フィルハーモニー・カメラータ・ベルリン&亀井聖矢 東京公演 プログラムB「MASAYA meets BPOメンバー&超絶ソリストの饗宴!」

ベルリン・フィルの精鋭と亀井が織りなす歌とエネルギーに満ちた演奏会

ピアニストの亀井聖矢と、ベルリン・フィルの弦楽奏者たちによるフィルハーモニー・カメラータ・ベルリンとの演奏会。

前半は亀井をソリストとするプログラム。まずは亀井の自作で、今回のツアーで世界初演されたばかりの「プロローグ~ピアノと弦楽のための~」。タイトルのとおり、続くベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番へのプロローグとなるもので、難聴の予兆など、この作品を作曲した当時のベートーヴェンの苦悩と、それを克服しようとする強い意志を題材としている。5分ほどの小品だが、どろどろとした思いを象徴するような弦の低いうごめきに、難聴を暗示するような、きしむ高音が乱入。曲のあとに拍手が入ったが、ここはそのまま次につなげたいところだったかもしれない。

ピアニストの亀井聖矢が、フィルハーモニー・カメラータ・ベルリンと自作曲を披露した
ピアニストの亀井聖矢が、フィルハーモニー・カメラータ・ベルリンと自作曲を披露した ※写真は9月20(日)横浜公演より c:T.Tairadate

ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番はアンサンブルのメンバーで、カラヤン時代の1983年入団とベルリン・フィル最古参の団員であるヴィオラのヴォルフガング・タリアズが、オーケストラ部分を弦楽合奏用に編曲したもの。第1ヴァイオリン4人で4~3~2~2~1の弦五部、計12人が指揮者なしで演奏する。亀井は前の曲とは一転、決然たる意志をこめてピアノを奏でる。心を込めてピアノを歌わせた第2楽章から、嵐のように激しい第3楽章へ。強奏しても音が汚くならないのが亀井の魅力。なお、アンサンブルのリードはコンサートマスターのルイス・フィリペ・コエーリョに委ね、亀井はほぼピアノに専念した。
アンコールのシューマン=リストによる「献呈」では、結末のシューベルトの「アヴェ・マリア」の引用部分の歌いぶりが、とりわけ印象的だった。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番で、亀井は決然たる意志をこめてピアノを奏でた ※写真は9月20(日)横浜公演より c:T.Tairadate

休憩後の後半は、フィルハーモニー・カメラータ・ベルリンのみの演奏。全員によるバルトークのルーマニア民俗舞曲で始まり、その後はメンバーをソリストとする作品が3曲。タチアナ・ヴァシリエヴァのチェロ独奏によるチャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレ、グナールス・ウパトニエクスのコントラバス独奏によるボッテジーニの歌劇「夢遊病の女」(ベッリーニ)による幻想曲、コエーリョのヴァイオリン独奏によるサラサーテのカルメン幻想曲と続く。

後半は、フィルハーモニー・カメラータ・ベルリンのみの演奏
後半は、フィルハーモニー・カメラータ・ベルリンのみの演奏 ※写真は9月20(日)横浜公演より c:T.Tairadate

ベルリン・フィルのメンバーはソリスト級がそろっているだけに、ヴァシリエヴァの温かい歌、ウパトニエクスの超絶技巧、コエーリョのラテン系らしい情熱的な歌とエネルギー、それぞれが客席をわかせる。その後もアンコール4曲の大サービスで、大満足の一夜となった。

(山崎浩太郎)

ベルリン・フィルのソリスト級メンバーによる演奏に大満足。会場から拍手喝采が起こった ※写真は9月20(日)横浜公演より c:T.Tairadate

公演データ

フィルハーモニー・カメラータ・ベルリン&亀井聖矢
東京公演 プログラムB「MASAYA meets BPOメンバー&超絶ソリストの饗宴!」

9月24日(木)19:00サントリーホール 大ホール

ピアノ:亀井聖矢
室内オーケストラ:フィルハーモニー・カメラータ・ベルリン

プログラム
亀井聖矢:プロローグ~ピアノと弦楽のための~(ピアノ独奏:亀井聖矢)
ベートーヴェン(W.タリアズ編):ピアノ協奏曲第3番ハ短調Op.37(ピアノ独奏:亀井聖矢)
バルトーク:ルーマニア民俗舞曲
チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ(チェロ独奏:タチアナ・ヴァシリエヴァ)ボッテジーニ:歌劇「夢遊病の女」(ベッリーニ)による幻想曲(コントラバス独奏:グナールス・ウパトニエクス)
サラサーテ:カルメン幻想曲Op.25(ヴァイオリン独奏:ルイス・フィリペ・コエーリョ)

ソリスト・アンコール
シューマン=リスト:献呈

アンコール
モーツァルト:「フィガロの結婚」より序曲
マスカーニ:「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲
J.シュトラウスⅡ世:ポルカ・シュネル「突進」Op.348
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル「短いことづて」Op.240

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山崎 浩太郎

やまざき・こうたろう

演奏家の活動と録音をその生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。クラシック音楽専門誌各誌や各種サイトなどに寄稿するほか、朝日カルチャーセンター新宿教室にてクラシック音楽の講座を担当している。著書は『演奏史譚1954/55』『クラシック・ヒストリカル108』(アルファベータ)、片山杜秀さんとの『平成音楽史』(アルテスパブリッシング)ほか。1963年東京生まれ。

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