新連載

人生の達人・宗次德二さんの元気が出るコトバ

桐朋学園宗次ホール

街の小さなカレー屋さんだったココイチを、国内外で事業を展開する大人気カレーチェーンへと成長させたカレーハウスCoCo壱番屋の創業者で、現在は宗次ホールの代表を務める宗次德二さんに〝仕事も人生もうまくいく考え方〟を教えていただく連載。
第3回は、ずばり「夢を叶える方法」について。宗次さんが自身の経営者人生を振り返り、夢のような奇跡を起こすまでの道のりをお話していただきました。

宗次ホールにあるお土産ショップの書籍コーナーの前で。日めくりカレンダー「経営の達人」とともに
宗次ホールにあるお土産ショップの書籍コーナーの前で。日めくりカレンダー「経営の達人」とともに

第3回 夢を叶える方法は実にシンプル

夢はあった方がいい。

ただし、はじめから大きな夢を抱かないこと

小説家・評論家で、軍医でもあった森鴎外が、随想「妄想」の中で〝酔生夢死(すいせいむし)というような生涯を送ってしまうのが残念である〟と書いています。〝酔生夢死〟とは、中国の儒学者の言葉に由来する四字熟語で、酒に酔ったように、ぼんやりと生きて、夢の中にいるような心地で死んでいく。つまり、価値のあることを何ひとつせずに、ただぼんやりと一生を過ごすという意味です。
やはり夢をもち、それに向かって努力し続ける人生の方が、価値があると私も思います。野球の大谷翔平選手も、中学生の時に「大リーグで活躍する」と書き、努力したから今があるのです。
ただ、まだ何も成し遂げていないうちから、大げさに夢を語らない方が良いのではないか、とも思います。そういう人の話を聞くと「いいですね、頑張ってください」とは言いますが、正直なところ、夢みたいなことを言っているなと感じてしまいます。
私自身は、人前で夢を語ることはしません。代わりに、1年先くらいまでの目標を確実に達成していったからこそ、結果的に夢のような奇跡が起きたのだと思います。

目標達成のために欠かせないもの

束になったメモ、打刻し続けたタイムカードは財産

1987年から毎朝打刻し続けているタイムカード。毎朝4時前に起床してすぐに階下の事務所に出勤する
1987年から毎朝打刻し続けているタイムカード。毎朝4時前に起床してすぐに階下の事務所に出勤する

突然何かアイディアをひらめいた時や良い話を聞いた時は、すぐにメモをとります。朝の掃除で外に出る時も、必ず手帳にボールペンをさしてポケットに入れています。さきほどの〝酔生夢死〟という言葉も、実はNHKの早朝のラジオで知り、思わずメモに残したものです。走り書きすることも多いので、後で清書して読めるようにしておきます。
捨てずに取ってあるメモがいまでは分厚い束になっていますが、時々古いメモを見返して、そこから何か思いつくこともあります。
1987年から毎朝打刻しているタイムカードは、私にとってはもはや工芸作品のようなもの。細かく織っていくペルシャ絨毯や、下絵を描き職人が分業して染色していく友禅などの工芸品は、製作に膨大な手間と時間がかかり、1日に数センチずつしか進みません。それでも地道に続けていれば、やがて立派な作品が出来上がるのです。毎朝早起きをして打刻し続けたタイムカードは、私の作品です。

「健康第一」は結果論。睡眠時間より〝充実感〟が大切

経営者にとって健康が大事なのは言うまでもないですが、私の場合、それは結果論でしかありません。
私は休むより仕事をしていたいし、毎日8時間も寝る時間はありません。野菜は嫌いで食べないので、医者が勧めるような健康的な生活は送ってこなかったけれど、経営者として常に気を張り、毎日が充実していたので風邪は滅多にひかないし、寝込んだこともありません。

もうやるしかない!何もなかったから必死になれた

養護施設に預けられた時の写真。宗次さんは下から2段目、向かって左から2人目

「そんなに働いてよく平気ですね」と言われることもありますが、この私の性質は幼少期の実体験からきているのだと思います。
私はギャンブル依存症の養父のもとで育ちました。乱暴な人で、よく暴力をふるわれましたが、それでも「父ちゃんが大好き」。どんなにひどい父親でも、見捨てられたら生きていけなかったので、父親を喜ばせようと必死でした。5~6歳の時から父親に指示され、吸い殻を拾って渡すのが私の日課になりました。道を歩く時はいつも下を向いて吸い殻を探し、それでも足りない時はパチンコ屋に行って床に這いつくばって拾い集めるのです。その吸い殻を父親は美味しそうにキセルで吸っていました。当時住んでいた6畳1間の部屋を綺麗にしておかないと叱られたので、掃除もしました。
何もなかった私は、生きていくために出来ることをする他ありませんでした。商売を始めた時もそうです。喫茶店は全くの未経験で、お金も人脈も能力も経験もゼロからのスタートでした。それでも、いったん起業してしまったら翌月から返済が始まります。〝もうやるしかない!〟という気持ちで、わき目も振らず、ただひたすら一直線に突っ走ってきました。

