フォーレ四重奏団

これぞ室内楽の醍醐味(だいごみ)! 均整がとれた熟達の合奏

フォーレ四重奏団は1995年に独カールスルーエ音大卒の4人で結成して、今年で28周年。その間メンバーは不動で、地道にアンサンブルを磨き上げてきた強みと重みは計り知れない。世界的にも常設のピアノ四重奏団は少なく、貴重な存在だ。2021年の暮れ以来2年ぶりに、再び4人が日本の土を踏んだ。

今年で結成28年のフォーレ四重奏団 (c)大窪道治 提供:トッパンホール
今年で結成28年のフォーレ四重奏団 (c)大窪道治 提供:トッパンホール

今回のプログラムはマーラー、ベートーヴェン、メンデルスゾーンの初期作を集めた凝った構成。マーラーのピアノ四重奏曲断章イ短調は16歳で書かれた10分あまりの佳品。冒頭からデリケートなピアニッシモで引きつけ、ホールの空間を計算して吟味された階調豊かな弱音に、聴衆も息をのんだ(ピアノのディルク・モメルツが好演)。各奏者がしっかり聴き合うので4者のバランスは絶妙で、特定のパートが突出することがない。

 

ベートーヴェンのピアノ四重奏曲変ホ長調作品16は、ピアノと管楽器のための五重奏曲の編曲版。自らも多彩なアレンジ作を手掛けるこの団体らしい選曲だ。隙のない精密なアンサンブルを紡ぎながら息苦しさはみじんもなく、ピタリと合った呼吸でニュアンス豊かに表情を交歓していく。均整がとれた熟達の合奏は、まさに室内楽の醍醐味だ。

 

メンデルスゾーンが16歳で完成させたピアノ四重奏曲第3番でも、若書きの揺れ動くロマンティシズムを巧みに引き出して、立派な作品に仕立てた。スケルツォ風の第3楽章やフィナーレでは、目の詰んだシンフォニックな熱量をふんだんに発散して、手応えある響きを作り出した。

拍手に笑顔でこたえるフォーレ四重奏団のメンバー (c)大窪道治 提供:トッパンホール
拍手に笑顔でこたえるフォーレ四重奏団のメンバー (c)大窪道治 提供:トッパンホール

10年ほど前にインタビューした際は若々しかった4人も、白髪が増えるなど貫禄が増した。アンサンブルの高い完成度を聴くにつけ、この団体がキャリアのピークにあることを思わせた。
(深瀬満)

公演データ

2023年12月7日(木)トッパンホール

フォーレ四重奏団
エリカ・ゲルトゼッツァー(ヴァイオリン)
サーシャ・フレンブリング(ヴィオラ)
コンスタンティン・ハイドリッヒ(チェロ)
ディルク・モメルツ(ピアノ)

プログラム
マーラー:ピアノ四重奏曲断章 イ短調
ベートーヴェン:ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op.16
メンデルスゾーン:ピアノ四重奏曲第3番 ロ短調 Op.3

アンコール
ドヴォルジャーク(クライスラー/フォーレ四重奏団編):わが母の教えたまいし歌
エドゥアルド・フーベルト:フォーレタンゴ

その他の公演
12月3日(日)14:00 兵庫県立芸術文化センター(小)

マーラー:ピアノ四重奏曲断章 イ短調
ベートーヴェン:ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op.16
メンデルスゾーン:ピアノ四重奏曲第3番 ロ短調 Op.3

12月9日(土)14:00 高崎芸術劇場 音楽ホール

ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番ト短調 op.25
ムソルグスキー(グルズマン&モメルツ編):組曲「展覧会の絵」

12月10日(日)14:00 横浜みなとみらいホール(小)

マーラー:ピアノ四重奏曲 断章 イ短調
フォーレ:ピアノ四重奏曲 第1番 ハ短調 op.15
ブラームス:ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 op.25

深瀬 満
深瀬 満

ふかせ・みちる

音楽ジャーナリスト。早大卒。一般紙の音楽担当記者を経て、広く書き手として活動。音楽界やアーティストの動向を追いかける。専門誌やウェブ・メディア、CDのライナーノート等に寄稿。ディスク評やオーディオ評論も手がける。

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