上岡敏之×東京二期会プロジェクト I  
モーツァルト「レクイエム」/ ストラヴィンスキー「詩篇交響曲」

たたみかけるようにドラマティックな「レクイエム」

ドイツの歌劇場で指揮者のキャリアをスタートさせながら、日本ではオペラを指揮する機会の少なかった上岡敏之が二期会と取り組むプロジェクト、第1弾はストラヴィンスキーとモーツァルトの祈りの合唱となった。二期会とは初共演だが、オーケストラは上岡にとって98年の初共演以来最も長く指揮台に立ってきた読売日本交響楽団だ。今月1日にもトッパンホールで読響メンバーと室内楽を共演している。

共演機会が多い読響とドラマティックな演奏を披露した上岡敏之 写真提供:公益財団法人東京二期会 撮影:寺司正彦
共演機会が多い読響とドラマティックな演奏を披露した上岡敏之 写真提供:公益財団法人東京二期会 撮影:寺司正彦

上岡が今回こだわったのは、作品に書かれているテキスト、言葉の意味をどこまで音楽として表現できるかだと感じた。

 

モーツァルトの「レクイエム」は男女合わせて40名強の合唱と第1ヴァイオリン10人の小ぶりな編成で、オルガンをあえて入れないのは純度の高い音の響きを求めるためだという。アダージョと思えない速めのテンポで始まった序奏から、たたみかけるようにドラマティックな演奏となった。

 

〈キリエ〉のフーガから〈ディエス・イレ〉にかけての激昂(こう)や、チェロから始まり4人のソロの重唱が美しい〈レコルダーレ〉の「私は罪人のようにため息をつく」という歌詞でのニュアンスの翳(かげ)りなどオペラ的な表現も随所に見られる。

 

コンサートマスターの日下紗矢子の存在も大きい。弦楽パートを通じて合唱と一体感を作りあげる。ソリストでは、ソプラノの盛田麻央が、透明感のある声で崇高な歌を聴かせ、ジョン・ハオの表現力豊かなバスも印象に残った。

ソリストたちの重唱が美しく響いたモーツァルト「レクイエム」写真提供:公益財団法人東京二期会 撮影:寺司正彦
ソリストたちの重唱が美しく響いたモーツァルト「レクイエム」写真提供:公益財団法人東京二期会 撮影:寺司正彦

ストラヴィンスキーの「詩篇(へん)交響曲」はオーケストラからは翳りから光明までニュアンスの変化が読み取れたが、合唱の表現は指揮にあと一歩及ばない課題も感じた。

今後の上岡×二期会プロジェクトに期待

会場で配布された超速報によると、プロジェクト第2弾は、25年9月の「さまよえるオランダ人」(深作健太演出)とのこと。オペラ上演では更に深いコミュニケーションも取れるだろう。そういう意味でも、ここから始まったばかりの上岡×二期会プロジェクト、大いに期待したい。
(毬沙 琳)

※取材は12月9日の公演

公演データ

上岡敏之×東京二期会プロジェクト I
モーツァルト「レクイエム」/ ストラヴィンスキー「詩篇交響曲」

2023年12月9日(土)18:00、12月10日(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール

指揮:上岡敏之
ソプラノ:盛田麻央
メゾソプラノ:富岡明子
テノール:松原 友
バス:ジョン ハオ
合唱:二期会合唱団(合唱指揮:根本卓也)
管弦楽:読売日本交響楽団

プログラム
ストラヴィンスキー:詩篇交響曲
モーツァルト:レクイエム ニ短調 K. 626(ジュースマイヤー補筆版)

毬沙 琳
毬沙 琳

まるしゃ・りん

大手メディア企業勤務の傍ら、音楽ジャーナリストとしてクラシック音楽やオペラ公演などの取材活動を行う。近年はドイツ・バイロイト音楽祭を頻繁に訪れるなどし、ワーグナーを中心とした海外オペラ上演の最先端を取材。在京のオーケストラ事情にも精通している。

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