セイジ・オザワ松本フェスティバル2026

セイジ・オザワ松本フェスティバル2026の注目公演はこれだ!

セイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)、今年は8月16日から9月2日までの間、長野県松本市で開催される。同音楽祭(旧サイトウ・キネン・フェスティバル)の創始者であり、総監督であった小澤征爾が亡くなってから3度目の開催となり、今後を占う意味でも重要な年になりそうだ。そこで今年のOMFの聴きどころとともに関係者の思いについても紹介したい。
(宮嶋 極)

首席客演指揮者の沖澤のどかがメシアンの大作トゥランガリーラ交響曲に挑む

小澤征爾の指名により、24年8月より首席客演指揮者OMF首席客演指揮者を務める沖澤のどか 🄫大窪道治/2024OMF
小澤征爾の指名により、24年8月より首席客演指揮者OMF首席客演指揮者を務める沖澤のどか 🄫大窪道治/2024OMF

今年のOMFの最大の注目は首席客演指揮者を務める沖澤のどかが指揮するオーケストラ・コンサート Aプログラム(8月22日、23日、キッセイ文化ホール)であろう。演目はメシアンの大作、トゥランガリーラ交響曲である。
沖澤とOMFといえば、小澤征爾が他界した2024年を思い出す。音楽祭の大黒柱を失ったこの年、大看板ともいえるアンドリス・ネルソンス(ブラームスの交響曲ツィクルスを指揮する予定であった)が体調不良により本番直前に来日をキャンセル。急きょ〝ピンチヒッター〟として指揮台に立った沖澤がサイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)全メンバーの思いを見事にまとめ上げて、奇跡的といっても過言ではないほどの熱演を繰り広げ、公演を大成功に導いたことはいまだに鮮烈な印象が残っている。満員の聴衆を感動の渦に誘ったこの時の演奏については拙稿(セイジ・オザワ 松本フェスティバル2024 オーケストラ・コンサート リポート後編 | CLASSICNAVI)をご覧いただきたい。

〝奇跡の名演〟となった2024年8月16日のオーケストラ・コンサート プログラムBの公演 ©山田毅/2024OMF
〝奇跡の名演〟となった2024年8月16日のオーケストラ・コンサート プログラムBの公演 ©山田毅/2024OMF

また、昨年はブリテンのオペラ「夏の夜の夢」を指揮し、ロラン・ペリー演出の幻想的で美しい舞台と相まって各方面から好評価を得たことは記憶に新しい。当サイトの執筆者の投票による2025年開催の公演ベスト10でも第3位に選ばれている。
公演については山田治生氏による速リポ(2025セイジ・オザワ 松本フェスティバル  オペラ ブリテン「夏の夜の夢」 | CLASSICNAVI)をご参照ください。

そんな沖澤が指揮するトゥランガリーラ交響曲はOMFにとっても因縁浅からぬ作品ということができる。小澤がNHK交響楽団を指揮して1962年に作曲家立ち会いのもとで日本初演しているからだ。ピアノにはフランスを拠点に国内外で高い評価を受けている務川慧悟、オンド・マルトノには同作品を20カ国350回以上演奏してきた原田節が担当する。昨年のブリテンに続いて沖澤とSKOが挑む20世紀の名作は、OMFの未来に向けて新たな歴史を刻むことが期待される。

ロラン・ペリー演出の美しい舞台と相まって高い評価を得た昨年のオペラ公演、ブリテン「夏の夜の夢」の舞台©大窪道治/2025OMF
ロラン・ペリー演出の美しい舞台と相まって高い評価を得た昨年のオペラ公演、ブリテン「夏の夜の夢」の舞台©大窪道治/2025OMF

