小林研一郎指揮 
プラハ交響楽団 New Year Concert

プラハ交響楽団の魅力を十分に引き出した好演

プラハ交響楽団の日本ツアーに小林研一郎が参加し、スメタナの連作交響詩「わが祖国」を指揮した。小林はこれまでにも2002年の「プラハの春」音楽祭オープニングでチェコ・フィルと「わが祖国」を演奏するなど、この作品を得意のレパートリーとしている。今日も暗譜で全曲を指揮した。

指揮者の小林研一郎(C)山本倫子
指揮者の小林研一郎(C)山本倫子

小林は、第1曲「ヴィシェフラド」を慎重に始めた。オーケストラは集中度高く、真摯(しんし)に指揮棒に応えようとする。小林はそんなオーケストラの音をよく味わいながら指揮。小林の独特の指揮にオーケストラが戸惑う瞬間がないわけではなかったが、良いスタートを切る。第2曲「ヴルタヴァ(モルダウ)」は流れの良いテンポで始まる。そして感情のこもったカンタービレ。小林は、無理を強いず、オーケストラに任せて、棒を振らないところも。第3曲「シャールカ」の後で休憩が入る。

 

演奏会後半(第4曲「ボヘミアの森と草原から」から第6曲「ブラニーク」)では、小林は一層オーケストラに任せるようになったように感じられた。もう少しメリハリがほしいところもあったが、客席に向けて音楽を届ける小林の指揮は健在であった。

プラハ交響楽団
プラハ交響楽団

プラハ交響楽団は管楽器が魅力的であった。金管楽器の素朴な響きは作品にふさわしく、とりわけホルンが秀逸。管楽器のメンバーの一部が前半と後半で交替していたが、後半のオーボエ奏者の第6曲でのソロが印象に残った。ティンパニ奏者が魅せる。指揮者とオーケストラとが完全に一体となった演奏にまでは及んでいなかったように感じられたが、小林はプラハ響の魅力を十分に引き出していた。

(山田治生)

公演データ

小林研一郎指揮 プラハ交響楽団New Year Concert

2024年1月11日(木) 19:00サントリーホール

指揮:小林研一郎
管弦楽:プラハ交響楽団

<プログラム>
スメタナ:連作交響詩「わが祖国」

第1曲 ヴィシェフラド (高い城)
第2曲 ヴルタヴァ (モルダウ)
第3曲 シャールカ
第4曲 ボヘミアの森と草原から
第5曲 ターボル
第6曲 ブラニーク

来日ツアーの他の公演情報はジャパン・アーツのホームページをご覧ください。
プラハ交響楽団 | クラシック音楽事務所ジャパン・アーツクラシック音楽事務所ジャパン・アーツ (japanarts.co.jp)

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山田 治生

やまだ・はるお

音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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