26歳の鬼才ペルトコスキが手兵トゥールーズ・キャピトル管と渾身の熱演を披露
世界中から注目を集める26歳の鬼才タルモ・ペルトコスキが音楽監督を務めるトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団を率いて来日、その東京公演を聴いた。
ペルトコスキの来日は2度目。初来日は昨年6月にNHK交響楽団の定期公演Cプロに客演。マーラーの交響曲第1番などを指揮したその公演はN響の定期会員や聴衆の投票によって年間ベスト公演に選ばれたほどのインパクトをもたらした。ルイージ、ブロムシュテットら名指揮者たちの複数公演を抑えて、少年の面影すら残るペルトコスキの1公演が最も多くの聴衆の支持を集めたことで、彼の非凡な才能が日本の音楽ファンにも知られることとなった。
1曲目は辻󠄀井伸行をソリストにパガニーニの主題による狂詩曲。ペルトコスキは辻󠄀井の個性を尊重するかのような音楽の進め方。フランスのオーケストラならではのソロイスティックな木管陣と弦楽器の柔らかな響きをうまく活用しながら辻󠄀井のソロに寄り添い、とりわけ第17変奏から20変奏にかけての両者のやり取りはきらめくような美しさが表出された演奏となった。
後半はマーラーの交響曲第6番。弦楽器は16型、トランペットやホルンなどにアシスタント奏者を付けた大編成での演奏。トランペットがロータリー式のドイツ管に持ち替えていたこともフランスのオケにしては珍しい光景。ペルトコスキの指示なのだろうか。第1楽章冒頭、コントラバスとチェロによるA(ラ)の刻みは♩=88 くらいのかなり遅めのテンポで踏みしめるように曲が始まる。ペルトコスキは何度か登場する音程の跳躍を強調するような指揮ぶりでオケから〝うねり〟を引き出そうとしているかのよう。〝アルマの主題〟とも呼ばれるヘ長調の第2主題はこのオケの弦楽器セクションの柔らかな響きが際立って聴こえる。提示部は繰り返しを行った。展開部あたりから旅の疲れからなのかホルンが幾分不安定になってしまったのは残念であった。
第2楽章はアンダンテではなくスケルツォを配置。ここでも少し抑え気味のテンポで切れ込み鋭くリズムを刻み強烈な印象を与える。第3楽章でペルトコスキは過度にオケをリードせずにトゥールーズ・キャピトルが持つ〝美しき歌心〟を大切にしているようなアプローチ。終楽章では一転、身振りが大きくなり自らが目指す方向にオケを引っ張っていこうとの意思が感じられた。とはいえ、すべてがペルトコスキの思う通りにならない点もいかにも個性を大切にするフランスのオケらしいところ。そのせめぎ合いも面白い。とはいえ、楽章が進むにつれてペルトコスキの解釈にオケ全体が染まっていった点にもこの若き指揮者の才能の豊かさが窺えた。イ短調に回帰してコーダに入り、沈殿していくような曲想から強烈な衝撃のラストまでの振幅の大きさも見事。なお、4楽章のハンマーの打撃は2回であった。
(宮嶋 極)
公演データ
タルモ・ペルトコスキ指揮 トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団 東京公演
6月8日(月)19:00 サントリーホール 大ホール
指揮:タルモ・ペルトコスキ
ピアノ:辻󠄀井伸行
管弦楽:トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団
プログラム
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲Op.43
マーラー:交響曲第6番イ短調「悲劇的」
ソリスト・アンコール
セブラック:ロマンティックなワルツ
みやじま・きわみ
放送番組・映像制作会社である毎日映画社に勤務する傍ら音楽ジャーナリストとしても活動。オーケストラ、ドイツ・オペラの分野を重点に取材を展開。中でもワーグナー作品上演の総本山といわれるドイツ・バイロイト音楽祭には2000年代以降、ほぼ毎年訪れるなどして公演のみならずバックステージの情報収集にも力を入れている。










