ボローニャ歌劇場東京公演初日 プッチーニ:歌劇「トスカ」

270年の伝統を誇るイタリアの名門ボローニャ歌劇場による〝声の饗宴〟

創立270年の伝統を誇るボローニャ歌劇場(ボローニャ市立劇場)の東京公演が2日、東京文化会館で始まった。初日の演目はプッチーニの「トスカ」。指揮は昨年、同劇場の音楽監督に就任したオクサーナ・リーニフ、演出はジョヴァンニ・スカンデッラ。このステージの模様を報告する。

ボローニャ歌劇場による「トスカ」第1幕終盤のテ・デウムのシーン 写真提供=コンサート・ドアーズ
ボローニャ歌劇場による「トスカ」第1幕終盤のテ・デウムのシーン 写真提供=コンサート・ドアーズ

同劇場の日本公演は4年ぶり7度目、今回も豪華キャストで、イタリア・オペラらしい〝声の饗宴〟が繰り広げられた。題名役はマリア・グレギーナ。今年で64歳のベテランだが、持ち前の豊かな声量は健在。もちろん全盛期のホールを揺るがすような大音量は出せなくなっていたが、その分、弱音の表現の幅が増した印象。第2幕のアリア「歌に生き、恋に生き」では必要以上に声を張ったりせずに、弱音を巧みにコントロールして切々と歌い上げた。20年前の彼女ではできなかった歌唱であろう。客席からは盛大な拍手が湧き起こり、それが1分近く続いた。

 

カヴァラドッシはマルセロ・アルバレス。第1幕の途中でのどにアクシデントが発生したのか(高音をオクターブ下げて歌い、休符の間に上手袖で水を飲んでいた)、以降は高音を強く張れない様子だったが、それでも求められる水準を満たす歌唱と演技でうまくまとめていたのはさすがである。

東京文化会館入り口のポスター
東京文化会館入り口のポスター

スカルビア役はアンブロージョ・マエストリ。外見は善人に見えてしまうが、豊かな声量を自在に操る歌唱でこの悪役の性格を巧みに表現してみせた。

 

リーニフはキビキビとした音楽運びでオケを積極的にリードしていた。欲を言えば、オケの自主性に任せてもっと歌わせたら(感情をこめて表現すること)より良かったように感じた。それは第3幕冒頭、チェロのソロを軸に弦のトップによるアンサンブルの箇所で、メンバーが自主性を発揮してタップリと歌い、味わい深い演奏を聴かせた際にオケ全体でも彼ら本来のこうした歌わせ方がほしいな、と感じたからである。

 

演出はテーブルなど必要最低限の小道具しか使わないシンプルな舞台作り。こうしたステージは音楽や歌に集中できるのがよい。
(宮嶋 極)

公演データ

【ボローニャ歌劇場日本公演】

〇プッチーニ:歌劇「トスカ」(全3幕、イタリア語上演日本語字幕付き)
11月2日(木)18:30、4日(土)15:00 東京文化会館大ホール

指揮:オクサーナ・リーニフ
演出:ジョヴァンニ・スカンデッラ

トスカ:マリア・グレギーナ(2日)、マリア・ホセ・シーリ(4日)
カヴァラドッシ:マルセロ・アルバレス
スカルピア:アンブロージョ・マエストリ ほか
ボローニャ歌劇場管弦楽団、合唱団

〇ベッリーニ:歌劇「ノルマ」(全2幕、イタリア語上演日本語字幕付き)
11月3日(金・祝)15:00、5日(日)15:00 東京文化会館大ホール

指揮:ファブリツィオ・マリア・カルミナーティ
演出:ステファニア・ボンファデッリ

ノルマ:フランチェスカ・ドット
ポリオーネ:ラモン・ヴァルガス
アダルジーザ:脇園 彩 ほか
ボローニャ歌劇場管弦楽団、合唱団

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宮嶋 極

みやじま・きわみ

放送番組・映像制作会社である毎日映画社に勤務する傍ら音楽ジャーナリストとしても活動。オーケストラ、ドイツ・オペラの分野を重点に取材を展開。中でもワーグナー作品上演の総本山といわれるドイツ・バイロイト音楽祭には2000年代以降、ほぼ毎年訪れるなどして公演のみならずバックステージの情報収集にも力を入れている。

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