MUZAジルベスターコンサート2025

「ノット監督ありがとう!」感動に包まれた大晦日

「MUZAジルベスターコンサート2025」は、ジョナサン・ノットが東京交響楽団の音楽監督として出演する最後の公演となった。本公演は、もともと秋山和慶が指揮する予定だったが、昨年1月に急逝。ノットが代役を務めた。

MUZAジルベスターコンサート2025の指揮台に立ったジョナサン・ノット。本公演が、東京交響楽団の音楽監督としてのラストステージだった ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール 
MUZAジルベスターコンサート2025の指揮台に立ったジョナサン・ノット。本公演が、東京交響楽団の音楽監督としてのラストステージだった ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール 

プログラム冒頭は、「秋山和慶トリビュート」でヨハン・シュトラウスⅡ世「ポルカ〝観光列車〟」。鉄道好きの秋山にちなんだ選曲である。
東響は、機敏なリズムから生み出される心地よい躍動感と引き締まった響きで、華やかさとともに気品に満ちた演奏を披露した。

続いて、バリー・グレイ「ザ・ベスト・オブ・サンダーバード」。この演奏会では、特撮人形劇「サンダーバード」のオリジナル・スコアを収めたCDをもとに、ノット自身が制作・監修した譜面が用いられている。
〝5、4、3、2、1〟というカウントダウンで曲は始まる。エレクトロニクスは、有馬純寿。ヴァイオリン群が3か所に分けて置かれるなど、楽器の配置も独特だ。金管楽器や打楽器の切れ味鋭い音は、推進力をもたらす。弦楽器はメロディーをおおらかに歌い上げ、そのノスタルジックな響きで聴く者をあたたかく包み込む。そして、低音域の安定した表現は、物語の勇壮な一面を引き立て、表情に富んだ音楽を作り上げた。北村朋幹の艶やかなピアノも好演に貢献。
映画のそれぞれのシーンを彷彿とさせるような細やかな音楽づくりは、後半のチャイコフスキー「バレエ音楽〝くるみ割り人形〟」Op.71にも通じる。

バリー・グレイ「ザ・ベスト・オブ・サンダーバード」では、ノット自身が制作・監修した譜面が用いられた ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール
バリー・グレイ「ザ・ベスト・オブ・サンダーバード」では、ノット自身が制作・監修した譜面が用いられた ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール

休憩をはさんで披露されたチャイコフスキーも、ノットによって編まれたセレクション。
全体を通して、音楽のしなやかな流れが印象に残る。例えば、第1幕「情景:プロローグ」の中間部では、緩急をこまやかにつけ、表情豊かに描き出す。また、フルートやクラリネットなどの木管楽器は、メロディーを多彩に歌い上げ、このバレエ音楽を鮮やかに引き立てる。強奏の場面でも、ノットは厚ぼったい響きではなく、作品の内側から広がるような壮麗な趣を醸し出していた。短調の部分でも、陰鬱な暗さはない。優雅で軽やかなサウンドですっきりと作品をまとめ上げ、透き通るような音によって音楽のメルヘンを聴かせてくれた。

チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」Op.71から。ノットは、優雅で軽やかなサウンドですっきりと作品をまとめ上げた ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール 
チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」Op.71から。ノットは、優雅で軽やかなサウンドですっきりと作品をまとめ上げた ©平舘平/ミューザ川崎シンフォニーホール 

アンコールは、3曲。チャイコフスキー「チョコレートの踊り」、同「パ・ド・ドゥ」、そして坂本九のヒットソング「上を向いて歩こう」。終演後、ノットは再び舞台に登場、聴衆の拍手に応える。楽団員も続々と舞台に戻り、「ノット監督ありがとう!てぬぐい」を振るなどして、シェフに感謝を伝える。ホールは心温まる雰囲気にあふれていた。

(道下京子)

公演データ

MUZAジルベスターコンサート2025

12月31日(水)15:00ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:ジョナサン・ノット
ピアノ&チェレスタ:北村 朋幹
女声合唱:東響コーラス
管弦楽:東京交響楽団
コンサートマスター:小川ニキティングレブ

プログラム
秋山和慶トリビュート
J.シュトラウスⅡ世:ポルカ「観光列車」Op.281
バリー・グレイ:「ザ・ベスト・オブ・サンダーバード」〜ジョナサン・ノット スペシャル・セレクション〜(オリジナル・サウンドトラックから)
チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」Op.71から〜ジョナサン・ノット スペシャル・セレクション〜

アンコール
チャイコフスキー:チョコレートの踊り
チャイコフスキー:パ・ド・ドゥ
坂本 九:上を向いて歩こう

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道下京子

みちした・きょうこ

桐朋学園大学音楽学部作曲理論学科卒業、埼玉大学大学院文化科学研究科修士課程修了。共著「ドイツ音楽の一断面――プフィッツナーとジャズの時代」など。「音楽の友」「ショパン」などの 音楽月刊誌や書籍、新聞、Web媒体、演奏会プログラムやCDの曲目解説など、ピアノのジャンルを中心に音楽経験を活かした執筆を行なっている。

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