フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2026 大野和士指揮 東京都交響楽団

大野×都響がメモリアル作曲家の作品を快演! 竹澤恭子の気迫がこもったソロは圧巻

ことしのフェスタサマーミューザKAWASAKI4日目は、大野和士指揮の東京都交響楽団によるマチネー。メモリアル・イヤーを迎えた作曲家を中心に、オーケストラの持ち味が表れる曲目を並べた。芸術顧問に肩書は変わったものの、依然として大野と都響の関係は深い。当日は大野自身も快調で、力演を聴かせた。

東京都交響楽団芸術顧問の大野和士が指揮台に立ち、オケと共に力演を聴かせた
東京都交響楽団芸術顧問の大野和士が指揮台に立ち、オケと共に力演を聴かせた(C)増田雄介/ミューザ川崎シンフォニーホール

20世紀英国を代表する作曲家のひとり、ベンジャミン・ブリテン(1913~76)は、ことし没後50年。前半は、その作品で固められた。オーケストラの機能を紹介する「青少年のための管弦楽入門」は解説のナレーションなしで演奏され、副題にある「パーセルの主題による変奏曲とフーガ」という面を強調した。劇音楽「アブデラザール」の威厳あるテーマが様々なパートに受け渡される「解剖学的な楽しみ」(プレトークでの大野談)は、都響が誇る緻密なアンサンブルと機能性をアピールするのに格好の題材だ。

大野は明快なタクトで変奏の妙味をてらいなく描き出し、まるで万華鏡をみるような面白さ。都響も特に弦セクションが水際立ち、ボウイングがプルトの前から後ろまで、ぴたりとそろった高い精度は圧倒的。見映えの点でも、無頓着な他楽団のお手本になりそうだ。

ブリテン「青少年のための管弦楽入門」では、都響が誇る緻密なアンサンブルと機能性が発揮された
ブリテン「青少年のための管弦楽入門」では、都響が誇る緻密なアンサンブルと機能性が発揮された(C)増田雄介/ミューザ川崎シンフォニーホール

続くヴァイオリン協奏曲ニ短調では、ベテランの竹澤恭子を独奏に迎えた。第二次世界大戦期に「苦しい状況下で作られ、内面的な思いが込められた」(同)若書きの傑作だ。竹澤は終始、高いテンションと熱量をもって曲に没入し、集中度が尋常ではない求心的な独奏で、作品の真価を明らかにした。
静ひつな第1楽章冒頭から体を前傾して気迫をみなぎらせ、多様なヴィブラートの使い分けによる音色の変化や余裕ある呼吸が、キャリアを重ねた名手ならではの滋味と安定感を示す。第2楽章ヴィヴァーチェの難技巧へ果敢に切り込んだ後、アタッカで終楽章に至る苛烈なカデンツァで成し遂げた燃焼度が圧巻だった。
大野もブリテン特有のひねりが利いたユーモア感覚や一筋縄でいかない曲想を手際よく処理し、構えの大きなバックで竹澤を支えた。

竹澤恭子を独奏に迎えたブリテンのヴァイオリン協奏曲ニ短調。キャリアを重ねた竹澤ならではの滋味と安定感あるソロだった(C)増田雄介/ミューザ川崎シンフォニーホール

後半はシューマンの交響曲第4番ニ短調。一般的な1851年改訂版で演奏された。ロベルト・シューマン(1810~56)はことし没後170年という。大野の解釈はオーソドックスで危なげなく、適度な流動感を保つ。都響から密度あるロマンティックなうねりを導き、引き締まった合奏の威力を活用した。時折、弦と管の立体的なバランスを意識させるなど、細やかな目配りもみせた。
第2楽章では首席チェロ奏者の古川展生が艶やかなソロを披露して幻想味を深めた。ダークな情熱が渦巻く第3楽章を経て、終楽章のエスプレッシーヴォな高揚で結びを迎えた。

(深瀬 満)

シューマンの交響曲第4番ニ短調。大野は、都響から密度あるロマンティックなうねりを導き、引き締まった合奏の威力を活用した
シューマンの交響曲第4番ニ短調。大野は、都響から密度あるロマンティックなうねりを導き、引き締まった合奏の威力を活用した(C)増田雄介/ミューザ川崎シンフォニーホール

公演データ

フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2026 東京都交響楽団

7月29日(水)15:00ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:大野和士
ヴァイオリン:竹澤恭子
管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:矢部達哉

プログラム
ブリテン:青少年のための管弦楽入門 Op.34 ※ナレーションなし
ブリテン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.15
シューマン:交響曲第4番 ニ短調 Op.120

ソリスト・アンコール
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番 第3楽章 アンダンテ

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深瀬 満

ふかせ・みちる

音楽ジャーナリスト。早大卒。一般紙の音楽担当記者を経て、広く書き手として活動。音楽界やアーティストの動向を追いかける。専門誌やウェブ・メディア、CDのライナーノート等に寄稿。ディスク評やオーディオ評論も手がける。

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