ムーティの指揮で際立つウィーン・フィルらしさ
リッカルド・ムーティ指揮の「ブラ2」は、2019年1月30日シカゴ交響楽団の来日公演(東京文化会館)以来2度目だったが全く印象が違い、別の作品を聴いているようだった。ウィーン・フィルによる「ベートーヴェンの2番」のほうも2001年10月21日、「ベートーヴェン・ツィクルス」の一環でS.ラトル指揮で聴いた記憶があるが、オーケストラの編成も全体の印象も異なり(今回は14型=第1ヴァイオリン7プルト14人。前回はもっと小ぶりの演奏)、あまり比較にならない。この日のほうがずっとウィーン・フィル「らしさ」が前面に出ていた。
2曲とも細部まで緻密。ベートーヴェンでは、冒頭のフォルテッシモ5オクターブに及ぶD音のぶっつけ→オーボエ&ファゴットのメロディー他による長い序奏と、3分過ぎからようやく登場する弦楽器群の主題のバランスが絶妙。続くラルゲット楽章(その昔、H.プライが歌詞を付けて歌ったジルヒャー編曲版があったっけ)でも「たいていの人はここで寝る」伝説を吹き飛ばす心地よい緊張が保たれていた。
ブラームスは冒頭楽章の長い提示部を近年の通例で繰り返したこと、第2楽章アダージョ・ノン・トロッポをじっくり丁寧に弾き込んだこともあって50分近い演奏になった。冒頭楽章に潜む無気味なトロンボーンの弱奏、カンタービレ指定のヴィオラとチェロによる副主題のフワッとした感触などは、指揮者の、というよりオーケストラの特性とも感じられ、思わず「そうだよね、やっぱりこれだよね」と納得。続くアダージョ・ノン・トロッポも「北ドイツ風」とされる通俗解説を一蹴する明るく軽いロ長調の響きでスタート。小粋な第3楽章を通過してサッと滑り込んでいった。
巨匠指揮者による2曲の名演を聴いたと同時に、「ウィーン・フィルのベートーヴェン、ブラームス」を堪能した感じが強い。アンコールで演奏された「天体の音楽」がブラームスと不思議に相性が良く、これまた極上のデザートになっていた。
(渡辺和彦)
公演データ
ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2026
リッカルド・ムーティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
11月7日(土) 16:00サントリーホール 大ホール
指揮:リッカルド・ムーティ
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
プログラム
ベートーヴェン:交響曲第2番 ニ長調 Op.36
ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 Op.73
アンコール
ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「天体の音楽」Op.235
わたなべ・かずひこ
音楽評論家。北海道生まれ。弦楽器と歌(他ジャンルを含む)、猫、小鳥好き。
NHK「朝のバロック」他の企画構成を約20年担当、FM東京(現トーキョーFM)クラシック番組担当も長く務める。前後して「ヴァイオリニスト33」(河出書房新社)、「ヴァイオリン・チェロ名曲名演奏」(音楽之友社)、「ラテン・クラシックの情熱」(水曜社)などを発表。最初の著作「クラシック辛口ノート」(洋泉社)のため「辛口評論家」と言われることも多いが実はそれほどでもない。










