香原斗志「イタリア・オペラ名歌手カタログ」

オペラ評論家の香原斗志さんが、往年の名歌手から現在活躍する気鋭の若手までイタリアのオペラ歌手を毎回1人取り上げ、魅力をつづります。

ディミトリー・コルチャック=新国立劇場「ウェルテル」2016年公演より

<第38回>ディミトリー・コルチャック(テノール)

ディミトリー・コルチャック=新国立劇場「ウェルテル」2016年公演より 歌唱に知的な美しさを宿す ベルカント・オペラの申し子 今年4月、シチリア島の州都、パレルモのマッシモ劇場でベッリーニ「ノルマ」を鑑賞した。お目当ては

グレゴリー・クンデ (C)Chris Gloag

<第37回>グレゴリー・クンデ(テノール)

万全のテクニックを土台に声を成長させ 古希が近づいても衰えない奇跡のテノール 実際、80歳を超えて歌いつづけている歌手もいて、それにくらべれば若いかもしれないが、グレゴリー・クンデの場合、条件が違う。非日常的な声域で歌う

ユシフ・エイヴァゾフ (C) Vladimir Shirokov

<第36回> ユシフ・エイヴァゾフ(テノール)

ユシフ・エイヴァゾフ (C) Vladimir Shirokov 「ネトレプコの夫」の形容はもう不要 世界最高峰の声力を誇る大テノール アンナ・ネトレプコの旦那であるのは事実で、数年前まではそう冠して語られるのが常だった

ユシフ・エイヴァゾフ (C) Vladimir Shirokov

<第35回> マイケル・スパイアーズ(テノール)

三オクターヴの音域で重厚な声を輝かせる 現代のバリテノーレ  アンドレア・ノッツァーリ(1776-1832)。「イングランド女王エリザベッタ」のレイチェスターや「オテッロ」のタイトルロールのほか、「エルミオーネ」のピッロ

ナタリーデセイ

<第34回> ナタリー・デセイ(ソプラノ)

ナタリー・デセイ 自然な発声、透明な声、超高音と 女優なみの表現力の両立 ナタリー・デセイの登場は衝撃的だった。きわめて抒情的な声は魅惑的な倍音に包まれ、透明な美しさを湛えている。それを自在に操ってのコロラトゥーラの輝き

マリア・アグレスタ

<第33回> マリア・アグレスタ(ソプラノ)

マリア・アグレスタ=2012年10月6日 サントリーホールフェスティバル オープニング・ガラ「響」より 磨き抜かれた声と力強さ、柔軟な装飾 すべてが理想的にバランスされたディーヴァ  すぐれた歌手の演奏を聴いて、ある音楽

ホセ・カレーラス

<第32回> ホセ・カレーラス(テノール)

ホセ・カレーラス 待ち望まれた「三大テノール」に再び挑む 記録より記憶に残る歌手  「世界三大テノール」は型破りだった。同じ声域のライバル歌手同士は、ふつうは結集しない。テノールとソプラノならわかる。そこにバリトンが加わ

23年2月に新国立劇場「ファルスタッフ」で題名役を歌うニコラ・アライモ

<第31回> ニコラ・アライモ(バリトン)

23年2月に新国立劇場「ファルスタッフ」で題名役を歌うニコラ・アライモ ベルカントを究めているから表現できる ほんとうのヴェルディ  1978年生まれのニコラ・アライモは、同世代のなかでもっとも柔軟に歌えるバリトンである

「ナクソス島のアリアドネ」の作曲家にふんするレナード (C)Marty Sohl / Metropolitan Opera

<第30回> イザベル・レナード(メゾ・ソプラノ)

薫り高い声による正統的歌唱と加わる多彩なニュアンス 立ち姿にも歌にも都会的な洗練が感じられるイザベル・レナードは、生まれも育ちもニューヨークだ(母方の祖先はアルゼンチン人でラテンの血も流れている)。地元のジュリアード音楽

ルカ・サルシ (C)MarcoBorrelli

<第29回> ルカ・サルシ(バリトン)

偉大な系譜に名乗りを上げるスカラ座のプリモ・バリトン カップッチッリ、ブルゾン、ヌッチと続いたイタリアの「正統的」バリトン。その地位に最も近いのがルカ・サルシであるのは、衆目の一致するところではないだろうか。   たとえ