東条碩夫「マエストロたちのあの日、あの時」

クラシック音楽業界の表裏に詳しい音楽評論家・東条碩夫さんが、世界的な指揮者やソリストたちの意外な素顔を紹介します。

小澤征爾=1964年5月17日 名古屋市公会堂における日フィル特別演奏会のプログラムから

第45回 小澤征爾さんと日本フィル

小澤征爾さんが、新日本フィルのシェフを務める以前には、分裂前の日本フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者のポストに在ったことは周知のとおりである。もともと、彼とこの日本フィルとの縁は深いものがあった。1961年、小澤さんが

新国立劇場の初代オペラ部門芸術監督に就任した畑中良輔氏=1995年3月30日 第1回新国立劇場記者発表会より 新国立劇場提供

第43回 演奏家的評論家・プロデューサー、畑中良輔氏

前回のこのコラムで話の出た東京室内歌劇場——1970年のことになるが、そのプロデューサーのひとりだった畑中良輔氏がオペラ「霊媒」上演の準備をしておられた時の話。ある日、氏とお茶を飲んでいると、氏が何を思ったか私に「トビー

東京室内歌劇場第3回公演(1970年2月13日~14日) メノッティ「霊媒」より

第42回 東京室内歌劇場、華やかな旗揚げの頃

東京室内歌劇場——建物の名前ではなくオペラの制作団体である——が旗揚げ公演を行ったのは、1969年9月のことだった。日比谷の交差点近くにある第一生命のビルの6階にあった旧第一生命ホールを会場とし、定期的に室内オペラを上演

2001年の英国演奏ツアーから、尾高ゆかりのカーディフでの公演=11月1日 セント・デイヴィッズ・ホール 写真提供:札幌交響楽団

第37回 札幌交響楽団へのオマージュ

1970年代の札幌交響楽団 エフエム東京在籍時代、私が担当していたライブ番組のために、札幌交響楽団の演奏会を北海道で録音したことが何度かある。それは、ちょうど50年前——1973年のある浅い春の日に、札響事務局長の谷口靜

1950年代以降、演奏水準の向上に貢献したアルヴィド・ヤンソンス=1958年10月17日第94回定期演奏会(日比谷公会堂)

第36回 東京交響楽団へのオマージュ

小遣いをためて買ったチケットを大切に握りしめ、日比谷公会堂へ聴きに行った初めての東京交響楽団の演奏は、上田仁指揮でのチャイコフスキーの「悲愴交響曲」、ピアノ協奏曲第1番(ソリストは井口基成)、「胡桃割人形」組曲だった。そ