ブルックナーの真の交響曲作曲家としての出発点を多様なアプローチで演奏
2024年から京都市交響楽団(京響)の首席客演指揮者を務めるオランダのヤン・ヴィレム・デ・フリーントが指揮。彼は17~18世紀の音楽を専門にピリオド奏法をモダン楽器に適応する演奏集団「コンバットメント・コンソート・アムステルダム」を1982年に創設、2015年まで音楽監督を務め、その後ハーグ・レジデンティ管の首席指揮者などを歴任した。
現在の常任指揮者・沖澤のどかとはレパートリーや演奏様式が異なることで、京響の表現の引き出しを着実に増やしている。
シューベルトの交響曲第4番「悲劇的」では、弦楽器のビブラートを控えめに、推進力を重視しながらも、歌謡的な部分では存分に歌いきるなどピリオド奏法とモダン奏法の長所を組み合わせて作品の魅力を引き出した。第3楽章のメヌエットでは、内在するスケルツォ的な表現を前面に出し、ブルックナー作品に繋(つな)がっていくことを示した。当然、表現の振れ幅は大きくなるが、室内楽活動も行う京響の奏者たちは機敏に反応、豊かな音楽的な空間を作り出した。
ブルックナーの交響曲第3番は、1962年に京響がハンス・ヨアヒム・カウフマン指揮で、日本初演した作品。今回は1873年の初稿が演奏された。この作品では宗教的深淵、ブラスの特徴的な表現、重低音弦楽器の雄弁さなど、後の交響曲の特徴が示され始めている。
この作品は尊敬するワーグナーに献呈を許され、作曲家自身が「ワーグナー交響曲」と出版譜に明記、2楽章に「トリスタンとイゾルデ」、「タンホイザー」、「ワルキューレ」などが引用されている。ここでは、京響がワーグナーの主要オペラをびわ湖ホールで沼尻竜典の指揮で演奏した経験が生き、ブルックナーがどこからインスピレーションを受け、発展させたかが説得力を持って示された。
フリーントが、各楽器の強弱や音色のバランスを巧みに配慮して単調になることを回避、ブルックナーがその後の作風を築くための多様な実験を行なったことをシューベルトに絡めて描くという興味深い演奏会だった。
(平末 広)
公演データ
京都市交響楽団 第708回定期演奏会
2月14日(土)14:30京都コンサートホール 大ホール
指揮:ヤン・ヴィレム・デ・フリーント
管弦楽:京都市交響楽団
コンサートマスター:会田莉凡
プログラム
シューベルト:交響曲第4番 ハ短調 D.417「悲劇的」
ブルックナー:交響曲第3番 ニ短調(初稿/1873年)
ひらすえ・ひろし
音楽ジャーナリスト。神戸市生まれ。東芝EMIのクラシック担当、産経新聞社文化部記者、「モーストリー・クラシック」副編集長を経て、現在、滋賀県立びわ湖ホール・広報部。EMI、フジサンケイグループを通じて、サイモン=ラトルに関わる。キリル・ぺトレンコの日本の媒体での最初のインタビューをしたことが、ささやかな自慢。










