Be Phil オーケストラ ジャパン

選ばれし日本のアマチュア音楽家たちがキリル・ペトレンコ、ベルリン・フィルのメンバーと共演

日本のアマチュア音楽家がベルリン・フィル(BPO)のメンバーと共にコンサートを行う「Be Phil オーケストラ ジャパン」。約1200人の応募者の中から選ばれた18〜67歳の98人が、BPOのメンバーや、指揮を受け持つキリル・ペトレンコとラファエル・ヘーガー(同楽団の打楽器奏者)の指導による4日間のリハーサルを経て本番に臨んだ。

ヘーガーの指揮でブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」 ©Monika Rittershaus
ヘーガーの指揮でブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」 ©Monika Rittershaus

弦楽器はBPOのメンバー9人が演奏に参加。各楽器のトップは同楽団の奏者だ。管・打楽器は日本勢だが、彼らもメンバーの指導を受けてきたという。

 

前半は、ヘーガーの指揮でブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲。独奏はBPOの樫本大進とルートヴィヒ・クヴァントが務める。まず感心したのは、オーケストラの豊かな響き。特に厚みと潤いのある弦楽器は、アマチュア(音大生はいないとの由)とは思えないほどレベルが高い。演奏自体は樫本の雄弁なソロが光る好演。特に第2楽章の繊細な美しさに魅せられる。懸命の演奏を続けるバックもブラームスらしい重厚な味わいを表出。

プロコフィエフ「ロメオとジュリエット」組曲を指揮したペトレンコ ©Monika Ritterhaus
プロコフィエフ「ロメオとジュリエット」組曲を指揮したペトレンコ ©Monika Ritterhaus

後半は、ペトレンコの指揮でプロコフィエフの「ロメオとジュリエット」組曲から7曲。こちらは、マエストロの的確で引き締まった音楽作り、中でも強弱の幅広さが効力を発揮する。それに応えるオーケストラも立派だ。弦楽器は変わらず豊穣で、木管のソロをはじめ管楽器陣も大健闘。曲が進むにつれて完成度も上がり、6曲目のデリケートなニュアンスや7曲目「タイボルトの死」の鮮烈なダイナミズムが耳を奪う。

 

演奏者たちは当然良い経験になっただろうし、聴き手もBPOのエッセンスと同時にひと味異なる音楽シーンを堪能できた、意義あるプロジェクトだった。
(柴田 克彦)

公演データ

Be Phil オーケストラ

11月26日(日) 19:00 サントリーホール

ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 Op.102
(指揮:ラファエル・ヘーガー/ヴァイオリン:樫本大進/チェロ:ルートヴィヒ・クヴァント)

プロコフィエフ:『ロメオとジュリエット』組曲第1番 Op.64bis、第2番 Op.64terより
 1.モンタギュー家とキャピュレット家(第2番)
 2. 少女ジュリエット(第2番)
 3. 僧ローレンス(第2番)
 4. 踊り(第2番)
 5. 仮面(第1番)
 6. ロメオとジュリエット(第1番)
 7. タイボルトの死(第1番)
(指揮:キリル・ペトレンコ)

【管弦楽】
Be Phil オーケストラ

*オーディションにより選ばれた日本に居住するアマチュア音楽家約98人

【指揮】
ラファエル・ヘーガー(ブラームス)
キリル・ペトレンコ(プロコフィエフ)

【ソリスト】
樫本大進(ヴァイオリン/ブラームス)
ルートヴィヒ・クヴァント(チェロ/ブラームス)

柴田克彦
柴田克彦

しばた・かつひこ

音楽マネジメント勤務を経て、フリーの音楽ライター、評論家、編集者となる。「ぶらあぼ」「ぴあクラシック」「音楽の友」「モーストリー・クラシック」等の雑誌、「毎日新聞クラシックナビ」等のWeb媒体、公演プログラム、CDブックレットへの寄稿、プログラムや冊子の編集、講演や講座など、クラシック音楽をフィールドに幅広く活動。アーティストへのインタビューも多数行っている。著書に「山本直純と小澤征爾」(朝日新書)。

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