新世代のジャズを体現するアーティスト・壷阪健登が都会的で洗練された音楽を聴かせる
「慶応大学を経てバークリー音楽院を首席で卒業」「演奏だけでなく作曲・編曲でも活躍」「新世代のジャズを体現するアーティスト」として紹介される壷阪健登。2026年5月LFJ(ラフォルジュルネ)にも出演予定。5月9日から31日まで名古屋を皮切りに山口で終わる6つのツアーを予定している。
そんな彼のピアノ・ソロを定員535(実際には1階席のみ使用の401席)のクラシック専用中規模ホールで聴いた。曲名の印刷物は無く、本人がマイクで言うこともあれば言わないことも。最初は少し戸惑ったが、「ジャズでは普通なのかな」と音楽に耳を傾ける。楽器はクラシック同様にスタインウェイだった。
冒頭に演奏された「When I Sing」は印象派的な音階にブルーノートを織り交ぜた耳当たりの良い10分ほどの音楽。後で確認すると、ファーストアルバムのタイトル曲だった。不協和音が心地良く、後半に向けて盛り上がる。壷阪のピアノは響きが透明でペダリングも的確、長めのホール残響を上手に取り込んでいく。
全体は自作が中心で、前半5曲・後半6曲(各3~10分)にスタンダードを織り交ぜる構成だった。ガーシュインSomeone to Watch Over Meやデューク・エリントンのthe Second Portrait of the Lionも登場。印象派風の全音音階にジャズのテイストを盛り込んだ都会的で洗練されたものが多く、中には「初期スクリャービン?ラフマニノフ?」というものも。時に「もう少しは毒があってもいいのに」と感じたりするのは聴き手の耳が野暮だからだろう。「ドビュッシーの」「ラヴェルの」と曲紹介された「月の光」「水の戯れ」が大きく姿を変えた壷阪バージョンだったことが「毒」の代わりだったかもしれない。
終演後は全世代、男女ほぼ同数の50人近い人がCD即売を兼ねたサイン会に列を作っていた。普段クラシックやジャズの演奏会に通う人とは系統の異なる音楽ファンのように思え、新鮮な驚きがあった。
(渡辺和彦)
公演データ
SOLO PIANO CONCERT 壷阪健登
4月18日(土)14:00ほねごり杜のホールはしもと
ピアノ:壷阪健登
プログラム
※作曲者名の表記がない曲はすべて自作曲
(第1部)
When I Sing
With Time
Stomp
ガーシュウィン:Someone to Watch Over Me
Departure
(第2部)
Prelude No.1 in E major〜Prelude No.2 in C sharp minor
ドビュッシー:月の光「ベルガマスク組曲」より
ラヴェル:水の戯れ
デューク・エリントン:The Second Portrait of the Lion
Ballad No.1 in E-flat Major
こどもの樹
アンコール曲
さいならAdios
フランク・チャーチル:Someday My Prince Will Come(いつか王子様が) アニメ映画「白雪姫」より
わたなべ・かずひこ
音楽評論家。北海道生まれ。弦楽器と歌(他ジャンルを含む)、猫、小鳥好き。
NHK「朝のバロック」他の企画構成を約20年担当、FM東京(現トーキョーFM)クラシック番組担当も長く務める。前後して「ヴァイオリニスト33」(河出書房新社)、「ヴァイオリン・チェロ名曲名演奏」(音楽之友社)、「ラテン・クラシックの情熱」(水曜社)などを発表。最初の著作「クラシック辛口ノート」(洋泉社)のため「辛口評論家」と言われることも多いが実はそれほどでもない。










