芸術の秋の到来。今月は猛暑の8月のステージからピカイチを、10月に開催予定の公演からイチオシを選者の皆さんに紹介していただきました。
先月のピカイチ
◆◆8月◆◆ 東条碩夫(音楽評論家)選
休載
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~8月のピカイチ&次点は休載致します~
ケガのため、8月は演奏会のほとんどを聴けず、わずかに下旬の数回に通っただけでした。この程度でピカイチや次点などを選定しては演奏家の方々に失礼と思いますので、今月は休載させていただきます。
来月のイチオシ
◆◆10月◆◆ 東条碩夫(音楽評論家)選
〈オスロ・フィルハーモニー管弦楽団 日本公演〉
10月18日(水)東京芸術劇場コンサートホール/24日(火)サントリーホール
クラウス・マケラ(指揮)
シベリウス:交響曲第2番、同第5番
次点
〈日本フィルハーモニー交響楽団 第754回定期演奏会〉
10月13日(金)、14日(土)サントリーホール
カーチュン・ウォン(指揮)/山下牧子(メゾ・ソプラノ)/harmonia ensemble(女声合唱)/東京少年少女合唱隊(児童合唱)
マーラー:交響曲第3番
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~マケラ&オスロ・フィル 待望のシベリウス・プロをライブで~
フィンランドの俊英マケラのシベリウスがいよいよナマで聴ける。首席指揮者を務めるオスロ・フィルとの録音で聴く演奏は、素晴らしいものだった。彼の真髄が示されるだろう。次点には、この秋、正式に日本フィルの首席指揮者となるカーチュン・ウォンの就任第1弾定期、マーラーの第3交響曲を推す。ウィーン・フォルクスオーパー芸術監督のロッテ・デ・ベアが演出する二期会の「ドン・カルロ」とのどちらを挙げようかと迷ったのだが。
先月のピカイチ
◆◆8月◆◆ 柴田克彦(音楽ライター)選
〈2023セイジ・オザワ 松本フェスティバル オーケストラ コンサート A〉
8月25日(金)キッセイ文化ホール
ステファン・ドゥネーヴ(指揮)/サイトウ・キネン・オーケストラ/杉山康人(チューバ)/イザベル・レナード(ソプラノ)/OMF合唱団、東京オペラシンガーズ
バーンスタイン:「ウェスト・サイド・ストーリー」よりシンフォニック・ダンス/ジョン・ウィリアムズ:チューバ協奏曲/プーランク:スターバト・マーテル/ラヴェル:「ダフニスとクロエ」第2組曲
次点
〈浜離宮ランチタイムコンサートvol.229クァルテット・エクセルシオ〉
8月17日(木)浜離宮朝日ホール
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲(弦楽四重奏版)、弦楽四重奏曲第19番「不協和音」/シューベルト:弦楽四重奏曲第12番「四重奏断章」/メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第1番
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~ダイナミックなフランス音楽と名人芸を満喫!~
正直「該当なし」も考えた8月だが、「一番」はドゥネーヴ&サイトウ・キネンOに。「ウェスト・サイド」は〝繊細で厚い〟弦の響きが新鮮、チューバ協奏曲は杉山康人が超絶的なソロで魅了、プーランクは曲の真髄をストレートに描いた好演、「ダフニス」は生気に富んだダイナミックな快演……と4粒の味を楽しませてくれた。またQエクセルシオは、ふくよかな音と音楽で、熟成あってこそ表現し得るこの形態の本質を再認識させた。
来月のイチオシ
◆◆10月◆◆ 柴田克彦(音楽ライター)選
〈オスロ・フィルハーモニー管弦楽団 日本公演〉
10月18日(水)東京芸術劇場コンサートホール/23日(月)、24日(火)サントリーホール、ほか
クラウス・マケラ(指揮)/辻井伸行(ピアノ)
(18日、24日)シベリウス:交響曲第2番、同第5番
(23日)ショスタコーヴィチ:祝典序曲、ピアノ協奏曲第2番/R・シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」
次点
〈日本フィルハーモニー交響楽団 第754回定期演奏会〉
10月13日(金)、14日(土)サントリーホール
カーチュン・ウォン(指揮)/山下牧子(メゾ・ソプラノ)/harmonia ensemble(女声合唱)/東京少年少女合唱隊(児童合唱)
マーラー:交響曲第3番
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~天才指揮者がコンビ3年の手兵を率いて真価を発揮~
昨年都響及びパリ管との共演で才能を知らしめたマケラだが、オスロ・フィルは2020年からシェフを務める楽団ゆえに、真の本領を初めて感知できる点で興味深い。得意のシベリウスと近代物が並ぶプロも魅力的だし、9年ぶり来日のオスロ・フィルの現況も要注目。10月は他にもオペラ、オケ、ピアノなど気になる公演が実に多い。中でも、カーチュン・ウォンの日本フィル首席指揮者就任定期は、曲がマーラーの大作だけに期待大!
