毎日クラシックナビが選ぶ2024年開催公演ベスト10

◆◆柴田克彦(音楽ライター)選◆◆

♦ピカイチ

サイモン・ラトル指揮 バイエルン放送交響楽団
11月28日(木)NHKホール
マーラー:交響曲第7番「夜の歌」

♦次点

鈴木雅明指揮 バッハ・コレギウム・ジャパン 第164回定期演奏会
B→B バッハからメンデルスゾーン=バルトルディへ
10月31日(木)東京オペラシティ コンサートホール
メンデルスゾーン:交響曲第2番「讃歌」他

バッハからメンデルスゾーンの繋がりを紐解いた鈴木&BCJの10月定期 (C)K. Miura
バッハからメンデルスゾーンの繋がりを紐解いた鈴木&BCJの10月定期 (C)K. Miura

③東京春祭 リッカルド・ムーティ イタリア・オペラ・アカデミー ヴェルディ「アッティラ」
9月14日(土)東京音楽大学100周年記念ホール
リッカルド・ムーティ(指揮)/イルダール・アブドラザコフ(アッティラ)他/東京春祭オーケストラ

④英国ロイヤル・オペラ ヴェルディ「リゴレット」
6月25日(火)神奈川県民ホール
アントニオ・パッパーノ(指揮)/オリヴァー・ミアーズ(演出)/エティエンヌ・デュピュイ(リゴレット)/ネイディーン・シエラ(ジルダ)/ハビエル・カマレナ(マントヴァ侯爵)他/ロイヤル・オペラハウス管弦楽団

⑤イザベル・ファウスト モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全曲演奏会
12月11日(水)東京オペラシティ コンサートホール
ジョヴァンニ・アントニーニ(指揮)/イル・ジャルディーノ・アルモニコ
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」 他

⑥高関健指揮 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第372回定期演奏会
9月6日(金)東京オペラシティ コンサートホール
ブルックナー:交響曲第8番(第1稿)

⑦ペトル・ポペルカ指揮 プラハ放送交響楽団
7月13日(土)東京オペラシティ コンサートホール
スメタナ:「わが祖国」より、他

⑧上野通明 無伴奏チェロ・リサイタル
5月24日(金)サントリーホール
黛敏郎:BUNRAKU、他

⑨全国共同制作オペラ プッチーニ「ラ・ボエーム」
11月2日(土)ミューザ川崎シンフォニーホール
井上道義(指揮)/森山開次(演出)/中川郁文(ミミ)/工藤和真(ロドルフォ)他/東京交響楽団

⑩濱田芳通 第53回サントリー音楽賞受賞記念 ヘンデル「リナルド」
8月17日(土)サントリーホール
濱田芳通(指揮・リコーダー)/彌勒忠史(リナルド)他/アントネッロ

~外来&国内楽団の名演が続いた1年~
ラトル&バイエルン放送響はマーラー7番の語彙の豊かさを実感させた生気溢れる凄演、BCJは「讃歌」をオラトリオとして表現した目からウロコの名演、ムーティの「アッティラ」はレア作品の妙味を伝える迫真的な快演だった。以下、感銘深い公演は他にも多々あったが、ここでは上演の意義を重視して選んだ。ブル8第1稿の意味を明示した高関&シティ・フィル、井上のラスト・イヤーを飾った清新な「ラ・ボエーム」はその典型例。

◆◆那須田 務(音楽評論家)選◆◆

♦ピカイチ

イザベル・ファウスト モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全曲演奏会
12月11日(水)東京オペラシティ コンサートホール
ジョヴァンニ・アントニーニ(指揮)/イル・ジャルディーノ・アルモニコ
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」 他

若きモーツァルトによる協奏曲をファウスト&アントニーニ率いる古楽集団イル・ジャルディーノ・アルモニコが2夜にわたり紡いだ (C)大窪道治 提供:東京オペラシティ文化財団
若きモーツァルトによる協奏曲をファウスト&アントニーニ率いる古楽集団イル・ジャルディーノ・アルモニコが2夜にわたり紡いだ (C)大窪道治 提供:東京オペラシティ文化財団

