11月は芸術の秋にふさわしい名演、熱演が各地で繰り広げられた。そこで今回は11月開催のステージからピカイチを、1月開催予定の公演からイチオシを選者の皆さんに紹介していただく。
先月のピカイチ
◆◆11月◆◆ 東条碩夫(音楽評論家)選
〈バイエルン放送交響楽団 日本公演〉
11月27日(水)サントリーホール
サイモン・ラトル(指揮)
リゲティ:アトモスフェール/ワーグナー:「ローエングリン」第1幕への前奏曲/ウェーベルン:6つの小品/ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と「愛の死」/ブルックナー:交響曲第9番(コールス校訂版)
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〈新国立劇場オペラ ロッシーニ:「ウィリアム・テル」新制作〉
11月26日(火)新国立劇場オペラパレス
大野和士(指揮)/ヤニス・コッコス(演出・美術・衣裳)/ゲジム・ミシュケタ(ウィリアム・テル)/妻屋秀和(ジェスレル)/ルネ・バルベラ(アルノルド・メルクタール)他/新国立劇場合唱団/東京フィルハーモニー交響楽団
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~ラトル&バイエルン放送響、本領発揮の一夜~
ラトルとバイエルン放送響がその本領を発揮した一夜がこれ。ブルックナーの「9番」での激烈な魔性の演奏。そして同曲の大胆な和声法に関連を持たせた他の4作品という選曲も見事で、特にウェーベルンでの明快鮮烈な演奏と、「トリスタン」での官能美にあふれた演奏は抜群だった。「ウィリアム・テル」は、大野和士芸術監督の渾身の指揮をはじめ、バレエも含めた大規模な舞台とフランス語上演という意欲的な試みに賛辞を贈ろう。
来月のイチオシ
◆◆2025年1月◆◆ 東条碩夫(音楽評論家)選
〈東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第375回定期演奏会〉
2025年1月17日(金)東京オペラシティ コンサートホール
高関健(指揮)/奥井紫麻(ピアノ)
サン=サーンス:ピアノ協奏曲第2番/マーラー:交響曲第7番「夜の歌」
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〈仙台フィルハーモニー管弦楽団 第378回定期演奏会〉
2025年1月24日(金)、25日(土)日立システムズホール仙台 コンサートホール
太田弦(指揮)/郷古廉(ヴァイオリン)/女声合唱:コロディア★プラネテス
シューベルト:「ロザムンデ」序曲/コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲/ホルスト:「惑星」
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~国内オーケストラ2選~
正月だからというわけでもないが、日本のオーケストラ2つを推そう。まずは最近好調の高関健とシティ・フィルのコンビだ。マーラーの「夜の歌」では、また高関の独自の「総譜研究」が聴けるかもしれない(売り物の「オタク」的プレトークもある)。一方「仙台フィル指揮者」の太田弦が同楽団と繰り広げる色彩的なプログラムにも興味が湧く。人気奏者・郷古廉のコルンゴルトも面白そうだ(チケットの予定枚数は完売の由)。
先月のピカイチ
◆◆11月◆◆ 柴田克彦(音楽ライター)選
〈バイエルン放送交響楽団 日本公演〉
11月28日(木)NHKホール
サイモン・ラトル(指揮)
バートウィッスル:サイモンへの贈り物2018/マーラー:交響曲第7番「夜の歌」
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〈全国共同制作オペラ 井上道義 指揮 「ラ・ボエーム」〉
11月2日(土)ミューザ川崎シンフォニーホール
井上道義(指揮)/森山開次(演出・振付・美術・衣裳)/中川郁文(ミミ)/工藤和真(ロドルフォ)/イローナ・レヴォルスカヤ(ムゼッタ)/池内響(マルチェッロ)他/ザ・オペラ・クワイア/世田谷ジュニア合唱団/東京交響楽団
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~ラトル&バイエルン放送響 マーラー7番へのモダンなアプローチ~
ラトル&バイエルン放送響は、カオスの状態が生じがちなマーラー7番を、精緻かつスムーズな造作で、首尾一貫したモダン交響曲として表現。オケの巧さも相まって説得力抜群の名演となった。なおブルックナー9番も、ミューザ川崎とサントリーHで対照的な印象を与えた興趣溢れる快演だった。「ラ・ボエーム」は、井上道義ラスト・イヤーの最後のオペラに相応しい感動的上演。特に多要素が錯綜する第2幕の焦点明確な舞台が光った。
来月のイチオシ
◆◆2025年1月◆◆ 柴田克彦(音楽ライター)選
〈東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第375回定期演奏会〉
2025年1月17日(金)東京オペラシティ コンサートホール
高関健(指揮)/奥井紫麻(ピアノ)
サン=サーンス:ピアノ協奏曲第2番/マーラー:交響曲第7番「夜の歌」