先月のピカイチ
◆◆8月◆◆ 池田卓夫(音楽ジャーナリスト)選
〈サントリーホール サマーフェスティバル2023「オルガ・ノイヴィルト」室内楽ポートレート〉
8月28日(月)サントリーホールブルーローズ
①「インシデンド/フルイド」ピアノとCDプレイヤーのための/②「スパツィオ・エラスティコ」アンサンブルのための(日本初演)ほか
①…大瀧拓哉(ピアノ)/有馬純寿(エレクトロニクス)/②…馬場武蔵(指揮)/篠崎孝(トランペット)/村田厚生(トロンボーン)/篠崎浩美、岩見玲奈(打楽器)/藤元高輝(エレキギター)/大瀧拓哉(エレクトリック・ピアノ)/上村文乃(チェロ)
次点
〈読売日本交響楽団 第664回名曲シリーズ〉
8月31日(木)サントリーホール
上岡敏之(指揮)
ブルックナー:交響曲第8番(ハース版)
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~オルガ・ノイヴィルトの響き、若手の演奏で堪能~
これまで1968年グラーツ生まれの作曲家オルガ・ノイヴィルトの熱心な聴き手とは言えなかったが、細川俊夫が企画したサントリー・サマーフェスのテーマ作曲家演奏会で一気に魅了された。様々の対立概念を鮮烈な響きで描く作風は管弦楽より室内楽で、より強く発揮された。日本の若手奏者たちの演奏も水際立っていた。まさかの代役で「ブル8」を指揮した上岡、その透徹した解釈をどこまでも深く再現した読響も見事だった。
来月のイチオシ
◆◆10月◆◆ 池田卓夫(音楽ジャーナリスト)選
〈オスロ・フィルハーモニー管弦楽団 日本公演〉
10月18日(水)東京芸術劇場コンサートホール/24日(火)サントリーホール
クラウス・マケラ(指揮)
シベリウス:交響曲第2番、同第5番
次点
〈日本フィルハーモニー交響楽団 第754回定期演奏会〉
10月13日(金)、14日(土)サントリーホール
カーチュン・ウォン(指揮)/山下牧子(メゾ・ソプラノ)/harmonia ensemble(女声合唱)/東京少年少女合唱隊(児童合唱)
マーラー:交響曲第3番
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~マケラ&オスロ・フィル、聴き逃せないシベリウス~
世界が注目するマケラが2020年、最初の常任ポストを得たオスロ・フィルと来日、母国の大作曲家シベリウスの代表作を指揮する機会は逃したくない。ウィーンの楽団(トーンキュンストラー管弦楽団)初のアジア人首席フルート奏者として注目されたティンウェイ・チェンがオスロ・フィルに移籍、素晴らしいソロを吹くのも隠れた楽しみだ。マーラー国際指揮者コンクール優勝者、ウォンと日本フィルの新たな歩みにも期待。
先月のピカイチ
◆◆8月◆◆ 毬沙琳(音楽ジャーナリスト)選
〈読売日本交響楽団 第664回名曲シリーズ〉
8月31日(木)サントリーホール
上岡敏之(指揮)
ブルックナー:交響曲第8番(ハース版)
次点
〈サラダ音楽祭 メインコンサート「スターバト・マーテル」〉
8月6日(日)東京芸術劇場コンサートホール
大野和士(指揮)/金森 穣、井関佐和子(Noism Company Niigata・ダンス)/小林厚子(ソプラノ)/山下裕賀(メゾソプラノ)/村上公太(テノール)、妻屋秀和(バス)/新国立劇場合唱団/東京都交響楽団
J・S・バッハ(マーラー編曲):管弦楽組曲より「序曲」「エア(アリア)」※ダンス付き/ドヴォルザーク:スターバト・マーテル
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~緊張と癒やしの好対照、ブルックナー8番&スターバト・マーテル~
ツァグロゼクの急病により、読響への客演26年目にして初ブルックナーを振ることになった上岡。ワーグナーの楽劇を見るような大変なエネルギーを奏者、聴衆に求めるこだわりのタクトが振り終えた瞬間、時が止まったような不思議な空気に包まれた。感動より驚きに満ちたブルックナーだった。都響のスターバト・マーテルは名手による清らかで浄化されるような演奏、前半のバッハと金森、井関のダンスも神々しく鎮魂のステージだった。
