若き俊英、リュー・テンヤオ待望の来日公演! ノーブルかつ情熱的なショパンの協奏曲で聴衆を魅了
昨年10月、ショパン国際ピアノコンクールで第4位を受賞したリュー・テンヤオは、日本公演のために来日した。2009年生まれの彼女は、コンクール当時は16歳。現在はポズナン音楽院でカタジーナ・ポポヴァ=ズィドロンのもとで研鑽を積んでいる。
東京では、2夜にわたりすべてショパン作品による公演が行われる。当夜は、その第1夜。リューは、彼の2曲のピアノ協奏曲を、N響メンバーによるオーケストラ(コンサートマスター:大宮臨太郎)と共演した。ショパン・コンクールでは「コンチェルト賞」も受賞した彼女の演奏に期待が高まる。
ショパンは、1830年(20歳)にポーランドをあとにした。彼の2曲のピアノ協奏曲は、祖国を離れる前の創作である。プログラム前半の「ピアノ協奏曲 第2番」は、第1番の前に書かれた作品。リューは、この協奏曲特有の豊かな詩情を、透き通るような音で表す。第1楽章冒頭、問いかけるような主題をたっぷりと歌い上げる。彼女が描き出すのは、感傷に耽(ふけ)るショパンではない。ナイーヴな作曲家の憂いに心を寄せるリューの姿が印象に残る。また、第2楽章において、ファゴットのソロは彼女の声を巧みに引き出していた。
休憩をはさんで、「ピアノ協奏曲 第1番」が披露された。第2番のリューの演奏にはやや硬さが見られたものの、コンクールでも披露した第1番は十分に弾き込まれており、コンクールの時よりも自由さが増していた。そのスケールの大きさや演奏技巧の完成度の高さは、17歳という年齢をまったく感じさせない。リューはパッションを漲らせ、メロディの一音一音に心血を注ぎ込む。冒頭のドラマティックな主題において、リズムを大胆に刻み込み、情熱的に語り掛けていく。また、第2楽章における繊細な息遣いや弱音の多彩な表現も、傑出している。その最弱音に柔軟に対応できるオーケストラの能力の高さも特筆に値する。
ポーランド出身のウカシュ・ボロヴィチの指揮は、フレーズの表現が丁寧で、ノーブルな音楽を創り上げる彼女に貢献した。
(道下 京子)
公演データ
リュー・テンヤオ 第1夜:協奏曲
8月12日(水) 19:00サントリーホール 大ホール
ピアノ:リュー・テンヤオ
指揮:ウカシュ・ボロヴィチ
管弦楽:N響メンバーによるオーケストラ
コンサートマスター:大宮 臨太郎
プログラム
ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調Op.21
ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調Op.11
アンコール
ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調 遺作
王立平:小奏鳴曲 第2、3楽章
ショパン:子守歌 Op.57
みちした・きょうこ
桐朋学園大学音楽学部作曲理論学科卒業、埼玉大学大学院文化科学研究科修士課程修了。共著「ドイツ音楽の一断面――プフィッツナーとジャズの時代」など。「音楽の友」「ショパン」などの 音楽月刊誌や書籍、新聞、Web媒体、演奏会プログラムやCDの曲目解説など、ピアノのジャンルを中心に音楽経験を活かした執筆を行なっている。










