ラハフ・シャニ指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 日本ツアー2026 2日目

ミュンヘン・フィル新黄金時代到来の予感――古代と近代が融合する理想的な表現で聴衆を魅了

ラハフ・シャニ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の東京公演2日目。初日に続いて青木尚佳がコンサートマスターを務めた。

冒頭のベートーヴェン「エグモント」序曲を聴いて、〝古代と近代の融合〟といった感覚にとらわれた。東欧系のくすんだ響きでも米英系の華麗な響きでもなく、芳醇で柔らかな弦楽器と声高に叫ばずして豊潤な管楽器が並び立つ独特の響きは、まさに南独流のヨーロピアン・サウンド。これは後半のブラームスでより真価を発揮することになる。「エグモント」自体は全般にオーソドックス。とはいえ、4分音符の連続で弱拍部分を弱めに奏でる等の工夫に唸らされた。

次のプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番は、チョ・ソンジンがダイナミックで迫真的な独奏を披露した。第1楽章は遅めのテンポで力感十分に運ばれ、長いカデンツァも強靭で緊迫感が横溢。第2楽章は一気呵成に突き進み、第3楽章はバックの重厚感が光る。第4楽章は静と動のコントラストが鮮やか。かようにシャニの巧みな構築も相まった快演が展開された。ソロは多少無機的だが、元々曲がそうしたテイストだし、初日のベートーヴェンよりもこちらの方がチョの特質に合っていることを明確に感じた。

アンコールはまずシャニのピアノとの連弾でラヴェルの「マ・メール・ロワ」の〝妖精の園〟。これはまだいいのだが、次にチョが一人でショパンの「小犬のワルツ」を弾いた。そもそもオーケストラ公演での協奏曲のソロ・アンコールは個人的に大反対だし、ましてこの曲は本プロ内では全く異質なので著しく抵抗感があった。

後半はブラームスの交響曲第4番。同曲は〝古代と近代の融合〟そのものだ。ゆえに密度の濃い名演が展開された。第1楽章の出だしの主題は、過度なタメがなく、さりとて即物的でもない理想的と思える表現。以後、モダンなサウンドと古き音調が共生した演奏が続く。第2楽章は巧緻なホルンや木管が侘しい味わいを醸し出し、第3楽章は力強くもしなやかな表現で畳み込む。第4楽章はパッサカリアだけに〝古代と近代の融合〟の総決算たる趣。フルートをはじめとする管楽器の妙技も光る。アンコールは端正に弾んだハンガリー舞曲第5番。

初日のマーラー「巨人」を含めて、今年9月に首席指揮者に就任するシャニのもとでミュンヘン・フィルの新黄金時代が築かれることを強く予感させる公演となった。

(柴田克彦)

ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

公演データ

ラハフ・シャニ指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 日本ツアー2026 2日目

5月12日(火)19:00サントリーホール 大ホール

指揮:ラハフ・シャニ
ピアノ:チョ・ソンジン
管弦楽:ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
コンサートマスター:青木 尚佳

プログラム
ベートーヴェン:劇音楽「エグモント」Op.84 序曲
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 Op.16
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 Op.98

ソリスト・アンコール
ラヴェル:「マ・メール・ロワ」から〝妖精の園〟(連弾、第2ピアノ:ラハフ・シャニ)
ショパン:ワルツ第6番 変ニ長調 Op.64-1「小犬のワルツ」

アンコール
ブラームス:ハンガリー舞曲第5番

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柴田克彦

しばた・かつひこ

音楽マネジメント勤務を経て、フリーの音楽ライター、評論家、編集者となる。「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「音楽の友」「モーストリー・クラシック」等の雑誌、「毎日新聞クラシックナビ」等のWeb媒体、公演プログラム、CDブックレットへの寄稿、プログラムや冊子の編集、講演や講座など、クラシック音楽をフィールドに幅広く活動。アーティストへのインタビューも多数行っている。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)。

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