京都市交響楽団70周年&サントリーホール40周年記念 沖澤のどか指揮 京都市交響楽団

沖澤と京響が一体となった驚異的な演奏

京都市交響楽団創立70周年とサントリーホール開館40周年を祝う公演。常任指揮者・沖澤のどかが得意とするリヒャルト・シュトラウスを取り上げ、ホール館長でもある堤剛が矢代秋雄のチェロ協奏曲で初共演するという、節目にふさわしいプログラムが並んだ。

京都市交響楽団創立70周年とサントリーホール開館40周年を記念して、沖澤のどか&京響と堤剛が矢代秋雄のチェロ協奏曲で初共演した 撮影:池上直哉 提供:サントリーホール
京都市交響楽団創立70周年とサントリーホール開館40周年を記念して、沖澤のどか&京響と堤剛が矢代秋雄のチェロ協奏曲で初共演した 撮影:池上直哉 提供:サントリーホール

沖澤は自信に満ちた表情で登場。リヒャルト・シュトラウス「ドン・ファン」はその勢いのまま天馬空を行くが如く、颯爽としてしなやかな演奏を聴かせた。
ヴァイオリン群の絹のように滑らかで艶のある音をはじめ、輝く金管、温かな木管、鋭い打音のティンパニが一体となった響きは見通しが良く、精緻なオーケストレーションを隈なく伝える。オーボエのソロも端正で歌心に富む。絢爛(けんらん)たるクライマックスではホルンの突き抜けた響きも加わり壮大さを極めた。西陣織の文様のように華やかな演奏であった。

矢代秋雄のチェロ協奏曲は、堤の独奏、岩城宏之指揮N響により1960年に録音・放送、同年ワルシャワで演奏会初演された。66年後の演奏は、冒頭の3主題の音の深みをはじめ、今の堤にしか到達し得ない奥行きを感じさせた。第2部の沖澤・京響の強奏と拮抗する場面は、初演時の力漲(みなぎ)るチェロとは異なるが、老剣士が若武者と対峙するような壮絶さを湛える。第3部のアルト・フルートとの対話は幽玄の世界を醸し、味わい深い音は悟りを思わせる趣を帯びた。コーダで最後に弾く低音は深遠そのものであった。
アンコールはJ.S.バッハの無伴奏チェロ組曲第5番より「サラバンド」。ここでも枯淡の味わいが際立った。

リヒャルト・シュトラウス「家庭交響曲」は、沖澤と京響が一体となった驚異的な演奏であった。楽員がポテンシャルを最大限に発揮し、それらを最適なバランスで音楽へとまとめ上げる手腕には脱帽するほかない。
「ツァラトゥストラはかく語りき」「ドン・キホーテ」「英雄の生涯」で成功を収めたシュトラウスが、家庭の喜びと意義を探究した本作の魅力を、沖澤は温かな愛の視点で細部まで描き尽くした。

リヒャルト・シュトラウス「家庭交響曲」は、沖澤と京響が一体となる驚異的な演奏だった 撮影:池上直哉 提供:サントリーホール
リヒャルト・シュトラウス「家庭交響曲」は、沖澤と京響が一体となる驚異的な演奏だった 撮影:池上直哉 提供:サントリーホール

とりわけ印象的だったのは、第2部スケルツォでの両親が子供を見守るまなざしと、木管と弦による穏やかな子守歌。第3部の愛の場面はスケールが大きく、官能的な頂点を築き、その後の平穏が深いカタルシスをもたらした。第4部フィナーレの二重フーガの明晰さと楽員のヴィルトゥオジティも特筆される。木管の合奏は和解の温もりを伝え、最後は諸主題が統合され、家庭の充足感が明るく広がる結末となった。

(長谷川京介)

公演データ

京都市交響楽団70周年&サントリーホール40周年記念
沖澤のどか指揮 京都市交響楽団

4月14日(火)19:00サントリーホール 大ホール

指揮:沖澤のどか
チェロ:堤剛
管弦楽:京都市交響楽団
コンサートマスター:豊嶋泰嗣

プログラム
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」Op.20
矢代秋雄:チェロ協奏曲
リヒャルト・シュトラウス:「家庭交響曲」Op.53

ソリスト・アンコール
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番BWV1011よりIV.サラバンド

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長谷川京介

はせがわ・きょうすけ

ソニー・ミュージックのプロデューサーとして、クラシックを中心に多ジャンルにわたるCDの企画・編成を担当。退職後は音楽評論家として、雑誌「音楽の友」「ぶらあぼ」などにコンサート評や記事を書くとともに、プログラムやCDの解説を執筆。ブログ「ベイのコンサート日記」でも知られる。

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