来月のイチオシ
◆◆10月◆◆ 毬沙琳(音楽ジャーナリスト)選
〈NHK交響楽団 第1994回定期公演Bプログラム〉
10月25日(水)、26日(木)サントリーホール
ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮)/レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」/ブラームス:交響曲第3番
次点
〈新国立劇場 「修道女アンジェリカ」「子どもと魔法」新制作〉
10月1日(日)、4日(水)、7日(土)、9日(月・祝)新国立劇場オペラパレス
沼尻竜典(指揮)/粟國 淳(演出)/キアーラ・イゾットン(アンジェリカ)/クロエ・ブリオ(子ども)ほか/新国立劇場合唱団/世田谷ジュニア合唱団/東京フィルハーモニー交響楽団
プッチーニ:「修道女アンジェリカ」全1幕(イタリア語上演)/ラヴェル:「子どもと魔法」全2部(フランス語上演) いずれも日本語・英語字幕付き
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~巨匠の至芸再び、ブロムシュテットのN響&新制作で幕明け新国オペラ~
96歳のブロムシュテットが今年もN響定期に登場し、ブルックナー(Aプロ)、北欧もの(Cプロ)、ドイツもの(Bプロ)と多彩な演目を振る。Bプロのサントリーホールでは、マエストロが格別な思いを寄せるブラームスの交響曲3番とアンスネスの粒ぞろいで光沢あるピアノで聴く「皇帝」にも期待。新国立劇場・新シーズンは新制作のダブルビル、視覚的な効果も狙った粟國の演出で描く〝母と子の愛〟と沼尻のタクトにも注目したい。
先月のピカイチ
◆◆8月◆◆ 深瀬 満(音楽ジャーナリスト)選
〈オーケストラ・リベラ・クラシカ 第47回定期演奏会〉
8月25日(金)三鷹市芸術文化センター 風のホール
鈴木秀美(指揮)/オーケストラ・リベラ・クラシカ
ハイドン:交響曲第1番、第101番「時計」/ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
次点
〈The 4 Players Tokyo 第3回〉
8月9日(水)ハクジュホール
戸澤哲夫、遠藤香奈子(ヴァイオリン)/中村洋及理(ヴィオラ)/矢口里菜子(チェロ)
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1番/プロコフィエフ:弦楽四重奏曲第2番/シベリウス:弦楽四重奏曲「親愛なる声」
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~鈴木秀美&OLC ドラマチックに古典派プロ~
このところ様々な楽団への客演が増えた鈴木秀美だが、みずから主宰する古楽器オケの指揮台では、一段と精力的でエスプレッシーヴォなタクトに変身する。「時計」に「田園」と逃げも隠れもしない古典派の王道プロで、苛烈なまでのドラマを引き出してみせた。主要オケの有力メンバーで作る横文字の弦楽四重奏団は、振付役に藤岡幸夫がいることもあって、みっちり練り上げた密度の濃いアンサンブルが身上。聴き合う力の高さが効能を発揮した。
来月のイチオシ
◆◆10月◆◆ 深瀬 満(音楽ジャーナリスト)選
〈オスロ・フィルハーモニー管弦楽団 日本公演〉
10月18日(水)東京芸術劇場コンサートホール/23日(月)、24日(火)サントリーホール、ほか
クラウス・マケラ(指揮)/辻井伸行(ピアノ)
(18日、24日)シベリウス:交響曲第2番、同第5番
(23日)ショスタコーヴィチ:祝典序曲、ピアノ協奏曲第2番/R・シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」
次点
〈日本フィルハーモニー交響楽団 第754回定期演奏会〉
10月13日(金)、14日(土)サントリーホール