オーケストラ・コンサートBプログラムはフランスの鬼才フランソワ=グザヴィエ・ロトがブルックナーの交響曲第8番

もうひとつの注目はフランスの鬼才フランソワ=グザヴィエ・ロトがブルックナーの交響曲第8番を指揮するオーケストラ・コンサートBプログラム(29日、30日、キッセイ文化ホール)である。
ロトは2003年にレ・シエクルという名のオーケストラを結成。17世紀から21世紀の現代音楽に至る広範なレパートリーを作品の時代に合わせた楽器や奏法を採用するユニークな活動で知られている。ブルックナーにも積極的に取り組んでおり、腕利き集団であるSKOを相手に彼ならではの斬新な解釈によって作品に新たな光が当てられるに違いない。
最近、ロトはベルリン・フィルをはじめ世界の名門オーケストラに次々と客演し、個性あふれる演奏で成功を収めてきた。日本へはNHK交響楽団、東京都交響楽団に客演している。SKOとの初顔合わせ、楽しみである。

ブルックナーの交響曲題8番を指揮する鬼才フランソワ=グザヴィエ・ロト OMFホームページより
ブルックナーの交響曲題8番を指揮する鬼才フランソワ=グザヴィエ・ロト OMFホームページより

ところで大黒柱を失ったOMFだが、意外なことに関係者には悲壮感や切迫感はないようだ。サイトウ・キネン・オーケストラ財団の磯貝純一事務局長は語る。「〝ポスト・オザワ〟はどうなるのか、ということをよく聞かれますがOMFにとって小澤征爾に代わる存在などいるはずもありません。それよりも小澤総監督が目指していたOMFのスピリット、音楽に対する姿勢を音楽家はもちろん私たちも継承していくことが大切なことです。それを受け継いでいくことこそがOMFのさらなる発展に繋がっていくと信じています」
また、SKOのコンサートマスターを務めるヴァイオリニストのひとりである豊嶋泰嗣も先日行った筆者のインタビュー(ヴァイオリニスト 豊嶋 泰嗣 楽壇生活40周年 | CLASSICNAVI)で、SKOはメンバー全員がそれぞれ小澤さんとの信頼関係で結ばれていますから、そういう意味では他のオーケストラとはまったく異なっています」と語り、豊嶋らベテラン・メンバーが若い楽員にそのスピリットを伝えていくことの重要性を語っていた。
小澤の精神を受け継ぎ〝地に足の着いた活動〟をしながら音楽祭の未来を切り拓いていくことがOMF関係者の一致した思いのようだ。

小澤征爾総監督のスピリットを継承しながらさらなる発展を目指すサイトウ・キネン・オーケストラ。指揮は沖澤のどか©大窪道治/2024OMF
小澤征爾総監督のスピリットを継承しながらさらなる発展を目指すサイトウ・キネン・オーケストラ。指揮は沖澤のどか©大窪道治/2024OMF

公演データ

セイジ・オザワ 松本フェスティバル 2026

〇オーケストラ コンサート Aプログラム

8月22日(土)15:00、23日(日)15:00 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)

指揮:沖澤 のどか
ピアノ:務川 慧悟
オンド・マルトノ:原田 節
サイトウ・キネン・オーケストラ

メシアン:トゥランガリーラ交響曲

〇オーケストラ コンサート Bプログラム

8月29日(土)15:00、30日(日)15:00 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)

指揮:フランソワ=グザヴィエ・ロト
サイトウ・キネン・オーケストラ

ブルックナー:交響曲第8番ハ短調WAB108(ハース版)

※上記公演の詳細とその他のコンサートについては音楽祭公式ホームページをご参照ください。
セイジ・オザワ 松本フェスティバル

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宮嶋 極

みやじま・きわみ

放送番組・映像制作会社である毎日映画社に勤務する傍ら音楽ジャーナリストとしても活動。オーケストラ、ドイツ・オペラの分野を重点に取材を展開。中でもワーグナー作品上演の総本山といわれるドイツ・バイロイト音楽祭には2000年代以降、ほぼ毎年訪れるなどして公演のみならずバックステージの情報収集にも力を入れている。

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