エリアス・グランディ指揮 札幌交響楽団 第677回定期演奏会

若きシェフ、エリアス・グランディのタクトで札響が紡ぎ出した繊細で美しいマーラー

首席指揮者エリアス・グランディが指揮台に立った札幌交響楽団の定期演奏会を聴いた。曲目はマーラーの交響曲第3番。
開演に先立ちグランディが予定外で曲目のミニ解説を行った。各楽章の表題的意味合いをひと通り説明した上で、「この作品は人生への賛歌であり、前半は自然の力強さを表している」などと自身の解釈を述べた。

札幌交響楽団の定期演奏会で指揮台に立ったエリアス・グランディ (C)札幌交響楽団
札幌交響楽団の定期演奏会で指揮台に立ったエリアス・グランディ (C)札幌交響楽団

弦楽器の編成は16型で対抗配置、管楽器は譜面の指定通りの数。舞台に所狭しと居並ぶ大編成のオーケストラの威容は、半世紀前、札響がオーケストラ鑑賞の原点となった筆者にとっては隔世の感があった。50年前の札響は12型2管編成が基本だったからだ。また、この日はホルン1番に上間善之(東響首席)、クラリネット2番が伊藤圭(N響首席)、ティンパニ2番に塩田拓郎(東京フィル首席)と東京の名手たちも客演奏者として参加し公演の成功を下支えしていた。

長大な第1楽章はグランディの言葉通りの演奏。力強い推進力を維持しながら自然の様々な営みを生々としたタッチで描き出していく。全曲にわたってアウフタクトを深くとり旋律を深く歌いこんでいく一方で、内声部にもしっかり光を当てることで自然の多彩な息吹が巧みに表現されていた。札響の弦楽器セクションのサウンドは柔らかく繊細で東京のオケとは明らかに異なる個性を有している。管楽器も歌心に溢(あふ)れたソロが特徴的。この日はトロンボーン首席(山下友輔)、オーボエ首席(関美矢子)がとりわけ印象を残す見事なソロを披露した。第1楽章のコーダでは一気にテンポを上げて勢いのあるエンディング。グランディと札響の今を表しているかのようでもあった。

第1楽章のコーダでは一気にテンポを上げ、勢いのあるエンディングを聴かせた (C)札幌交響楽団
第1楽章のコーダでは一気にテンポを上げ、勢いのあるエンディングを聴かせた (C)札幌交響楽団

第2楽章は室内楽のような親密なアンサンブルが繰り広げられ、管楽器のソロに寄り添う弦楽器の細かいニュアンスがデリケートに表出されていた。第3楽章ではポストホルンをステージ正面のパイプオルガン下手後方の出入口の外で演奏。さらに第5楽章、「ピム・バム」と歌われる少年少女合唱とチューブラーベルは舞台後方3階席下手に配置するなどグランディが曲想に合わせて響き方、聴こえ方に細心の注意を払っていることが窺(うかが)えた。
また、少年少女合唱は天使たちが天国から呼びかける様を表すためか、子どもたちに口の周りに手を当てて拡声器のような形を作って歌わせていた。またゲルヒルト・ロンベルガーのソロは聴衆に語りかけるような雰囲気で歌われた。

ゲルヒルト・ロンベルガーのソロは、聴衆に語りかけるように歌われた (C)札幌交響楽団
ゲルヒルト・ロンベルガーのソロは、聴衆に語りかけるように歌われた (C)札幌交響楽団
少年少女合唱とチューブラーベルは舞台後方3階席下手に配置された (C)札幌交響楽団
少年少女合唱とチューブラーベルは舞台後方3階席下手に配置された (C)札幌交響楽団

最終楽章はグランディの意思が透徹された繊細な美しさに溢れた演奏となった。主旋律を支える弦楽器のピアニッシモのトレモロにまで細かいニュアンスが付けられていたのは驚かされた。コーダに向けてじっくりと力を蓄積していくようなアプローチで最終場面でも金管楽器やティンパニを必要以上に強奏させることなくオルガンのような厚く柔らかな響きで全曲を締め括(くく)った。
(宮嶋 極)

公演データ

札幌交響楽団 第677回定期演奏会

5月30日(土)17:00 札幌コンサートホール Kitara

指揮:エリアス・グランディ
コントラルト:ゲルヒルト・ロンベルガー
児童合唱:HBC少年少女合唱団ジュニアクラス
女声合唱:札響合唱団
管弦楽:札幌交響楽団
コンサートマスター:田島 高宏

プログラム
マーラー:交響曲第3番ニ短調

他日公演
5月31日(日)13:00 札幌コンサートホール Kitara

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宮嶋 極

みやじま・きわみ

放送番組・映像制作会社である毎日映画社に勤務する傍ら音楽ジャーナリストとしても活動。オーケストラ、ドイツ・オペラの分野を重点に取材を展開。中でもワーグナー作品上演の総本山といわれるドイツ・バイロイト音楽祭には2000年代以降、ほぼ毎年訪れるなどして公演のみならずバックステージの情報収集にも力を入れている。

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