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〈阪田知樹 リスト〜ピアノ協奏曲の夕べ〉
2025年1月23日(木)サントリーホール
阪田知樹(ピアノ)/角田鋼亮(指揮)/東京フィルハーモニー交響楽団
リスト:ピアノ協奏曲第2番、死の舞踏、ピアノ協奏曲第1番、ハンガリー幻想曲
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~緻密で堅牢な高関&東京シティ・フィル~
フィルハーモニア管やソヒエフ&N響など他にも注目公演はあるが、ここは、毎回傾聴すべき好演を聴かせる高関&東京シティ・フィルをイチオシに。緻密で堅牢な同コンビの大曲演奏は、間違いなく足を運ぶ価値がある。バイエルン放送響の「夜の歌」を聴いた直後だけに興味もよりアップ。数いる俊英ピアニストの中でも断然の実力者(と信じる)阪田知樹のリスト公演は、協奏曲以外も含めた同形態の作品を一挙に楽しめる貴重な機会だ。
先月のピカイチ
◆◆11月◆◆ 池田卓夫(音楽ジャーナリスト)選
〈バイエルン放送交響楽団 日本公演〉
11月27日(水)サントリーホール
サイモン・ラトル(指揮)
リゲティ:アトモスフェール/ワーグナー:「ローエングリン」第1幕への前奏曲/ウェーベルン:6つの小品/ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と「愛の死」/ブルックナー:交響曲第9番(コールス校訂版)
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〈福川伸陽プロデュース インターナショナル・ウィンド・サミット2024「グラン・パルティータ」〉
11月18日(月)紀尾井ホール
福川伸陽(ホルン)/フィリップ・トーンドゥル(オーボエ)/荒木奏美(同)/ニコラ・バルディルー(クラリネット)/橋本杏奈(同)/小山莉絵(ファゴット)/中木健二(チェロ)/幣隆太朗(コントラバス)他
ドヴォルザーク:管楽セレナード/藤倉大:グラン・パルティータ(ウィンドアンサンブル のための)世界初演/モーツァルト:セレナード第10番「グラン・パルティータ」
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~ラトル&バイエルン放送響 再現した音楽史の変遷~
ラトルはワーグナーの実験精神がウェーベルンやリゲティだけでなくブルックナーにも強く受け継がれ、その後の音楽史を大きく変えていく実態を「名器」バイエルン放送響と高い解像度で再現した。ホルンの福川がフィリップ・トーンドゥル(オーボエ)、ニコラ・バルディルー(クラリネット)、橋本杏奈(同)ら内外の名手を集めた「グラン・パルティータ」は極上のエンターテインメント。管楽合奏への先入観を一変させた。
来月のイチオシ
◆◆2025年1月◆◆ 池田卓夫(音楽ジャーナリスト)選
〈東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第375回定期演奏会〉
2025年1月17日(金)東京オペラシティ コンサートホール
高関健(指揮)/奥井紫麻(ピアノ)
サン=サーンス:ピアノ協奏曲第2番/マーラー:交響曲第7番「夜の歌」
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〈NHK交響楽団 第2028回定期公演Aプログラム〉
2025年1月18日(土)、19日(日)NHKホール
トゥガン・ソヒエフ(指揮)
ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」
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~マーラーとショスタコーヴィチ 節目に刻む「第7番」~
新春の「第7」行脚。2025年に創立50周年を迎えるシティ・フィルは凝り性の常任指揮者、高関健と最新の校訂楽譜によるマーラー「夜の歌」。地道にコツコツとアンサンブルに磨きをかけ、最近は完売の公演も出てきた。11月にミュンヘン・フィルと来日したばかりのソヒエフはN響1月の〝指定席〟に戻り、第二次世界大戦終結80周年記念の年の幕開けに「レニングラード」を振る。
先月のピカイチ
◆◆11月◆◆ 毬沙琳(音楽ジャーナリスト)選
〈バイエルン放送交響楽団 日本公演〉
11月27日(水)サントリーホール
サイモン・ラトル(指揮)
リゲティ:アトモスフェール/ワーグナー:「ローエングリン」第1幕への前奏曲/ウェーベルン:6つの小品/ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と「愛の死」/ブルックナー:交響曲第9番(コールス校訂版)
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〈新国立劇場オペラ ロッシーニ:「ウィリアム・テル」新制作〉
11月23日(土・祝)新国立劇場オペラパレス
大野和士(指揮)/ヤニス・コッコス(演出・美術・衣裳)/ゲジム・ミシュケタ(ウィリアム・テル)/妻屋秀和(ジェスレル)/ルネ・バルベラ(アルノルド・メルクタール)他/新国立劇場合唱団/東京フィルハーモニー交響楽団
