アンドリス・ポーガ指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団 第601回定期演奏会

幻想交響曲のこれまでのイメージを一変させたポーガの理知的なアプローチ

大阪フィルとの共演は3度目となるアンドリス・ポーガは、46歳ながらその力量が評価され、世界の中枢で確固たる地位を築きつつある。

大阪フィルの第601回定期演奏会で指揮台に立ったアンドリス・ポーガ ※写真は9月25日の同内容公演より (C)飯島隆
大阪フィルの第601回定期演奏会で指揮台に立ったアンドリス・ポーガ ※写真は9月25日の同内容公演より (C)飯島隆

今回は、前半にポーランドのペンデレツキのシンフォニエッタ第2番、コープランドのクラリネット協奏曲という20世紀を代表する作品が、大阪フィルのアーティスト・イン・レジデンスである、ウィーン・フィル首席クラリネット奏者ダニエル・オッテンザマーの独奏で演奏された。
ペンデレツキ作品は、前衛音楽の旗手であった初期の作風から、晩年の内省的な楽想をソロと弦楽器が味わい深く表現した。2楽章構成のコープランド作品では、明快な表現で書かれた第1楽章、そしてジャズ・クラリネットの伝説的巨匠、ベニー・グッドマンの依頼でこの作品が書かれたことを示すジャズ的な特徴を含んだ第2楽章、そしてお決まりの超絶技巧を必要とする箇所など多彩なスキルを要求される難曲を見事に演奏、会場は沸いた。

前半のペンデレツキ作品とコープランド作品では、大阪フィルのアーティスト・イン・レジデンス、ダニエル・オッテンザマーがソリストを務めた ※写真は9月25日の同内容公演より (C)飯島隆
前半のペンデレツキ作品とコープランド作品では、大阪フィルのアーティスト・イン・レジデンス、ダニエル・オッテンザマーがソリストを務めた ※写真は9月25日の同内容公演より (C)飯島隆

後半のベルリオーズでは、ラトビア出身のヤンソンス、ネルソンスという2人の先達の教えを継ぎ、オーケストラを自在に鳴らす手腕をすでに備えるポーガの独壇場となった。
作曲者が掲げた表題と革新的な楽器用法を生かし、外面的で派手なスペクタクルを狙った演奏も多いが、今回はそれとは一線を画した。
各楽章に付けられた表題を道標としながらも、各楽器同士が聴き合うことで生まれる細心のバランスと、一時期フランスの楽団が備えていた気品を持った軽く美しい音色を意識して演奏させることによって、作曲者の書いた管弦楽法の豊潤な世界が現れた。

ベルリオーズの幻想交響曲。ポーガの、オーケストラを自在に鳴らす手腕が光った ※写真は9月25日の同内容公演より (C)飯島隆
ベルリオーズの幻想交響曲。ポーガの、オーケストラを自在に鳴らす手腕が光った ※写真は9月25日の同内容公演より (C)飯島隆

第1楽章でも熱狂―鎮静を急速に繰り返すのではなく、各楽器が稜線を描くように緻密なアップダウンを作っていく。各楽章に登場する固定楽想も揺れ動く感情の如く、楽器の構成を変えながら巧みに際立たせるなど、作品の持つ知性的な部分を前面に出した興味深い演奏となった。
この演奏上の難題を大阪フィルの近年の充実が演奏を成功に導いたことは特筆すべきことだ。
(平末 広)

ポーガの手腕と、大阪フィルの近年の充実が演奏を成功に導いた ※写真は9月25日の同内容公演より (C)飯島隆
ポーガの手腕と、大阪フィルの近年の充実が演奏を成功に導いた ※写真は9月25日の同内容公演より (C)飯島隆

公演データ

大阪フィルハーモニー交響楽団

9月26日(土)15:00フェスティバルホール 

指揮:アンドリス・ポーガ
クラリネット:ダニエル・オッテンザマー
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔 文洙

プログラム
ペンデレツキ:シンフォニエッタ 第2番(日本初演)
コープランド:クラリネット協奏曲
ベルリオーズ:幻想交響曲 Op.14

ソリスト・アンコール
オッテンザマーによる即興演奏

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平末 広

ひらすえ・ひろし

音楽ジャーナリスト。神戸市生まれ。東芝EMIのクラシック担当、産経新聞社文化部記者、「モーストリー・クラシック」副編集長を経て、現在、滋賀県立びわ湖ホール・広報部。EMI、フジサンケイグループを通じて、サイモン=ラトルに関わる。キリル・ぺトレンコの日本の媒体での最初のインタビューをしたことが、ささやかな自慢。

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