名匠パスカル・ヴェロ×仙台フィルが培った響き、小曽根真が刻むラフマニノフの新相が聴衆を魅了
仙台フィルハーモニー交響楽団の東京公演をサントリーホールで聴いた。2019年からスタートしたシリーズ7回目のコンサート。指揮は2006年から18年まで常任指揮者として活躍し、現在は桂冠指揮者のパスカル・ヴェロ。ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」とリムスキー=コルサコフ「シェエラザード」というロシア名曲プロ。人気ジャズ・ピアニスト小曽根真が登場することもあって大盛況。
前半のラフマニノフ。ソロを弾いた小曽根はヴェロとは初共演。動画メッセージのなかで「ジャズ・プレイヤーとしてクラシックを弾く時は、どうころんでも、ジャズ的な解釈しかできない」と述べている通り、この日の演奏も彼の音楽性が刻印されたラフマニノフだった。軽やかなリズム感とジャズ的な歌いまわしが特徴的な彼のアプローチはロシア系奏者たちの豪壮な表現とはまったく異なる路線なのだが、これが実に新鮮。ヴェロはその辺りを配慮して、小曽根の感性を生かすようオケを牽引していたのはさすが。
有名な第18変奏でロマンティックなムードが全開、ヴェロも弦セクションを大きく歌わせて盛り上げる。小曽根は第23変奏で自由奔放なカデンツァを披露した後は、終結部まで快活な雰囲気を保持したまま鮮やかに曲を締めくくった。アンコールは自作「オベレク」。ポーランドのダンス風のピアノ曲を手拍子足拍子付で熱演、これもまた場内を沸かせた。
パスカル・ヴェロはフランスものだけでなくストラヴィンスキー「三大バレエ」などオーケストラの豊かな色彩性を重視する傑作を長年にわたり仙台フィルでとり上げ、高い実績をあげている。プログラム後半に置かれた「シェエラザード」は両者が培ってきたサウンドを改めて伝える曲として最適だったと思う。ヴェロは全編通じてゆったりとしたテンポを設定。その結果、全編にわたり管楽器のソロの巧みな表現が際立ち作品に奥深さをもたらし、「千夜一夜物語」の登場人物たち──豪圧なシャーリアール王や若い王子と王女──が見事に色付けされていた感がある。色彩の爆発という点では「終曲」での壮大な表現も爽快だった。
また、物語の語り部シェエラザードを表すコンサートマスター(神谷未穂)の弾くヴァイオリンソロも出色。深みをもった音色と微妙にポルタメントを効かせながら伸びていく高音パッセージは美しく、聴き手を物語へと引き込むに十分。などなど、発見の多い公演だった。オーケストラ・アンコールはシャブリエのスペイン情緒が香る「ハバネラ」。
(城間 勉)
公演データ
アイリスオーヤマ・クラシックスペシャル2026
パスカル・ヴェロ指揮 仙台フィルハーモニー管弦楽団
6月9日(火) 19:00サントリーホール 大ホール
指揮:パスカル・ヴェロ
ピアノ:小曽根真
管弦楽:仙台フィルハーモニー管弦楽団
コンサートマスター:神谷未穂
プログラム
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」
ソリスト・アンコール
小曽根 真:オベレク
オーケストラ・アンコール
E.シャブリエ:ハバネラ
しろま・つとむ
音楽大学で音楽学を学ぶ。卒業後はクラシック専門音楽雑誌とクラシック情報誌の編集業務に携わり、2022年からフリーランスとして活動。とくに好きなジャンルは協奏曲、ピアノ曲、オペラなど(もちろんそれ以外のジャンルも聴きます)。B級グルメ探訪を趣味としている。イヌ科の動物を愛する。