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~ラトルの個性が光るプログラミングに感嘆、バイエルン放送響~
リゲティ、ウェーベルンそれぞれの作品とワーグナーが繋がって演奏されることによる音楽の発見、メインにはブルックナーの遺作が置かれるというプログラムはラトルならではのもの。バイエルン放送響の深みと包容力のある管弦楽に酔いしれた。原語上演は国内初となる「ウィリアム・テル」、合唱、バルベラらの見事な歌唱からロッシーニの偉大さを改めて知る。聴くたびに別次元の世界を見せるカントロフのピアノにも触れておきたい。
来月のイチオシ
◆◆2025年1月◆◆ 毬沙琳(音楽ジャーナリスト)選
〈NHK交響楽団 第2030回定期演奏会Bプログラム〉
2025年1月30日(木)、31日(金)サントリーホール
トゥガン・ソヒエフ(指揮)/郷古 廉(ヴァイオリン)
ムソルグスキー(リャードフ編):歌劇「ソロチンツィの市」より序曲、「ゴパック」/バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番/ドヴォルザーク:交響曲第8番
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〈東京都交響楽団 第1014回定期演奏会Bシリーズ・都響スペシャル〉
2025年1月14日(火)、15日(水)サントリーホール
レナード・スラットキン(指揮)/金川真弓(ヴァイオリン)
シンディ・マクティー:弦楽のためのアダージョ(2002)/ウォルトン:ヴァイオリン協奏曲/ラフマニノフ:交響曲第2番
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~ソヒエフのN響、スラットキンの都響、豪華ソリストにも期待~
毎年N響を指揮するソヒエフ、11月のミュンヘン・フィルとの公演で聴いたブルックナーの余韻も冷めぬ中、ショスタコーヴィチ(Aプロ)やブラームス(Cプロ)も魅力的だが、歌心あふれるドヴォルザークと躍進目覚ましいコンサートマスター郷古がソロを弾くBプロを。
都響と初共演のスラットキン、こちらもスケール感のあるヴァイオリンで魅了し続ける金川真弓のソロ、マエストロが得意とするラフマニノフなど聴きどころ満載だ。
先月のピカイチ
◆◆11月◆◆ 宮嶋 極(音楽ジャーナリスト)
〈ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 日本公演〉
11月17日(日)サントリーホール
アンドリス・ネルソンス(指揮)/イェフィム・ブロンフマン(ピアノ)
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番/R・シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」
同点ピカイチ
〈バイエルン放送交響楽団 日本公演〉
11月28日(木)NHKホール
サイモン・ラトル(指揮)
バートウィッスル:サイモンへの贈り物2018/マーラー:交響曲第7番「夜の歌」
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~甲乙つけ難きウィーン・フィルとバイエルン放送響~
ネルソンス指揮ウィーン・フィル(WPH)、ラトル指揮バイエルン放送響(BRSO)、個性は違えども両者、素晴らしい演奏で甲乙つけ難く、よって11月は両公演を同点ピカイチとし次点はなしにした。WPHはオケの伝統美が全開となったR・シュトラウス「英雄の生涯」がメインの17日の公演が抜きん出た演奏であった(詳細はアンコール記事にて)。BRSOはラトルとの新たな時代の充実を予感させるマーラー7番を取り上げたNHK音楽祭のステージが特に印象深かった。
来月のイチオシ
◆◆2025年1月◆◆ 宮嶋 極(音楽ジャーナリスト)
〈フィルハーモニア管弦楽団 日本公演〉
2025年1月20日(月)、22日(水)サントリーホール ※福岡、大阪、愛知ほかでも開催
サントゥ=マティアス・ロウヴァリ(指揮)/辻井伸行(20, 22日・ピアノ)/三浦文彰(22日・ヴァイオリン)
20日)ブルッフ:スコットランド幻想曲/グリーグ:ピアノ協奏曲/シベリウス:交響曲第5番
22日)チャイコフスキー:イタリア奇想曲/同:ピアノ協奏曲第1番/バルトーク:管弦楽のための協奏曲
次点
〈NHK交響楽団 第2028回定期公演Aプログラム〉
2025年1月18日(土)、19日(日)NHKホール
トゥガン・ソヒエフ(指揮)
ショスタコーヴィチ:交響曲第7番「レニングラード」
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~新鋭ロウヴァリ率いる4年ぶりフィルハーモニア管の来日~
イチオシは英国の名門、フィルハーモニア管の4年ぶりの来日。20/21シーズンから首席指揮者に就任したフィンランドの新鋭ロウヴァリが帯同することからヨーロッパで注目を集める彼の才能を見極める絶好の機会となる。辻井伸行、三浦文彰との共演も楽しみ。次点はN響定期Aで、事実上の首席客演指揮者的存在で相性抜群のソヒエフが振るショスタコーヴィチの交響曲第7番。この作曲家の没後50年の劈頭(へきとう)を飾る名演が期待される。