デュムソーが都響に初登場! オール・フランス・プログラムで才覚を示す
フランスの気鋭、ピエール・デュムソーは自国の内外で着実にキャリアを重ね、マルク・ミンコフスキのアシスタントを務めたという逸材。日本のオーケストラへの来演も増えてきた。都響との初共演ではフランスの名品を集め、お国物の強みで才覚のほどを示した。
最初に置いたプーランクのバレエ組曲「牝鹿」から、高音域に響きの重心が移り、明るく散乱するフレンチ・サウンドが勢いよく飛び出した。きびきびとした運びで、聴衆を華麗な音世界へ引き込む。金管は特に明度が高く、ヴィブラートまで金粉が舞うようにきらびやか。「ロンドー」や「アンダンティーノ」に顕著な新古典主義風のエスプリにも事欠かない。
デュムソーの指揮は膝の屈伸を中心に全身を忙しく動かし、バネの利いた躍動感を引き出していく。左手を大きくすくい上げるアクセントが効果的で、表情の彫りが深まる。こうした特徴を鋭敏に音にしていく都響の優れた反応も、特筆される。
イベールのフルート協奏曲では都響の首席奏者、松木さやがソロを務めた。前任のオーケストラ・アンサンブル金沢時代に共演した縁のある顔合わせとなった。松木は落ち着いたシックな音色を繰り出し、鮮明なバックと好対照を成していく。第2楽章アンダンテのアンニュイな雰囲気やしっとりした情感がみごと。一転して第3楽章アレグロ・スケルツァンドでは、素早いパッセージを羽毛が舞い上がるごとく軽妙にこなした。
後半は海絡みの2曲を並べた。同じくイベールの交響組曲「寄港地」は、地中海の各所をめぐる音の印象記。デュムソーは早いテンポで場面を的確に描き分け、彩りを整えていく。第2曲「チュニス~ネフタ」の異国情緒をすっきりまとめ、第3曲「バレンシア」の絢爛(けんらん)豪華な音絵巻をスピーディーにたたみ込んだ。
そして最後はドビュッシーの交響詩「海」。さすがに印象派きっての傑作は一筋縄ではいかない難物だ。やはり第1楽章からテンポが早く、停滞感なく進むが、やや性急な印象も残す。作曲者がスコアで委細を尽くした時間の変化が圧縮され、何か早送り動画を見ているような感覚にとらわれた。
細部のディテールを克明に掘り起こした第2楽章「波の戯れ」では、指揮者の狙う高解像度がプラスに出た。第3楽章「風と海との対話」も、第1楽章と同工。いつもなら圧倒的な充足感を与えるラストの高揚が、足早に駆け抜けて終わった。
まだまだ若い才能、これからの成長と進化を楽しみにしたい。
(深瀬満)
公演データ
東京都交響楽団 第1042回定期演奏会Aシリーズ
4月18日(土)14:00東京芸術劇場 コンサートホール
指揮:ピエール・デュムソー
フルート:松木さや
管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:水谷 晃
プログラム
プーランク:バレエ組曲「牝鹿」
イベール:フルート協奏曲
イベール:交響組曲「寄港地」
ドビュッシー:交響詩「海」
ふかせ・みちる
音楽ジャーナリスト。早大卒。一般紙の音楽担当記者を経て、広く書き手として活動。音楽界やアーティストの動向を追いかける。専門誌やウェブ・メディア、CDのライナーノート等に寄稿。ディスク評やオーディオ評論も手がける。










