国際音楽祭NIPPON2024 
AKIKO SUWANAI Plays モーツァルト ヴァイオリン協奏曲全曲演奏会(第一夜)

モダン楽器によるモーツァルト演奏の最上の姿が示された演奏会

国際音楽祭NIPPONにおける「モーツァルト ヴァイオリン協奏曲 全曲演奏会」の第一夜。芸術監督・諏訪内晶子の独奏で、第1、2、4番が披露された。バックは、サッシャ・ゲッツェル指揮、国際音楽祭NIPPON フェスティヴァル・オーケストラ(特別編成)である。

指揮者サッシャ・ゲッツェルと芸術監督の諏訪内晶子 (C)松尾淳一郎
指揮者サッシャ・ゲッツェルと芸術監督の諏訪内晶子 (C)松尾淳一郎

まずは諏訪内のソロが、ストレートにして実にこまやか。中でもヴィブラートの有無やかけ方に細心の配慮がなされている。そしてグァルネリ・デル・ジェズから放たれる音が、艶やかで美しい上に芯があって伸びが良く、楽曲にもピタリとフィットする。表現も自然で、典雅さや優美さ、時折のロマン性などが曲想に沿って的確に表出される。伸びやかな第2番第2楽章や、終始鮮やかな演奏で曲の魅力を再認識させた第4番は特に印象的。今回は現在聴き得るモダン楽器のモーツァルト演奏の最上の姿が示されたと言っていい。

名手揃いのオーケストラ(C)松尾淳一郎
名手揃いのオーケストラ(C)松尾淳一郎

管弦楽は、コンサートマスターの白井圭をはじめ名手揃(ぞろ)いの首席陣のリードが功を奏して、小ぶりながら鳴りもまとまりも上々。ゲッツェルの指揮も、交響曲第1番と「アポロとヒアキントゥス」序曲を含めて、強弱や抑揚がきめ細かく、生気に富んでいる。

加えて、こうしたレアなプロに生で触れると、2年を隔てた1→2番はもとより、僅(わず)か4カ月における2→4番の進化の大きさがリアルに感知できる。これぞ音楽祭=特別な機会でこそ可能なチクルスの意義であろう。

ともかく、すこぶる気持ちの良い演奏会。12日の3、5番も楽しみだ。

(柴田克彦)

公演データ

サッシャ・ゲッツェル指揮 国際音楽祭NIPPONフェスティヴァル・オーケストラ
AKIKO SUWANAI Plays モーツァルト ヴァイオリン協奏曲全曲演奏会  (全2回)

指揮:サッシャ・ゲッツェル
ヴァイオリン:諏訪内晶子
管弦楽:国際音楽祭NIPPONフェスティヴァル・オーケストラ

2024年1月11日(木)19:00東京オペラシティ コンサートホール
<プログラム>
モーツァルト:
交響曲第1番 変ホ長調 K.16
ヴァイオリン協奏曲第1番 変ロ長調 K.207
歌劇「アポロとヒアキントゥス」序曲 K.38
ヴァイオリン協奏曲第2番ニ長調 K.211
ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調 K.218

1月12日(金)19:00東京オペラシティ コンサートホール
<プログラム>
モーツァルト:
交響曲第15番 ト長調 K.124
ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K.216
ディヴェルティメント ニ長調 K.136
ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」イ長調 K.219

柴田克彦
柴田克彦

しばた・かつひこ

音楽マネジメント勤務を経て、フリーの音楽ライター、評論家、編集者となる。「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「音楽の友」「モーストリー・クラシック」等の雑誌、「毎日新聞クラシックナビ」等のWeb媒体、公演プログラム、CDブックレットへの寄稿、プログラムや冊子の編集、講演や講座など、クラシック音楽をフィールドに幅広く活動。アーティストへのインタビューも多数行っている。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)。

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