金管楽器の国内トップ奏者が集結したドリーム・チームがARK BRASS(アークブラス)。21世紀のブラス・アンサンブル界をリードするべく、サントリーホールの都市型音楽祭「ARKクラシックス」のレジデント団体として2021年に誕生した。すでに多くのファンを獲得し、人気は上がる一方だ。そんな名うてのヴィルトゥオーゾ集団が、ムソルグスキーの名曲「展覧会の絵」の編曲版に挑んでいる。
エイベックス・クラシックスから出たアルバム第2弾のCD(10月30日発売)では、金管5重奏&ピアノ版を披露。11月7日に東京の紀尾井ホールで開くコンサートでは、さらに陣容を拡大した金管10重奏&ピアノ版を初演するという熱の入れようだ。
ラヴェル編曲のオーケストラ版を下敷きに、金管アレンジの達人、大橋晃一が仕立て直したブラス・アンサンブル版は、各楽器のキャラクターやプレイヤーの技量を計算し尽くした巧みな仕掛けが際立つ。原曲の雰囲気を生かした、金管ならではのゴージャスな色合いに魅せられる。演奏者はトランペットの佐藤友紀、ホルンの福川伸陽ら、国内のトップ・オーケストラで活躍してきた4人をコア・メンバーに、実力派のアソシエイト・メンバーが加わる。サントリーホール恒例の音楽祭で、屈指の目玉になるのも道理の豪華さだ。
CDにはエヴァルドの金管5重奏曲第1番変ロ短調に、ラングフォードの「ロンドンの小景」と、ブラス・ファンにおなじみの名品が併録されている。特に後者は英国の伝説的な金管グループ、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル(PJBE)の結成30年ツアーのために書かれた全6曲の金管10重奏曲だ。ロンドンの名所を音でたどる構成が楽しく、情景が目に浮かぶよう。
ARK BRASSは、このPJBEの偉業を継承し、新しい世紀を導く存在をめざして国内の名手が集まった。それだけに偉大な先達に敬意を表した演奏には一段と熱がこもり、生彩に富んだ表情で作品の魅力を引き出している。
11月7日に紀尾井ホールで開くコンサートでは、久石譲の「天空の城ラピュタ」BRASS組曲や、ジョン・ウィリアムズのBRASS組曲Vol.1など、金管アンサンブルのだいご味が詰まった作品も取り上げる。同じ大橋アレンジでは、ラヴェルの「マ・メール・ロワ」が用意されている。さらにゲストにはトランペットの松井秀太郎、ピアノの川田健太郎と、ジャズやポピュラー畑の人気者が登場し、自作などを聴かせる。幅広い音楽ファンが満喫できる構成が心にくい。
さまざまなジャンルで名手の集うスーパー・グループは話題を呼ぶが、ARK BRASSの本格度は折り紙付き。CDも実演も、合わせて楽しみたい。
(深瀬 満)
公演データ
ARK BRASS ジャパン・ジャパンツアー2024 東京公演
11月7日(木)19:00 紀尾井ホール
ARK BRASS:
佐藤友紀、松山萌、安藤友樹、山川永太郎(トランペット)
福川伸陽(ホルン)
青木 昂、髙瀨新太郎、住川佳祐、黒金寛行(トロンボーン)
次田心平(テューバ)
秋田孝訓(パーカッション)
スペシャルゲスト: 松井秀太郎(トランペット) 、川田健太郎(ピアノ)
エルガー・ハワース:プロセッショナル・ファンファーレⅠ
クリス・ヘーゼル:クラーケン
久石譲(石川亮太編):「天空の城ラピュタ」 BRASS組曲
サイモン・キャビー/セシル・コルベル:Arrietty’s Song
ピアソラ(星野究編):リベルタンゴ
松井秀太郎:ARK BRASSのためのセクステット(新作)
ジョン・ウィリアムズ(石川亮太編):ジョン・ウィリアムズ BRASS組曲 Vol.1
ラヴェル(大橋晃一編):マ・メール・ロワ(金管5重奏&ピアノ版)
ムソルグスキー(大橋晃一編):展覧会の絵 (金管10重奏&ピアノ版) ※初演
※演奏曲は変更になる場合があります
※詳細 11月7日【東京公演】中学生・高校生(18歳以下) 無料ご招待のお知らせ – NEWS | ARK BRASS(アーク・ブラス)official website
ふかせ・みちる
音楽ジャーナリスト。早大卒。一般紙の音楽担当記者を経て、広く書き手として活動。音楽界やアーティストの動向を追いかける。専門誌やウェブ・メディア、CDのライナーノート等に寄稿。ディスク評やオーディオ評論も手がける。