友人付き合いはほどほどに……

もしかすると、中途半端に何かをもっている人は、少し油断してしまうのかもしれませんね。親の事業を引き継いだり、資金に余裕がある人は、起業してからも友人との付き合いを変わらずに続けていたり……。
私は友人付き合いはほとんどありませんでしたが、唯一後悔しているのは、ゴルフはもっと中途半端にしておくべきだった、ということ。もちろん、仕事関係の人とコミュニケーションをとる上で有効な面もなくはないですが、時間とお金と体力を使うことにもなるので、私にとってはマイナスの方が多かったです。付き合いで、というのは、仕事をせずにゴルフをするための単なる口実じゃないでしょうか。そんな暇があったら工場に行って従業員を励ましてください、お客様のところを回ってくださいと言いたいです。

(第4回に続く)

~「病める時も、健やかなる時も」夫婦で聴きたい曲~

ヴィヴァルディ「四季」は、若い時にレコードが擦り切れるほど聴きました。また、妻と交際していた頃、イ・ムジチが演奏するレコードをプレゼントした思い出深い曲でもあります。

2010年11月12 日、40 回目の結婚記念日を「四季の日」とし、日本記念日協会からも正式に記念日認定されました。以後、宗次ホールでは毎年11月12日に「四季の日」コンサートを開催しています。

第14回 四季の日 コンサート(2024年11月12日)。出演:木嶋真優(ヴァイオリン)、セントラル愛知交響楽団(弦楽合奏)
ソリストを務めた木嶋さんと

クラシック音楽に駄作なし!

1万8千曲を一気に聴いて、歴史ある音楽の素晴らしさを実感

第5回宗次ホールツィゴイネルワイゼンコンクールでの審査員の先生と受賞者との集合写真
第5回宗次ホールツィゴイネルワイゼンコンクールでの審査員の先生と受賞者との集合写真

カレーハウスCoCo壱番屋の経営を退いた後、書店でクラシックの名曲が1万8千曲ほど掲載されている本を見つけました。その中で特におすすめの曲として挙げられていた300~400曲を聴いた後、やはり全部聴こうと思い直し、CDショップに連絡しました。掲載されていた1万8千曲が収録されているCDを、演奏者を問わずに選定してもらい、取り寄せることにしたのです。そのうち8割ほどは聴きましたが、やはり長い間伝承されてきただけのことはありますね、クラシック音楽の作品に駄作は一つもないなと感じました。一度聴いただけでは魅力が十分に理解できない曲もありましたが、声楽もピアノも弦楽器も、どれも素晴らしいものでした。
その中でも大好きだった1曲が、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。今では、ツィゴイネルワイゼンを課題曲にしたヴァイオリンコンクールを宗次ホールで開催しており、今年も11月に行われました。
審査委員長はヴァイオリニストの大谷康子さん。これまでに「ツィゴイネルワイゼン」を4千回は演奏してきたという屈指のツィゴイネルワイゼン弾きです。
私は所用のため聴くことができなかったのですが、第1位 を受賞した兼子竜太朗さんが素晴らしい演奏を聴かせてくれたと聞いています。

~おいしいまかないでやる気アップ!~今日の「宗次食堂」

今日のまかないは「宗次德製シーフードカレー」!
エビ・ホタテ・イカがゴロゴロ入っていて、定番のゆで卵丸ごと1個のせです。

宗次德製シーフードカレーは具だくさんで栄養満点!丸ごとゆで卵の贅沢なトッピングつきなのもうれしい
宗次德製シーフードカレーは具だくさんで栄養満点!丸ごとゆで卵の贅沢なトッピングつきなのもうれしい

(取材・文 野崎裕美)

宗次ホール
住所:愛知県名古屋市中区栄4丁目5-14
公式webサイト:https://munetsuguhall.com
Instagram: @munetsugu_hall
X: @munetsuguhall
facebook: munetsuguhall
宗次ホール Youtube チャンネル

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