イタリアの名門歌劇場のひとつであるパレルモ・マッシモ劇場が6月、日本公演を行う。オペラの本場、イタリアの歌劇場の大規模引っ越し公演はコロナ禍以降では初となる。来日に先立ち、同劇場のマルコ・ベッタ総裁らがオンラインで記者会見し、日本で披露するヴェルディの「椿姫」とプッチーニの「ラ・ボエーム」のプロダクションの見どころ、聴きどころなどを紹介した。
同劇場の日本公演は元々、2020年6月に予定されていたが、コロナ禍のため3度の延期を余儀なくされ、3年を経てようやく実現の運びとなった。ベッタ総裁は「私たちにとってもコロナ禍後、初の大規模海外公演となる。このため当初予定されていた演目を変更し〝椿姫〟と〝ラ・ボエーム〟を上演することとなった。それは技術的な理由もさることながら、この両作品をイタリア・オペラのスピリットが最もよく表現された傑作として、私たちにとっても重要なレパートリーと位置付けているからです。また歌唱芸術であり、舞台芸術としてダイヤモンドのごとく燦然(さんぜん)と輝く作品だからです。日本公演に向けて私たちは十分な準備を行いました。美しい舞台美術にも注目いただきたい」と語った。
東京公演の両演目とも指揮はイタリア出身で英国ロイヤル・オペラ、バイエルン州立歌劇場、ヴェネツィア・フェニーチェ劇場などヨーロッパの名門歌劇場で活躍するフランチェスコ・イヴァン・チャンパが、演出はイタリアを中心に世界各地のオペラ劇場で活動し、オーソドックスな舞台作りで知られるマリオ・ポンティッジャが担当する。
「椿姫」(6月16日、18日、東京文化会館大ホール)にはアルバニア出身でウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場など世界中の名門オペラから引っ張りだこの人気ソプラノ、エルモネラ・ヤオがヴィオレッタ役を演じるほか、フランチェスコ・メーリ(アルフレード)、アルベルト・ガザーレ(ジェルモン)ら錚々(そうそう)たる顔触れのキャストが組まれている。
一方の「ラ・ボエーム」(6月15日、17日、東京文化会館大ホール)もアンジェラ・ゲオルギュー(ミミ)、ヴィットリオ・グリゴーロ(ロドルフォ)をはじめとするイタリア・オペラ界のスター歌手たちが出演する。(宮嶋 極)
※公演の詳細は主催者ホームページをご参照ください。
みやじま・きわみ
放送番組・映像制作会社である毎日映画社に勤務する傍ら音楽ジャーナリストとしても活動。オーケストラ、ドイツ・オペラの分野を重点に取材を展開。中でもワーグナー作品上演の総本山といわれるドイツ・バイロイト音楽祭には2000年代以降、ほぼ毎年訪れるなどして公演のみならずバックステージの情報収集にも力を入れている。