ドミンゴ・インドヤン指揮 ロイヤル・リヴァプール・フィル日本公演

ロイヤル・リヴァプール・フィル来日公演を率いる首席指揮者、ドミンゴ・インドヤン(C)John Millar
ロイヤル・リヴァプール・フィル来日公演を率いる首席指揮者、ドミンゴ・インドヤン(C)John Millar

1840年に創立され、英国最古のオーケストラのひとつとされる名門、ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団がこの5月、首席指揮者のドミンゴ・インドヤンとともに来日公演を行う。このツアーにはソリストとしてピアニストの辻井伸行が帯同、この公演の魅力について紹介する。(宮嶋 極)

インドヤン指揮、ロイヤル・リヴァプール・フィルと辻井は昨年、英国最大の音楽祭、BBCプロムスに出演、ラフマニノフの協奏曲第3番を演奏し約7000人の聴衆から盛大な喝采を集めるなどの成功を収めている。今回の来日でもこの3番に加えて、ラフマニノフの協奏曲第2番も取り上げる。
さて、ロイヤル・リヴァプール・フィルだが、来日は2015年、2018年に続いて3度目となる。英国のオーケストラに共通する高い技術力とスマートで深みを感じさせるサウンドが特徴。リヴァプールに専用のホール(フィルハーモニーホール)を有し、新作の委嘱など現代音楽の魅力紹介にも力を入れている。これまでマルコム・サージェント、チャールズ・グローヴス、ジョン・プリッチャード、ヴァシリー・ペトレンコといった名匠が首席指揮者を務め、長い歴史を紡いできた。2021年からはペトレンコの後を受けてインドヤンが首席指揮者に就任。現代感覚と情熱にあふれた音楽作りで高い評価と人気を博し、インドヤンの任期は2028年8月まで延長されたばかりの今、乗りに乗っているコンビである。

全公演に帯同し、ラフマニノフの協奏曲を披露する辻井伸行 (C) Yuji Hori
全公演に帯同し、ラフマニノフの協奏曲を披露する辻井伸行 (C) Yuji Hori

そのインドヤンは1980年2月、ベネズエラ・カラカス生まれで、あのグスターヴォ・ドゥダメルを世に送り出した同国の青少年音楽教育組織、エル・システマの出身。当初はヴァイオリンでキャリアをスタートさせ、その後、ジュネーブ高等音楽院で指揮を学んだ。ベルナルト・ハイティンク、デイヴィッド・ジンマンらのマスタークラスに参加。2013年にベルリン州立歌劇場(リンデン・オーパー)でダニエル・バレンボイムの下、第1副指揮者に就任しオペラの研さんを積んだ。18年にニューヨーク・メトロポリタン歌劇場にデビュー。その後、ウィーン国立歌劇場、パリ・オペラ座、シュトゥットガルト州立歌劇場、モンテカルロ歌劇場などへの客演でオペラ指揮者としての評価を不動のものとしている。コンサート指揮者としても19年から22年までポーランド国立放送響の指揮者を務めたほか、フィルハーモニア管、ドレスデン・フィル、シモン・ボリバル響、新日本フィルなどに客演し好評を博している。リヴァプール・フィルとの初共演は19年6月。両者の相性は抜群で、21年に首席指揮者に就任。現地の聴衆はもちろん、評論家やマスコミからの支持も絶大でこのほど任期が延長された。4月25日に開催されたコンサートでは日本公演と同じショスタコーヴィチの交響曲第5番を取り上げ、圧倒的な成功を収めたばかり。昨年のプロムスで大喝采を集めた辻井との共演も合わせて、彼らの〝勢い〟をそのまま日本に持ち込む熱いコンサートが期待される。

名門ながら2度目の来日、全国6都市で公演を行うロイヤル・リヴァプール・フィル (C)Mark McNulty
名門ながら2度目の来日、全国6都市で公演を行うロイヤル・リヴァプール・フィル (C)Mark McNulty

公演データ

ドミンゴ・インドヤン指揮 ロイヤル・リヴァプール・フィル 東京公演

指揮:ドミンゴ・インドヤン
ピアノ:辻井 伸行
管弦楽:ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団

〇5月14日(火)19:00 サントリーホール
ルーセル:「バッカスとアリアーヌ」第2組曲
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調Op.18
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調Op.47

〇5月15日(水)19:00 サントリーホール
ウォルトン:喜劇的序曲「スカピーノ」
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番ニ短調Op.30
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調Op.64

※このほか、5月11日(土)佐賀公演を皮切りに各地で開催
ドミンゴ・インドヤン指揮ロイヤル・リヴァプール・フィル来日公演

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宮嶋 極

みやじま・きわみ

放送番組・映像制作会社である毎日映画社に勤務する傍ら音楽ジャーナリストとしても活動。オーケストラ、ドイツ・オペラの分野を重点に取材を展開。中でもワーグナー作品上演の総本山といわれるドイツ・バイロイト音楽祭には2000年代以降、ほぼ毎年訪れるなどして公演のみならずバックステージの情報収集にも力を入れている。

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