フアンホ・メナ指揮 NHK交響楽団 第2040回定期公演Bプログラム

N響の強靭な底力が絶大な威力を発揮!

ダイナミックでしなやかな快演を聴かせる

6月のN響Bプログラムの指揮は、Aプロのフェドセーエフの代役に続くスペインの名匠フアンホ・メナ。演目は、イベールのフルート協奏曲(独奏:カール・ハインツ・シュッツ)とブルックナーの交響曲第6番で、こちらは元々予定された内容の公演だ。

Aプロに引き続き、スペインの名匠フアンホ・メナが登場 写真提供:NHK交響楽団
Aプロに引き続き、スペインの名匠フアンホ・メナが登場 写真提供:NHK交響楽団

イベールは、ウィーン・フィルの首席奏者シュッツが鮮やかなソロを披露した。両端楽章の活力に満ちた進行もさることながら、静謐なオーケストラをバックに息の長いソロを展開した(中でもブレスの巧みさが光る)第2楽章には、惚れ惚れさせられた。近代フランスのエスプリというよりも、ラテンとマンハイム楽派が混じったような、やや古風で暖色のトーンではあったが、華麗な名人芸を堪能した満足感が勝る。ソロのアンコールが、同じくイベールの無伴奏フルートのための小品だった点にもセンスの良さが窺える。

イベールのフルート協奏曲では、ウィーン・フィルの首席奏者シュッツの鮮やかなソロが際立った 写真提供:NHK交響楽団
イベールのフルート協奏曲では、ウィーン・フィルの首席奏者シュッツの鮮やかなソロが際立った 写真提供:NHK交響楽団

ブルックナーは、ダイナミックでしなやかな快演。様々な動きが明確で生気に富んだ第1楽章、豊穣な響きで抑揚も自然な第2楽章、リズミカルで流動的な主部に、スッキリ爽快な中間部が挟まれた第3楽章、各テーマがスムーズに入れ替わりながら、とりわけしなやかに弾んだ第4楽章が続く。
師匠チェリビダッケ(CD)が約63分かけたこの曲を、メナは約58分で終えた。チェリビダッケはこの曲も他のブルックナー交響曲と同様に腰の据わった大伽藍のように構築したが、メナは重心が高めの響きで、エネルギッシュに聴かせた。他の交響曲ならいざ知らず、第6番ならばこれも1つの説得力を持ったアプローチであろう。そしてこうした表現に、N響の─特に金管楽器の─強靭な底力が絶大な威力を発揮したのは間違いない。

(柴田克彦)

ブルックナーの交響曲第6番は、ダイナミックでしなやかな快演だった 写真提供:NHK交響楽団
ブルックナーの交響曲第6番は、ダイナミックでしなやかな快演だった 写真提供:NHK交響楽団

公演データ

NHK交響楽団 第2040回定期公演Bプログラム

6月12日(木)19:00サントリーホール 大ホール

指揮:フアンホ・メナ
フルート:カール・ハインツ・シュッツ
管弦楽:NHK交響楽団
コンサートマスター:郷古 廉

プログラム
イベール:フルート協奏曲
ブルックナー:交響曲第6番イ長調

アンコール
イベール:無伴奏フルートのための小品

※他日公演
6月13日(金)19:00サントリーホール 大ホール

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柴田克彦

しばた・かつひこ

音楽マネジメント勤務を経て、フリーの音楽ライター、評論家、編集者となる。「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「音楽の友」「モーストリー・クラシック」等の雑誌、「毎日新聞クラシックナビ」等のWeb媒体、公演プログラム、CDブックレットへの寄稿、プログラムや冊子の編集、講演や講座など、クラシック音楽をフィールドに幅広く活動。アーティストへのインタビューも多数行っている。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)。

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