~107~ 没後50周年のベンジャミン・ブリテン

セイジ・オザワ 松本フェスティバルで上演されたブリテンの「夏の夜の夢」 (C)山田毅/2025OMF
セイジ・オザワ 松本フェスティバルで上演されたブリテンの「夏の夜の夢」 (C)山田毅/2025OMF

2026年は、イギリスを代表する作曲家、ベンジャミン・ブリテン(1913~1976)の没後50周年にあたる。それに先立つ2025年に、偶然ではあろうが、いくつかのブリテン作品の名演に触れることができた。セイジ・オザワ 松本フェスティバルでのオペラ「夏の夜の夢」、ジョナサン・ノット&東京交響楽団の「戦争レクイエム」、ピアノのベンジャミン・グローヴナーとパーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団によるピアノ協奏曲などである。そのほか、新国立劇場でのこども向けのオペラ「オペラをつくろう! 小さなエントツそうじ屋さん」も印象深かった。

ブリテンといえば、「青少年のための管弦楽入門」が最も有名であるが、これは単なるこども向けの作品というよりは、ブリテンが書いた「オーケストラのための協奏曲」というべき作品であり、そのオーケストラの実力(魅力)がはっきりと示される曲でもある。

ブリテンは、早くから音楽の才能を示した、神童であり、鬼才であったが、作曲家として、子どもやアマチュアの音楽への参加を常に考えている人であった。もちろん、「青少年のための管弦楽入門」を作曲したのも、そういう姿勢の表れであるが、前述の「夏の夜の夢」も「戦争レクイエム」も児童合唱が参加するし、「小さなエントツそうじ屋さん」では聴衆まで歌に加わる。そのほか、「春の交響曲」でも児童合唱が使われている。

2022年に東京・春・音楽祭において日本で初めて本格的に上演された「ノアの洪水」は、プロの演奏家に加えて、児童合唱やアマチュアの器楽奏者も出演する、まさに参加型のオペラ。このときは、コロナ禍の影響で聴衆の讃美歌合唱への参加はなかったが、NHK東京児童合唱団のほか、オーケストラにはアマチュアの弦奏者が30~40名、リコーダー奏者が10名ほど参加し、マグカップを楽器として使うなど、プロ・アマ混合の演奏となった。

今年は、メモリアル・イヤーだけに、ブリテン作品の上演が例年以上に予定されている。目玉は、11月の新国立劇場のオペラ「ピーター・グライムズ」に違いない。大野和士芸術監督自ら指揮を執り、世界的な演出家ロバート・カーセンが新国立劇場初登場となる新制作はまさに注目である。このオペラの間奏曲を集めた「4つの海の間奏曲」は、オーケストラ・ピースとして人気が高く、下野竜也&NHK交響楽団の演奏(4月)が楽しみだ。

声楽付きの大作「戦争レクイエム」は、高関健&東京シティ・フィルハーモニー管弦楽団が8月に上演する。同様に独唱と合唱・児童合唱を含む大作である「春の交響曲」は、大野和士&東京都交響楽団(3月)、大友直人&京都市交響楽団(12月)などで予定されている。

また、隠れた名曲といえるヴァイオリン協奏曲を、今年は、岡本誠司(4月)、郷古廉(6月)、石田泰尚(9月)などの人気ヴァイオリニストが〝競演〟する。

日本と因縁のある「シンフォニア・ダ・レクイエム」は、高関健&仙台フィルハーモニー管弦楽団(5月)が取り上げる。

沖澤のどか&京都市交響楽団による「青少年のための管弦楽入門」(3月)は、今、絶好調のコンビの魅力を聴く良い機会だ。

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山田 治生

やまだ・はるお

音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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