豪華絢爛、金管十重奏&ピアノ版「展覧会の絵」を初演!ARK BRASSが魅せる新世紀の金管アンサンブル
金管楽器の国内トップ奏者によるドリーム・チームがARK BRASS(アークブラス)。2作目のCD「展覧会の絵」(エイベックス・クラシックス)発売に合わせて紀尾井ホールで開いたコンサートは、高い合奏能力と多彩なレパートリーをアピールする場となった。英国の伝説的なフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルの偉業を継承し、新世紀を導く存在をめざすだけに、この日も密度の濃い時間を作り上げた。
前半は久石譲の「天空の城ラピュタ」BRASS組曲や、ジョン・ウィリアムズのBRASS組曲Vol.1(両方とも石川亮太編)を中心としたポピュラー系の作品を披露。デリケートで柔らかい弱音から、会場の空気が膨張するようなフォルティシモまで、レンジの広い艶(あで)やかな表現力が圧巻だ。ことに金管10人編成で映画音楽4作品を取り上げた後者では、勇壮なメロディーがブラスといかに相性が良いかを再認識させた。
会場を沸かせたのはスペシャル・ゲストで登場したジャズ・トランペットの松井秀太郎。今回のツアーのために作曲したという「金管五重奏のための演奏会用小品」をコア・メンバー4人と切れ味よく聴かせ、鮮烈なインパクトを振りまいた。
そして後半はクラシック作品に移り、ラヴェル「マ・メール・ロワ」(金管五重奏&ピアノ版)と、目玉のムソルグスキー「展覧会の絵」。後者のCDは金管五重奏&ピアノ版だったが、この日はさらに規模を拡大した金管十重奏&ピアノ版を初演した。ラヴェルつながりの編曲を担当した達人、大橋晃一は楽器のキャラクターや奏者の技量を計算して巧みに再構築。実際の舞台では打楽器2人を加えた13人編成まで広げた結果、カラフルな立体感が格段に増した。
名人集団は原曲の雰囲気を生かしたゴージャスな色合いを的確に表出。ことにリーダーでもあるトランペットの佐藤友紀は、フリューゲルホーンを含む3本の楽器を使い分け、音色の妙を際立たせた。
(深瀬満)
公演データ
ARK BRASS「展覧会の絵」
11月7日(木)19:00紀尾井ホール
ARK BRASS:
トランペット:佐藤友紀、松山萌、安藤友樹、山川永太郎
ホルン:福川伸陽
トロンボーン:青木 昂、髙瀨新太郎、住川佳祐、黒金寛行
テューバ:次田心平
パーカッション:秋田孝訓
スペシャル・ゲスト:
トランペット:松井秀太郎
ピアノ:川田健太郎
プログラム
エルガー・ハワース:プロセッショナル・ファンファーレⅠ
クリス・ヘイゼル:クラーケン
久石譲(石川亮太編曲):「天空の城ラピュタ」 BRASS組曲
サイモン・キャビー/セシル・コルベル(石川亮太編曲):アリエッティズ・ソング
ピアソラ(星野究編曲):リベルタンゴ
松井秀太郎:金管五重奏のための演奏会用小品
ジョン・ウィリアムズ(石川亮太編曲):ジョン・ウィリアムズ BRASS組曲 Vol.1
ラヴェル(大橋晃一編曲):マ・メール・ロワ(金管五重奏&ピアノ版)
ムソルグスキー(大橋晃一編曲):組曲「展覧会の絵」(金管十重奏&ピアノ版) ※初演
トランペット(松井秀太郎)・アンコール
松井秀太郎:TRUST ME
アンコール
ルー・ポラック:That’s a Plenty
ナポリ民謡「ヴェニスの謝肉祭」よりエンディング
ふかせ・みちる
音楽ジャーナリスト。早大卒。一般紙の音楽担当記者を経て、広く書き手として活動。音楽界やアーティストの動向を追いかける。専門誌やウェブ・メディア、CDのライナーノート等に寄稿。ディスク評やオーディオ評論も手がける。