カーチュン・ウォン(指揮)/山下牧子(メゾ・ソプラノ)/harmonia ensemble(女声合唱)/東京少年少女合唱隊(児童合唱)
マーラー:交響曲第3番
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~マケラ&オスロ・フィルの親密なコンビネーションに期待~
来日オケのラッシュが始まる。昨秋の来演では気難しいパリ管を夢中にさせていた気鋭クラウス・マケラが、以前からの手兵オスロ・フィルと、より親密なコンビネーションを聴かせてくれるだろう。ことにお国物のシベリウス2曲では、すがすがしい息吹が楽しみだ。日本フィルは新しい首席指揮者、カーチュン・ウォンと就任披露の晴れ舞台に臨む。マーラーの名を冠したコンクールの覇者による、縁が深い大作・第3番だけに、こちらも期待大。
先月のピカイチ
◆◆8月◆◆ 宮嶋 極(音楽ジャーナリスト)
〈フェスタサマーミューザKAWASAKI 読売日本交響楽団〉
8月1日(火)ミューザ川崎シンフォニーホール
セバスティアン・ヴァイグレ(指揮)
ベートーヴェン:交響曲第8番/ワーグナー(ヘンク・デ・フリーヘル編):「ニーベルングの指環」~オーケストラル・アドヴェンチャー
次点
〈セイジ・オザワ松本フェスティバル OMFオペラ〉
8月26日(土)まつもと市民芸術館
プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」第1・2幕
ディエゴ・マテウス(指揮)/デイヴィッド・ニース(演出)/中川郁文(ミミ)/澤原行正(ロドルフォ)/別府美沙子(ムゼッタ)/井出壮志朗(マルチェッロ)、ほか/小澤征爾音楽塾合唱団/OMF児童合唱団/小澤征爾音楽塾オーケストラ
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~ワーグナー指揮者ヴァイグレによる管弦楽版「リング」~
バイロイトで「マイスタージンガー」、フランクフルトなどで「ニーベルングの指環」を振るなど現代を代表するワーグナー指揮者のひとりに数えられるヴァイグレだけあって、ポイントを的確に捉えた上で大きな流れとうねりを作り出した指揮は見事であった。詳細はアンコールのコーナーをご参照いただきたい。ワーグナー指揮者、ヴァイグレが辣腕(らつわん)振るう~フェスタサマーミューザ読響公演 | CLASSICNAVI。OMFオペラはマテウス率いる小澤塾オケの清新かつ情熱あふれる演奏に魅かれた。
来月のイチオシ
◆◆10月◆◆ 宮嶋 極(音楽ジャーナリスト)
〈NHK交響楽団 第1992回定期公演Aプログラム〉
10月14日(土)、15日(日)NHKホール
ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮)
ブルックナー:交響曲第5番
次点
〈オスロ・フィルハーモニー管弦楽団 日本公演〉
10月18日(水)東京芸術劇場コンサートホール/23日(月)、24日(火)サントリーホール、ほか
クラウス・マケラ(指揮)/辻井伸行(ピアノ)
(18日、24日)シベリウス:交響曲第2番、同第5番
(23日)ショスタコーヴィチ:祝典序曲、ピアノ協奏曲第2番/R・シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」
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~ブロムシュテット、N響とのブル5は超名演の予感~
秋になるとN響にやってくるブロムシュテットの公演を毎年推しているが、期待外れに終わったことはない。昨年も95歳という年齢が信じられないほどの瑞々しいシューベルトには驚かされた。さらにひとつ齢を重ねた今年は、十八番であるブルックナー交響曲第5番を振る。このコンビによる同曲を過去2回聴いているが、いずれも名演。それらを凌駕(りょうが)する超名演が期待される。次点は今や世界中から注目される27歳のマケラ。手兵オスロ・フィルと息の合った熱演を楽しみたい。