♦次点

ピエール=ロラン・エマール ピアノ・リサイタル
10月8日(火)東京文化会館小ホール
リゲティ:ムジカ・リチェルカータ/ベートーヴェン:11のバガテル、他

③サイモン・ラトル指揮 バイエルン放送交響楽団
11月27日(水)サントリーホール
ブルックナー:交響曲第9番(コールス校訂版)他

④アントニオ・パッパーノ指揮 ロンドン交響楽団
9月26日(木)サントリーホール
サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」他

⑤濱田芳通指揮 アントネッロ 第18回定期公演
11月11日(月)東京オペラシティ コンサートホール
J・S・バッハ:ミサ曲ロ短調

⑥パトリツィア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン)&カメラータ・ベルン 第1夜
12月7日(土)トッパンホール
シューベルト:弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」他

⑦山田和樹指揮 読売日本交響楽団 第635回定期演奏会
2月9日(金)サントリーホール
ベートーヴェン:交響曲第2番、他

⑧クリストフ・プレガルディエン(テノール)&ミヒャエル・ゲース(ピアノ)
5月24日(金)トッパンホール
マーラー:「子供の不思議な角笛」より「原光」他

⑨佐藤俊介(ヴァイオリン)&スーアン・チャイ(フォルテピアノ) デュオリサイタル
10月11日(金)浜離宮朝日ホール
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」他

⑩井上道義指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 第659会定期演奏会
11月18日(月)サントリーホール
ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」

~新鮮さと驚き、コンサートライフの醍醐味~
今年のピカイチは、イザベル・ファウストとアントニーニ&イル・ジャルディーノ・アルモニコ。しなやかなでエレガントなファウストのヴァイオリン、アイディア豊富なアントニーニ、シュタイアー書き下ろしのカデンツァ。かれらの手に掛かるといつものモーツァルトの名曲がなんとも新鮮。コパチンスカヤ&カメラータ・ベルン、濱田芳通の「ロ短調ミサ曲」、佐藤俊介らのブラームスもそうだが、今年はフレッシュな感銘と驚きを与えてくれるものが少なくなかった。コンサートライフの醍醐味だ

◆◆長谷川京介(音楽評論家)選◆◆

♦ピカイチ

東京春祭 リッカルド・ムーティ イタリア・オペラ・アカデミー ヴェルディ「アッティラ」
9月14日(土)東京音楽大学100周年記念ホール
リッカルド・ムーティ(指揮)/イルダール・アブドラザコフ(アッティラ)他/東京春祭オーケストラ

♦次点

ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団 R・シュトラウス「ばらの騎士」
12月15日(日)ミューザ川崎シンフォニーホール
ミア・パーション(元帥夫人)/カトリオーナ・モリソン(オクタヴィアン)/アルベルト・ペーゼンドルファー(オックス男爵)他

③東京春祭 R・シュトラウス「エレクトラ」
4月18日(木)東京文化会館
セバスティアン・ヴァイグレ(指揮)/エレーナ・パンクラトヴァ(エレクトラ)他/読売日本交響楽団

④東京春祭 ヴェルディ「アイーダ」
4月17日(水)東京文化会館
リッカルド・ムーティ(指揮)/マリア・ホセ・シーリ(アイーダ)/ルチアーノ・ガンチ(ラダメス)/ユリア・マトーチュキナ(アムネリス)他/東京春祭オーケストラ

⑤サイモン・ラトル指揮 バイエルン放送交響楽団
11月24日(日)ミューザ川崎シンフォニーホール
ブルックナー:交響曲第9番(コールス校訂版)他

⑥アントニオ・パッパーノ指揮 ロンドン交響楽団
9月27日(金)サントリーホール
マーラー:交響曲第1番「巨人」他

⑦東京春祭 ディオティマ弦楽四重奏団 シェーンベルク弦楽四重奏曲全曲演奏会
4月6日(土)東京藝術大学奏楽堂

⑧新国立劇場 ベッリーニ「夢遊病の女」
10月6日(日)新国立劇場オペラパレス
マウリツィオ・ベニーニ(指揮)/バルバラ・リュック(演出)/クラウディア・ムスキオ(アミーナ)/アントニーノ・シラグーザ(エルヴィーノ)他/東京フィルハーモニー交響楽団

話題のベルカント歌手が集結し、新国立劇場における初上演となった「夢遊病の女」 撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場
話題のベルカント歌手が集結し、新国立劇場における初上演となった「夢遊病の女」 撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

