのものが音になったような、センスのよい音楽だ。
久石の新作「The Circles 2026」は、昨年の作品を発展させたもの。2つの部分から成り、主部は、中間部から特定のフレーズが曲の冒頭へと逆行するユニークな構成。弦楽四重奏にクラリネット、打楽器の編成が機能的に働く音色感も出色。反復するリズムと多彩な音色が、いつのまにか快感となって脳に刷り込まれる逸品。
弦楽四重奏のために書かれたショウの「アントラクト」は、なんとハイドンの弦楽四重奏曲 Op.77-2に着想を得た作品。メヌエットの形式を応用し、特殊奏法を絡ませ、独自の空間を紡ぐ。
最後はライヒの「レディオ・リライト」。ロックバンド、レディオヘッドの「エヴリシング・イン・イッツ・ライト・プレイス」と「ジグソー・フォーリング・イントゥ・プレイス」のモチーフをもとに、ミニマル・ミュージックとして再構成した作品だ。ロックとミニマルの親和性を改めて感じた。弦楽四重奏、フルート、クラリネット、ピアノ、打楽器など、多彩な音色の塊が反復される。
(指揮:「The Circles 2026」「レディオ・リライト」)
公演データ
JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE VOL.13
11月4日(水)19:00東京オペラシティ コンサートホール
久石譲&ミュージックフューチャーバンド
指揮:久石譲
第1ヴァイオリン:近藤薫
第2ヴァイオリン:城戸かれん
ヴィオラ:デイヴィッド・メイソン
チェロ:櫃本瑠音
コントラバス:城満太郎
フルート:Cocomi
クラリネット:マルコス・ペレス・ミランダ
バス・クラリネット:有馬理絵
パーカッション:大場章裕、東佳樹
ピアノ:三又瑛子、今村尚子
エレクトリック・ギター:塚田剛
エレクトリック・ベース:中田しんいちろう
プログラム
ジュリア・ウルフ:ビリーヴィング
ジュリア・ウルフ:リーリング
デヴィッド・ラング:ヴェント
久石譲:The Circles 2026
Ⅰ. Prologue
Ⅱ. The Circles
キャロライン・ショウ:アントラクト
スティーヴ・ライヒ:レディオ・リライト
しろま・つとむ
音楽大学で音楽学を学ぶ。卒業後はクラシック専門音楽雑誌とクラシック情報誌の編集業務に携わり、2022年からフリーランスとして活動。とくに好きなジャンルは協奏曲、ピアノ曲、オペラなど(もちろんそれ以外のジャンルも聴きます)。B級グルメ探訪を趣味としている。イヌ科の動物を愛する。










