フィルハーモニクス ウィーン=ベルリン with 中谷美紀

楽しくないはずがない!世界最高峰のプレーヤーたちによる多彩な音楽

「フィルハーモニクス ウィーン=ベルリン」の東京公演は、12月13日に東京オペラシティコンサートホールで開催された。昼夜2公演だったが、ともに完売。中谷美紀がゲストで朗読を務めるという話題性もあったが、フィルハーモニクス自体のメンバーの豪華さを考えれば当然ともいえる。第1ヴァイオリンがベルリン・フィルのコンサートマスターであるノア・ベンディックス=バルグリー、クラリネットがウィーン・フィル首席のダニエル・オッテンザマー。そのほか、ウィーン・フィルのヴィオラ奏者で、中谷美紀の夫君としても知られるティロ・フェヒナー、ベルリン・フィルのチェロ奏者のシュテファン・コンツ、ウィーン・フィル首席コントラバス奏者エーデン・ラーツなど、世界最高峰のプレーヤーたちがクラシック、ジャズ、ポップスなど、ジャンルを問わない音楽を奏でるのだから、楽しくないはずがない。

世界最高峰のプレーヤーによる「フィルハーモニクス ウィーン=ベルリン」(c)千葉秀河
世界最高峰のプレーヤーによる「フィルハーモニクス ウィーン=ベルリン」(c)千葉秀河

13日の昼の公演では、前半に、バルトーク、ベートーヴェン、オーストラリア伝承曲、ビートルズの「イエスタディ」、クイーンの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」などをメンバーのセバスチャン・ギュルトラーやシュテファン・コンツが編曲したものを奏でた。7名のアンサンブルは、チェロとピアノ以外は立奏。オッテンザマーの英語でのトークを交えながら、リラックスした形で演奏が進められる。ノア・ベンディックス=バルグリーの歌心に魅了される。

 

後半は、「カーニバル(謝肉祭)」という、朗読(中谷美紀)を交えた音楽物語。いわば、フィルハーモニクス版「動物の謝肉祭」。スクリーンに動物のキャラクターを映しながら、動物たちがリーダーを決める会議をするという筋立て。サン=サーンスにとらわれず、動物がらみの作品がいくつも取り上げられ(恐竜=「ジュラシック・パーク」やE.T.まで参加!)、それぞれの奏者が妙技や超絶技巧を披露。選曲の多彩さもあり、かなり楽しめた。

※取材は12月13日13:30開演の部
(山田治生)

スクリーンに動物のキャラクターを映した楽しい演出 (c)千葉秀河
スクリーンに動物のキャラクターを映した楽しい演出 (c)千葉秀河

公演データ

2023年12月13日(水) 13:30、19:00東京オペラシティ コンサートホール

フィルハーモニクス ウィーン=ベルリン
ノア・ベンディックス=バルグリー (ヴァイオリン)
セバスチャン・ギュルトラー (ヴァイオリン)
ティロ・フェヒナー(ヴィオラ)
シュテファン・コンツ(チェロ)
エーデン・ラーツ(コントラバス)
ダニエル・オッテンザマー(クラリネット)
クリストフ・トラクスラー (ピアノ)
中谷美紀(朗読)

プログラム
F.マーキュリー(コンツ編):ドント・ストップ・ミー・ナウ
レノン=マッカートニー(ギュルトラー編):イエスタディ
ベートーヴェン(コンツ編):スウィング・オン・ベートーヴェン
オーストラリア伝承曲(コンツ編):ワルティング・マチルダ
J.ウィリアムズ(コンツ編):カンティーナ・バンド
「カーニバル(謝肉祭)」 朗読:中谷美紀
<サン=サーンス「動物の謝肉祭」に独自の解釈を加えたオリジナル組曲>
J.ウィリアムズ:「ジュラシック・パーク」よりテーマ
H.マンシーニ:ピンクパンサー
サン=サーンス:白鳥  他

アンコール
坂本龍一:戦場のメリー・クリスマス
スティング:イングリッシュマン・イン・ニューヨーク

 

12月13日の13:30開演の部、19:00開演の部の全曲プログラム
「フィルハーモニクス ウィーン=ベルリン with 中谷美紀」東京公演の全曲プログラム | クラシック音楽事務所ジャパン・アーツクラシック音楽事務所ジャパン・アーツ (japanarts.co.jp)をご覧ください。

その他の公演のプログラム
12月12日(火)19:00川商ホール(鹿児島市民文化ホール)
鹿児島市民文化ホール|ヴィルトゥオーゾシリーズ フィルハーモニクス ウィーン=ベルリン&中谷美紀(朗読出演) (k-kb.or.jp)

12月15日(金)19:00フェニーチェ堺(堺市民芸術文化ホール)
フィルハーモニクス-ウィーン=ベルリン-with-中谷美紀 (fenice-sacay.jp)

をご覧ください。

Picture of 山田 治生
山田 治生

やまだ・はるお

音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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