⑨園田隆一郎指揮 パシフィックフィルハーモニア東京 第166回定期演奏会
6月8日(土)東京芸術劇場
中村恵理(ソプラノ)/山下裕賀(メゾ・ソプラノ)/工藤和真(テノール)/伊藤貴之(バス)他
ヴェルディ「レクイエム」

⑩PMFオーケストラ東京公演
7月30日(火)サントリーホール
マンフレート・ホーネック(指揮)他
マーラー:交響曲第5番、他

~オペラ演奏会形式が百花繚乱!~
ベスト4がオペラ演奏会形式。背景には20周年を迎えた東京春祭の圧倒的な充実がある。第1位のムーティ「アッティラ」も春祭関連。ノットは「ばらの騎士」でR・シュトラウス・シリーズの掉尾を飾った。ラトルとバイエルン放送響、パッパーノとロンドン響、新しいシェフと名門オケの相性はいずれも極上。新国「夢遊病の女」はムスキオというスターを生み、園田隆一郎はヴェルディ「レクイエム」で完璧な演奏。PMFオーケストラも感動的だった。

◆◆深瀬 満(音楽ジャーナリスト)選◆◆

♦ピカイチ

マティアス・ゲルネ(バリトン)&マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ)「冬の旅」
11月2日(土)サントリーホール
シューベルト:歌曲集「冬の旅」

♦次点

濱田芳通 第53回サントリー音楽賞受賞記念 ヘンデル「リナルド」
8月17日(土)サントリーホール
濱田芳通(指揮・リコーダー)/彌勒忠史(リナルド)他/アントネッロ

③パトリツィア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン)&カメラータ・ベルン 第1夜
12月7日(土)トッパンホール
シューベルト:弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」他

「死と乙女」の各楽章にルネサンス期から現代作品までを差し挟み、怒涛のライブ・パフォーマンスで魅せたコパチンスカヤ (C)大窪道治 写真提供:トッパンホール
「死と乙女」の各楽章にルネサンス期から現代作品までを差し挟み、怒涛のライブ・パフォーマンスで魅せたコパチンスカヤ (C)大窪道治 写真提供:トッパンホール

④ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 NHK交響楽団 第2020回定期公演A
10月19日(土)NHKホール
オネゲル:交響曲第3番「典礼風」/ブラームス:交響曲第4番

⑤神奈川県民ホール開館50周年記念 サルヴァトーレ・シャリーノ「ローエングリン」
10月5日(土)神奈川県民ホール
杉山洋一(指揮)/橋本愛(エルザ役)/成田達輝(ヴァイオリン)他

⑥ピエール=ロラン・エマール ピアノ・リサイタル
10月8日(火)東京文化会館小ホール
リゲティ:ムジカ・リチェルカータ/ベートーヴェン:11のバガテル、他

⑦東京春祭 リッカルド・ムーティ イタリア・オペラ・アカデミー ヴェルディ「アッティラ」
9月14日(土)東京音楽大学100周年記念ホール
リッカルド・ムーティ(指揮)/イルダール・アブドラザコフ(アッティラ)他/東京春祭オーケストラ

⑧高関健指揮 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第372回定期演奏会
9月6日(金)東京オペラシティ コンサートホール
ブルックナー:交響曲第8番(第1稿)

⑨ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団 R・シュトラウス「ばらの騎士」
12月15日(日)ミューザ川崎シンフォニーホール
ミア・パーション(元帥夫人)/カトリオーナ・モリソン(オクタヴィアン)/アルベルト・ペーゼンドルファー(オックス男爵)他

⑩北村朋幹(ピアノ) リスト「巡礼の年」全曲演奏会
3月23日(土)所沢市民文化センターミューズ マーキーホール

~戦争と破壊がもたらす死と無常のリアリティ~
引退を撤回して「冬の旅」と向き合ったピリスは、シューベルト最晩年のソナタ等に通じる深淵に切々と迫った。ゲルネはその上で自在に振るまうのみ。「死と乙女」をモチーフにしたコパチンスカヤの企画では背筋が凍った。ブロムシュテットの緊迫感あふれるオネゲル、シャリーノの鋭い衝撃にも、根底には戦争と破壊がもたらす死と無常のリアリティが横たわっていた。アントネッロを始めとする国内勢の伸張には、大きく目を見はった。

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