バッハ・コレギウム・ジャパン第160回定期演奏会受難節コンサート2024「マタイ受難曲」(聖金曜日)

聖金曜日にふさわしいドラマティックなJ.S.バッハ「マタイ受難曲」

受難節恒例のバッハ・コレギウム・ジャパンの「マタイ受難曲」。イエス・キリストがはりつけに処せられたとされる聖金曜日(=復活祭2日前の金曜日)の公演では、鈴木優人の生き生きとした指揮とチェンバロのもと、ソリスト、合唱、オーケストラが完全に一体となり、ドラマティックな名演が生まれた。

エヴァンゲリストを務めたテノールのベンヤミン・ブルンス(写真左)が圧巻のレチタティーヴォを聴かせた(c)K.Miura
エヴァンゲリストを務めたテノールのベンヤミン・ブルンス(写真左)が圧巻のレチタティーヴォを聴かせた(c)K.Miura

エヴァンゲリスト(受難物語の進行役)を務めたテノールのベンヤミン・ブルンスが最大の立役者。レチタティーヴォ(朗読調の歌唱)は凛(りん)として強靭(きょうじん)、目の前で受難が進行するように迫真的。イエスとの関係を否認したペテロがにわとりのなく声を聞き、イエスの予言を思い出し号泣する場面でのレチタティーヴォは圧巻だった。続いて歌われる「マタイ受難曲」で最も知られたアリア第39曲「憐み給え、わが神よ」は、カウンターテナーのアレクサンダー・チャンスが若々しく伸びやかな美声で魅了。コンサートマスター寺神戸亮のソロも美しい。

民衆の罵(ののし)りの合唱「十字架につけろ!」の間にソプラノのハナ・ブラシコヴァが2本のオーボエ・ダ・カッチャとフルートを伴奏に歌う第49曲「愛ゆえに」は陰影が深く清らか。

バスの加耒徹は格調高い声でイエスを熱唱。ソプラノの松井亜希のアリア第8曲「悲しめ、わが心よ」は官能的な美しさ。第35曲「耐え忍べ」を歌ったテノール櫻田亮は勢いがあり、バックでヴィオラ・ダ・ガンバを弾く福澤宏の演奏も鮮やか。バスのマティアス・ヘルムは第42曲のアリア「我に返せ、わがイエスを!」をリズミカルに歌い、アルトの久保法之はイエスが鞭(むち)打ちされる場面の第52曲のアリア「わが頬を伝う涙が」を情感豊かに歌った。

迫力ある合唱、綿密な管弦楽のアンサンブルが冴(さ)えわたっていた (c)K.Miura
迫力ある合唱、綿密な管弦楽のアンサンブルが冴(さ)えわたっていた (c)K.Miura

バッハ・コレギウム・ジャパンの合唱の透明感と迫力も見事で、ソロでは小池優介(ペテロ)、加藤宏隆(ユダ)の二人が際立つ。管弦楽のアンサンブルも緻密で一段と冴えていた。
(長谷川京介)

公演データ

バッハ・コレギウム・ジャパン第160回定期演奏会
受難節コンサート2024「マタイ受難曲」(聖金曜日)

2024年3月29日(金)18:30東京オペラシティコンサートホール

指揮:鈴木優人
エヴァンゲリスト:ベンヤミン・ブルンス
ソプラノ:ハナ・ブラシコヴァ、松井亜希
アルト:アレクサンダー・チャンス、久保法之
テノール:櫻田 亮
バス:加耒 徹、マティアス・ヘルム
合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン

プログラム
J.S.バッハ:マタイ受難曲BWV244

長谷川京介
長谷川京介

はせがわ・きょうすけ

ソニー・ミュージックのプロデューサーとして、クラシックを中心に多ジャンルにわたるCDの企画・編成を担当。退職後は音楽評論家として、雑誌「音楽の友」「ぶらあぼ」などにコンサート評や記事を書くとともに、プログラムやCDの解説を執筆。ブログ「ベイのコンサート日記」でも知られる。

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