ユアン・シールズ指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団すみだクラシックへの扉 #35 ピアノ:反田恭平

若きマエストロの心意気を感じた演奏会

まだ20代後半の若きマエストロ、ユアン・シールズが新日本フィルハーモニー交響楽団と初共演した(日本デビューは昨年11月の大阪交響楽団定期演奏会)。シールズは、1998年、大阪に生まれ、8歳のときにチェロを始めた。13歳からアメリカで育つ。UCLAでチェロと指揮を学び、ジュリアード音楽院では、デイヴィッド・ロバートソンに師事。2023年、シーメンス・ハレ国際指揮者コンクールに優勝。現在、ハレ管弦楽団(首席指揮者:カーチュン・ウォン)のアシスタント指揮者を務めている。

新鋭指揮者のユアン・シールズが、新日本フィルハーモニー交響楽団と初共演 (C)K.Miura
新鋭指揮者のユアン・シールズが、新日本フィルハーモニー交響楽団と初共演 (C)K.Miura

まずは、ウェーバーの「オベロン」序曲。シールズは、丁寧な音楽作りで、細かく表情をつける。それでいて、音楽に推進力もある。ホルンやクラリネットが好演。

続いて、反田恭平を独奏に迎えて、モーツァルトのピアノ協奏曲第27番。反田は、音をしっかりと鳴らし、モーツァルトの晩年の作品にふさわしい深みを感じさせる。管楽器との直接のコミュニケーションも良い。カデンツァがよく練られている。第2楽章は、深い呼吸での美しい演奏。弱音表現が際立つ。第3楽章は、(モーツァルトの最後のピアノ協奏曲という)枯淡ではなく、濃い内容で聴き応えがあった。最後にハッとする弱音表現も。オーケストラは、もう少し生き生きとしていてもよかったのでは。ただし、フルート、オーボエが美しく印象的。ソロ・アンコールのモーツァルト「トルコ行進曲」も弱音を効果的に使った演奏だった。

モーツァルトのピアノ協奏曲第27番では、反田恭平がソリストを務めた (C)K.Miura
モーツァルトのピアノ協奏曲第27番では、反田恭平がソリストを務めた (C)K.Miura

演奏会後半は、ブラームスの交響曲第4番。シールズは、第1楽章から丁寧に音の綾を紡いだ。弦楽器が12、10、8、6、4という少し小振りな編成が採られたが、いささか薄味に感じられ、こういう編成でこそ、個々の奏者に存分に弾いてほしいと思った(そのための12型ではないのか?)。第2楽章でも、シールズは音の重なりを美しく描いた。第3楽章は勢いのある良いテンポ。第4楽章では熱のこもった演奏が聴けた。ただし、もう少し各変奏での性格の変化があってもよかったかもしれない。フルートの独奏(清水伶)が見事。

ユアン・シールズの、新日本フィルから美しい音色を引き出した手腕と、若くしてウェーバー、モーツァルト、ブラームスの後期(晩年)の作品を並べた心意気を評価したい。
(山田治生)

公演データ

新日本フィルハーモニー交響楽団 すみだクラシックへの扉 #35
ピアノ:反田恭平

1月9日(金)14:00すみだトリフォニーホール

指揮:ユアン・シールズ
ピアノ:反田恭平
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:西江辰郎

プログラム
ウェーバー:「オベロン」序曲
モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調K.595
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調Op.98

ソリスト・アンコール
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K.331から第3楽章(トルコ行進曲)

他日公演
1月10日(土)14:00すみだトリフォニーホール

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山田 治生

やまだ・はるお

音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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