アメリカ音楽に精通したレナード・スラットキンのタクトで贈るジョン・ウィリムズ特集

レナード・スラットキン 写真提供=大阪フィル
レナード・スラットキン 写真提供=大阪フィル

大阪フィルが過去にレナード・スラットキン氏と共演したのは1度だけ。2019年3月の第326回定期演奏会でのことだった。人気曲のバースタインの「キャンディード」序曲に始まり、粋な小品コープランドの「田舎道を下って」、バーンスタインの感動的な合唱曲「チチェスター詩篇」、休憩後には大作コープランドの「交響曲第3番」を取り上げた。その壮大な演奏にフェスティバルホールの客席は大いに沸いた。会場の誰もが幸せになるアメリカ音楽のオン・パレードだった。

このコンサートの後、スラットキン氏と食事をした大阪フィル事務局長の福山修は、アメリカの作曲家によるプログラムの成功に謝辞を伝え、次回の来演の約束をする。そして早速プログラムの話題になると、スラットキン氏は「次はジョン・ウィリアムズをやろうよ、いい曲がいっぱいある」と語った。福山は「ぜひ!」と固い握手を交わしたそうだ。

しかし、この時福山が交わした来演の約束は、コロナ禍に阻まれて実現しなかった。今ではもう信じられないが、オーケストラにとって海外からの出演者を招聘(しょうへい)できないことは、本当に辛い日々だった。コロナ禍が過ぎて、再びスラットキン氏の出演交渉を行い、招聘が決まると早速プログラミングの相談をした。

「マエストロ、ぜひ、ジョン・ウィリアムズの作品を」と伝えると、
「えっ?ジョン・ウィリアムズ…、いいけれど、何で?それも全曲?」

ほどなくして、スラットキン氏も前回に客演した際の会話を思い出し、次から次へと「この曲はどうだ?」と連絡が来るようになる。やがて豪華なプログラムが固まった。

前半は日本では知られていない作品で構成しようと、ぜひ「サウンディングス」を取り上げたかったのだが、諸般の事情で1965年に書かれた「弦楽のためのエッセイ」に変更して幕を開ける。この曲は昨年シンガポール交響楽団がアジア初演と謳(うた)っているから、もしかしたら日本初演かもしれない。10分ほどのかっこいい曲だ。続いてはテューバ協奏曲。ジョン・ウィリアムズはたくさんの協奏曲を書いていて、せっかくなら大阪フィル楽団員をソリストに出来たらいいな、と思った。当団の屋台骨のテューバ奏者・川浪浩一との共演が叶うことになった。普段はひな壇の一番上の端に座る川浪の、圧倒的な技術に裏打ちされたソロをご堪能いただきたい。

テューバ協奏曲のソリストを務める大阪フィルの川浪浩一 写真提供=大阪フィル
テューバ協奏曲のソリストを務める大阪フィルの川浪浩一 写真提供=大阪フィル

休憩を挟んで後半に入ると、スラットキン選曲による超豪華版ジョン・ウィリアムズ映画音楽集。「スーパーマン」のマーチや「インディ・ジョーンズ」のレイダースマーチでテンションが上がるのは間違いないが、合間に挟まれたThe Book Thief や「さゆり」のテーマなど、なかなか実演で聴けない楽曲も披露する。私のような吹奏楽の経験者は「カウボーイ」序曲も楽しみだ。後半のプログラムではスラットキン氏が曲間でトークをするという。どんなお話しが飛び出すかは、コンサートに来てのお楽しみ。一期一会のジョン・ウィリアムズ・プログラムを、ぜひフェスティバルホールに鳴り響く大フィル・サウンドでお楽しみいただきたい。

(大阪フィルハーモニー交響楽団 演奏事業部長 山口 明洋)

公演データ

大阪フィルハーモニー交響楽団第584回定期演奏会
2025年1月23日(木)、24日(金)19:00 フェスティバルホール

指揮:レナード・スラットキン
テューバ:川浪浩一

~オール・ジョン・ウィリアムズ・プログラム~
弦楽のためのエッセイ
テューバ協奏曲
「カウボーイ」序曲
「ジョーズ」のテーマ(映画「ジョーズ」より)
本泥棒(映画「やさしい本泥棒」より)
スーパーマンマーチ(映画「スーパーマン」より)
SAYURIのテーマ(映画「SAYURI」より)
ヘドウィグのテーマ(映画「ハリーポッターと賢者の石」より)
レイダースマーチ(映画「インディ・ジョーンズ」より)

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